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中学退学 磐田のペルー少年 『学びたい』再起に壁

2009-03-31 09:17:48 | 多文化共生
(以下、中日新聞【静岡】から転載)
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中学退学 磐田のペルー少年 『学びたい』再起に壁

2009年3月30日

 中学を3年の1学期で中退したのを卒業シーズンの中で悔やみ、学び直したいと願う-。あなたは想像できるだろうか。日本人なら義務教育中の退学はあり得ないというのが常識だ。だが、外国人の子は見放され、再起のチャンスを得られない可能性が高い。磐田市のペルー人少年(15)が今、そんな境遇の中でもがいている。 (報道部・梅田歳晴)

 少年は、約13年前に来日した。日本に仕事を求めた親に連れられてきて、ずっとこの国で育ってきた。

 磐田市内の中学を中退したのは、3年生だった昨年6月。日本語を話せない母親が出産したため、付き添ううちに欠席が多くなっていた。

 「『これ以上、休んだら退学だ』と先生に言われ、嫌になった」という。辞めてはいけないとは誰にも言われなかった。

 中退して半年ほど過ぎた昨年末、一緒に暮らす母親の交際相手の男性(23)が派遣の仕事を切られ、会社の借り上げアパートも追われた。職探しに苦労する男性の姿に「日本で暮らすには、中学卒の資格が必要」とがくぜんとしたが、それが一度中退した外国人にとっていかに大変かすぐに思い知らされた。

 日本人なら、不登校だったり、素行が悪かったりしても、義務教育の中学は「卒業認定を受けるのが一般的」(文部科学省)だ。

 しかし、外国人は事情が違う。こうしたケースで、磐田市教育委員会の基本的な立場は「就学手続きは、拒否はしない」。手続きをすれば、卒業認定か3年生をやり直すなどの道があるにはある。

 ところが卒業認定は「在籍時の欠席日数が多く、さらに学校を辞めているため、学区の学校長が卒業を認める可能性は低い」(市教委)。3年生のやり直しも、市教委は「本人の学習意欲と、保護者の通わせる意思次第」などを条件に認める方針とする。「入ったはいいが、『やっぱりやめた』となれば教育現場は混乱し、本人にもよくない」と担当者は説明する。

 だが、生活に追われる親にとって子どもの教育が二の次になるケースは珍しくない。

 市教委の担当者は「中学校卒業認定試験」の受験も選択肢に挙げるが、学校に通っていない外国人の子どもに5教科の試験で合格を求めるのは現実的ではなく、静岡県内には夜間中学もない。

 県内では今、10万人を超える外国人が暮らす。その子どもたちは、少しでもレールを外れれば、挽回(ばんかい)できない試練の中に置かれている。

 少年は、中学の授業では英語が好きだったといい、これからも勉強を続け、できれば進学もしたいと願っている。少年の再起のチャンスは、閉ざされつつある。
外国人の子 教育など施策は置き去りに

「子どもの権利条約」は、日本を含む批准国に「初等教育を義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとする」ことを求めている
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 憲法26条1項 すべての国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じてひとしく教育を受ける権利を有する

 同2項 その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う

 日本人の子が教育を受ける権利、大人が教育を受けさせる義務はこの規定に基づく。だが、外国人の子が学校を辞めたいと言ったり、親が辞めさせたいと主張したりすれば容認されるのが現状だ。

 一方、日本が批准している「子どもの権利条約」は締約国に「すべての子」に無償で初等教育を行うよう義務付けている。このため文部科学省は、外国人児童・生徒を日本の公立校へ入学させることに前向きだが、現実には「実際の判断は各自治体に任せている」(文科省)。

 政府は「労働力」としての外国人受け入れを決め、1990年に入管難民法を改正した。だが労働者は受け入れても「外国人の子」の教育などの施策は置き去りのままだ。

 佐久間孝正・立教大教授(教育社会学)は「将来も日本で暮らす子どもが『中学校中退』の経歴で大人になるのは大きなハンディキャップになる。教育委員会は教育を受ける権利を重視すべきで、子どもの就学を何よりも優先させるべきだ」と訴えている。

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