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外国人が見た被災地の外国人 中国人女性、記録映画制作

2013-03-12 16:35:17 | 多文化共生
(以下、朝日新聞から転載)
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外国人が見た被災地の外国人 中国人女性、記録映画制作

初監督作品「身分(シュンフン)」の編集作業中の白諦さん(中央)。東京芸大大学院映像研究科の同級生が編集に協力した=3月2日、仙台市のせんだいメディアテークで

宮城県石巻市の外国人妻たちの親睦会「ハッピーママの会」を取材する白さん。左からリーダーの畢麗君さん(左)と杉山美恵さん=3月3日

佐々木アメリアさん(右から2人目)ら南三陸町のフィリピン人たちを撮影した映画「身分(シュンフン)」の一場面 (C)『身分』―白諦


 【松原央】中国語でアイデンティティーを意味する「身分(シュンフン)」。そんなタイトルのドキュメンタリー映画が、東日本大震災で壊滅的な被害を受けた宮城県の沿岸部を舞台に、中国人女性の手によって撮影された。主役は中国や台湾、フィリピンから嫁いできた外国人妻たちだ。外国人の目を通して見た被災地の外国人。そんなユニークな作品が、震災から2年を経て完成に近づいている。

■北野映画に魅せられて日本へ

 2011年3月11日の地震で市街地を津波が襲い、死者・行方不明者4千人を出した石巻市。3月上旬、横浜市から夜行バスでやってきた白諦さん(29)を出迎えたのは、石巻で活動する外国人妻の親睦グループ「ハッピーママの会」のリーダーで台湾出身の杉山美恵さん(52)と中国出身の畢麗君さん(45)の2人だった。

 「あんまりよく来るから近所の人が本当の娘だと思ってたのよ」。杉山さんが切り出し、日本語と中国語を交えた思い出話に花が咲く。白さんが愛用のデジタル一眼レフカメラを取り出し、2人にレンズを向けて録画ボタンを押した。

 白さんは東京芸大大学院映像研究科で学び、昨年4月に卒業。その翌月、初めて監督作品として取り組むドキュメンタリーの取材でこの2人に出会った。

 白さんは中国でも有数の名門美術大学、南京芸術学院でアニメーションを専攻し、卒業後はインテリアなどのデザイナーとして働いていた。だが、北野武監督の「菊次郎の夏」などに魅せられて日本映画にあこがれ、かつて北野監督が教えていた東京芸大の映像研究科を留学先に選んだ。

 震災後は原発事故の影響を心配した両親に説得され帰国した。しかし、中国で見た被災地のニュース映像は、自分が日本では気づかなかった日本人の「強さ」を伝えていた。日本への思いが募り、周囲の反対を押し切って震災から1カ月後に日本に舞い戻った。

 来日時は2年の修士課程を終えて中国に帰ろうと思っていた。「なぜ震災後、そこまで愛着を感じたのか自分でも不思議だった」。答えを求めて滞在を1年間延長し、震災後も被災地に残ることを選んだ外国人たちの取材を始めた。

 中でも強く引きつけられたのが、古い家族観と慣習が残る東北の漁村や農家に嫁いだ外国人妻たちだった。日本に対する複雑な思いを抱きながら、家族のため、地域のため、同胞のために奮闘する女性たちの姿が心をとらえた。