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中国スト続発―低賃金に世界は頼れない

2010-06-16 10:33:08 | 多文化共生
(以下、朝日新聞から転載)
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中国スト続発―低賃金に世界は頼れない

 「世界の工場」といわれる中国で、労働者たちが声を上げて待遇の改善を求めている。憲法で認められていないストライキさえ、続発している。

 経済のグローバル化が進むなかで、中国など新興国の安価な労働力は、先進諸国の賃金を下げる圧力になってきた。なかでも、共産党と労働組合の指導のもと従順な中国の労働者は、企業から見て良質な戦力だ。

 そんな労働者の決起に、経営者は頭が痛いかも知れない。だが、「世界の工場」として発展する中国の労働者が、その担い手としてふさわしい賃金を求めるのは当然のことだ。

 賃上げで中国の人々の所得が増えれば、消費も増える。内需拡大で「世界の市場」としての成長は確かなものになる。それは中国の経済社会の健全な発展はもちろん、世界経済の均衡ある発展にとっても大切である。

 広東省にあるホンダ100%出資の部品工場では、先月中旬に賃上げを求めてストライキが起きた。変速機などの供給が滞り、組み立て工場が操業停止に追い込まれた。

 同じ広東省にある台湾系で世界有数の電子機器メーカー「富士康」はもっと深刻だ。今年だけで13人が自殺を図り、うち10人が命を落とした。連日の残業に追いつめられていたといい、内外から大きな非難が相次いだ。

 いずれも、大幅な賃上げで事態を収拾した。賃上げを求める動きは、ホンダなどの例に刺激されて全国に広がる気配だ。外資系企業のなかには、ストライキに驚き、人件費増を避けるために、中国内陸部や外国への転進を図るところも出ている。

 外資を積極的に導入し、安い労働力を駆使する輸出加工型発展モデルで、中国は高成長を続けてきた。しかし、その成果は経営者などに厚く配分され、労働者は冷遇されてきた。

 農村からの出稼ぎ労働者が集中する沿海部での月給は2万円前後。連日の残業をこなさなければ、実家への仕送りはできない水準だ。

 多くの工場では、従業員は一部屋に10人前後で暮らし、プライバシーはないに等しい。医療設備や厚生施設が整っていない企業はなお多い。

 それを意識しているのだろう。中国当局も一連の争議にほとんど介入していない。そればかりか、中央の指導者は格差の是正のため、経済構造を輸出・投資主導から消費主導に改める方針を打ち出し、労働者の所得増を公約している。企業も安い労働力依存からの脱皮を図り、産業の高度化や新ビジネスを探るようになる。

 安く抑えられた労働力を頼みに利益を上げるやり方を、中国の労働者たちが是正しようと動き出した。グローバル企業も、彼らの異議申し立てをきちんと受け止めていくべきだろう。