多文化共生なTOYAMA

多文化共生とは永続的なココロの営み

多文化協働実践研究・全国フォーラム(議事要旨)

2007-12-07 09:22:36 | 多文化共生
 いくつかの議事要旨を参考までに掲載します。
(以下、要旨)
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分科会A
(1)日系ブラジル人の適応・定住化と人材育成への展望
-長野県上田市の調査から見えてきたもの
『上田市地元企業調査結果』
     大木義徳(前内閣府参事官補佐:現金融機関勤務)
 2007年の8、9月にかけて10社程度を調査。
 調査結果は一般的に示されているとおりの状況であることが判明したほか、企業にとって、外国人は一括りにされておらず、企業ニーズに合った外国人を雇用している実態がわかった。例えば、
・中国人→中国現地での幹部を日本で育成する、
・インド人→数理的素養(二桁の掛け算を暗算でできる等)があるため、IT技術者として活用、
・ブラジル人→戦略的には活用されていない といったこと。
 アジア諸国は自然災害が欧州に比較して高い確率で発生し、また災害保険もないため、被災時には復興に莫大な経費がかかる。このことが企業進出の足かせとなっている(リスク回避)。
 電気機械(ex.携帯電話)の鋳型はモデルチェンジが早く、製品のサイクルが早い。このため、それに従事する日系ブラジル人の採用~解雇のサイクルも短くなっている。これに比較すると、自動車業界は割合長いサイクルとなっている。このため、電気機器を車載化(ex.カーナビ)することによりサイクルを合わせ、雇用調整を行うといった工夫が行われている。
 H21に外登法が改正することは確実だが議論はまったく収斂していない。外登法は入国管理と同じ目的を持っている法律であるため、法の範囲内で、住基台帳と同じように使えるようにすることは困難で、法の目的を逸脱しないということは、テクニカルに回避できるものでもない。

『在日ブラジル人児童生徒の日本における教育参加過程
 長野県上田市におけるインタビュー調査を中心に』
     石塚昌保(心理士、本センターフェロー)
     堀之内テレーザ文子(上田市外国人相談員)
 目的は児童生徒の問題を明らかにすること。
 方法はインタビュー。同意書を取った上で、15組の親子に実施。
 結果の概要は以下の4点。
①移住への経緯は、経済的な魅力や親族が日本にいたこと、親和性が高かったこと等。
②生活上の意見として、
 良かった点は、教育の質がよい、サポート源があること等。
 悪かった点は、言葉や習慣に解け込めない、将来像が描けない、長時間勤務により子どもととの接触時間が短い等。
③子どもの様子として、社会的状況に問題(いじめに合う、暴走族になる)がある、将来像を描けていない(最低限、高校は卒業しよう程度)等。
④子どもの教育に関しては、日本での一貫した教育を望む声が多い一方で、ブラジル文化の伝達に対する葛藤を感じている。
 上田市に住むブラジル人は、来日時は、いずれ帰国するといった考えから、安易にブラジル人学校を選択する。しかし月謝が5~6万円と高く、親の就業状態如何で退学を余儀なくされる。このことから安価な教育の場としての公立学校へのニーズから日本語教室開設の必要性が高まり、センター方式で日本語教室の「虹のかけはし」が設置され、結果として未就学児童が減った。今後は学校との連携強化が必要。
 ブラジル人児童は、時間軸に沿い、次の3点の困難に順に直面していると分析できる。
①生活の問題(まずは言葉、そして文化・習慣)、
②次に家族の問題(明日はどこに住むのかわからない状況や親子のふれあいの時間の欠如)、
③そして心の問題(アイデンティティをどのように確立するのか)、
そしてこの3点について誰が関わっていくのかということも大きな問題である。

『外国人雇用の実態と企業の人事戦略』
     玉川俊夫(日経松尾株式会社総務部総務課長)
 当社には外国人の正社員は数名程度しかいない。日系ブラジル人の雇用は、単価が5円高い企業が向かいに出現するだけで明日には転職してしまうといった勤務の連続性の欠落が、それを難しくしている。自動車部品は、近年特に複雑形状化しており、品質保持が優先されるため、人材育成する必要がある。製造ラインに立つ単なる「作業員」ではない「技能者」が必要な時代となっている。また、パスポートが本物かどうかさえ見極められない企業では、外国人の資質を履歴書から見抜くことは困難であり、その採用を難しくしている。ただし、少子高齢化を迎えた日本の現状を考えると、日本語能力を獲得した日系三世に期待はしている。

『ラテンアメリカ人の移住過程と今後の課題
 トランスナショナルな社会アジェンダの必要性について』
     ウラノ・エジソン(本センターフェロー)
 生産調整に使われている日系ブラジル人の雇用の不安定さこそが、様々な問題の構造的要因となっているのではないか。雇用が不安定な状態では、生活は安定せず、家庭も子どもの教育も社会保険等もゆさぶられる。このしわ寄せが自治体や企業にも波及する。 労働現場の健全化がすべての端緒になるのではないか。
 今後の移民施策を考える場合は、必ず市民権とセットにして考えていく必要がある。

分科会B
(3)自治体及び国際交流協会職員に求められるコーディネーターとしての専門性
-現場の実践から-
『先行研究からみるコーディネーターの専門性分析』
     横井みどり(本センターフェロー)
 別添資料のとおり、コーディネーターには様々な分野、職、名称、雇用形態等がある。日本ボランティアコーディネーター協会のボランティアコーディネーターがその草分け的存在。このため、同協会の筒井のり子代表理事からヒアリングし、研究した。また、豊橋教委の多文化ソーシャルワーカーを実態調査した。今後、さらに研究を深め、公表する予定。

『多文化共生の地域づくり調査を実施して』
     山口和美(群馬県新政策課)
 自分はこれまでコーディネーターという視点で施策を考えたことはまったくない。なぜなら、行政や協会職員が自らコーディネーターの役割を担うと考えているからである。
 コーディネーターは現場を知ることが前提条件であり、それを踏まえ、現場で必要となる専門的知識を保持し、連携と協働を支えるものである。地域の問題・課題に対応する際には、グローバルな視点を持ち、判断していくことが求められる。

『いわて版多文化共生のコーディネーター』
     宮順子(岩手県国際交流協会主査)
 岩手県は、外国人は集住しておらず点在し、国際結婚配偶者という外国人が多い。県内の市町村地域国際化協会は形態・規模等バラバラである。協会が存在しないケースもあり、明らかに人材不足。このことから、子どもと母親の問題が顕在化してきている。これに対応するため、地域でのキーパーソンとなるコーディネーターの人材育成に取り組んでいる。「コーディネーターとは何か」「その役割は何か」といった研修を実施している。
 さらに受講生を絞り込み、受講生らによる「いわて版国際理解ハンドブック」を作成に着手している。
 コーディネーターに求められる能力としては、
・説得力…専門機関につないだときに、その機関職員が具体的に相談外国人が直面している状況をイメージできるように説明できる能力、
・情報発信能力…専門性のある幅広い情報を、わかりやすい形で発信できる能力、
・リソースの活用能力…課題に対応する際に、自分に不足するリソースを自覚できること。不足した部分を既に持っているリソースでおぎなえること
であると理解している。

『多文化共生の“まちづくり”をめざして』
     阿部一郎(金沢国際交流財団)
 大阪府内の国際交流会に勤務していたが、金沢での講演をきっかけに金沢国際交流財団のプログラムオフィサーを勤めることになった。当財団には“ミッション”“オブジェクティブ”“ゴール”を提案し、例えば、金沢21世紀美術館で、在住外国人と日本人を撮影し、「金沢の好きな場所と理由」「5年後に金沢に期待すること」をコメントしたパネル展を企画した。これは金沢市には文化を尊重する素地(地域リソースの活用)があり、在住外国人が文化的資源であることを意識化させることを狙った企画である。交渉は困難を極め、わずか5日間の企画展ではあったが、在住外国人をエンパワメントするものであったと自負している。
 コーディネーターに求められる素養としては、自分の言葉でメッセージを発信することができるか、相手の言葉を体験的に理解できるかといったことである。

12月2日(日)10:00~12:00
分科会C
(6)外国につながる子どもたちの教育を地域から育む試み
-地域、学校、行政、当事者の協働実践モデル構築を目指して-
『外国につながる子どもの教育を地域から育む試み』
     根岸親(本センターフェロー)
 外国人の増加に伴い、子どもも増加し、学校のみの支援では限界に達しているが、地域と学校との連携が必要であることから、発想を転換し、学校ではなく地域を中核として協働実践モデルの構築を試みている。
 研究事例には川崎市の「楽・ふれあい・トーク」と福岡市の日本語教室「よるとも会」等を対象とした。
 今後はそのモデルの構築や各団体の役割分担等について検証していく。
事例:「楽・ふれあい・トーク」
開催の意味・手ごたえとしては
・学校外で実施したことにより、学校を見直すきっかけとなった、
・外国人が少しは悩みを吐露できる場となった、
・(↑と重なるが)外国につながる青年が自らの経験を発表したが、自分が外国につながっていることを対外的に話し始めるのが遅かったと反省した、
・地域を問い直すきっかけになったこと 等があった。
ワークショップは①個人単位、②グループ単位、③外国人当事者からの提案で構成され、ワークショップでの具体的提案としては、
・外国人と日本人が共有する場の必要性、
・活動するボランティアのための教科書の必要性、
・各国の教育制度やカリキュラムを紹介する冊子の必要性、
・家庭訪問の必要性、
・交流の場の必要性、親子で学べる日本語教室の必要性、
・学力や進路相談の必要性、
・そもそも義務教育化すべきではないかという提言 等があった。

『保見団地の子どもたちとともに』
     井村美穂(NPO法人子どもの国理事長)
 保見団地は住民が9,149人中、外国人4,110人(うちブラジル人95%)と44%が外国人で構成されている。外国人の占める割合は特に子どもに顕著に現れ、
  1歳児…外国人73%
  2歳児…76%
  3歳児…83%
  4歳児…65%
  5歳児…68%
  6歳児…64% となっている。
 日本語教室「子どもの国」は1999年に基金を設立し、2001年NPO法人化、2002年に豊田市から委託事業を受け、軌道に乗り始めた。教室は小中学生を対象とし、月曜日~金曜日の午後2時~6時まで開催している。スタッフ25人程度が曜日ごとにローテーションを組んで、5~7人/日体制で実施している。教室開設当初は毎日が運動会で、とても日本語を教えるような環境にはなかった。親の同意の下、学校と教室とで情報交換(学校の出欠状況や情緒の安定度等)を行うようにし、きめ細やかな対応が可能となった。この結果、教室と学校はお互いになくてはならない必要不可欠な存在となった。
 現在、20数名の待機者がいることや不登校対策、保育園・幼稚園との連携等の課題がある。
 外国人児童に日本語を教える過程で、発達障害を見過ごす事例があった。当該児童の日本語能力の未発達が単に言葉の問題なのか、文化の問題なのか、障害の問題なのか、早期に見極める必要がある。スタッフ研修の中に発達障害というキーワードを盛り込むことにより、見逃さないように留意している。このような予期せぬ事例は、スタッフのネットワークの中で、使えるリソースは最大限に活用するといったことが必要である。

『多文化住民がふれあえる街を目指して
 -香椎浜小学校親子日本語教室「よるとも会」の活動-』
     古賀美津子(よるとも会副代表)
     吉谷武志(よるとも会代表、九州大学)
 香椎浜小学校区は半径1km程度のエリアに2,000世帯ほど住んでいるなか、200世帯程度が外国人住民である。自分(古賀)が香椎浜に住み始めたのが14年前で、13歳の子どもがいるが、その子の散歩をしている中で、外国人住民とコミュニケーションを取るようになり、彼らが深刻な問題を抱えている状況を知った。次第に相談が増え、毎日3~4家族が常に相談のために自宅に滞在している状況が続くようになった。相談内容は学校からの案内や行政の文書等の翻訳、通訳が中心。自宅を使った相談会が限界に達したときにPTAに投げかけ、PTA内に「フレンズ会」という学校からの文書の翻訳や学校行事への参加を促す組織が設立された。さらに不足部分を補う形で、日本語を通じた異文化間の交流を促す親子日本語教室の「よるとも会」が設立。「よるとも会」には様々な立場の人が参加する「ともに生きる街ふくおかの会」が関与し、情報提供する形を取っている。相当な熱気を持った日本語教室であったため、自然発生的に香椎浜公民館や人権尊重協議会の協力が得られるようになった。設立当初は100名を越える参加者があったが、現在、スタッフ30名、生徒30名程度で、1対1の関係で、友達づくりという雰囲気の中で教室が運営されている。不登校児童も遊びに来ている。課題は財政的な問題。

『「進路をあきらめない」居場所から連携を目指して』
     原千代子・笹尾裕一(川崎市ふれあい館)
 川崎市ふれあい館は、もともとは在日コリアンのための施設であり、スタッフにも在日コリアンが就職しているなど、珍しい施設として注目を集めているが、最近はニューカマーも増加したため、モザイク状になっている。
 ふれあい館識字学級の生徒はほとんどがフィリピン人妻の子(中学生)。最近、在住20年程度経過したところで、本国の子どもを呼び寄せるといった事例が頻発。日本人の父親は子として受け入れないといったトラブルもある。
 外国人児童のほとんどは将来像を描けないでいるが、高校に進学したフィリピン人が、彼らの小さな目標となっているといった微笑ましい光景も生まれている。

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