多文化共生なTOYAMA

多文化共生とは永続的なココロの営み

再生のとき:/7 県営住宅、自治会長はペルー人

2010-01-07 09:20:59 | 多文化共生
(以下、毎日新聞から転載)
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再生のとき:/7 県営住宅、自治会長はペルー人
 ◇今や、住人に推され

 集会所前で餅つきが始まった。「よいしょっ」。威勢のいい声が響くと、たちまち十数人の人垣ができた。その中には南米系の彫りの深い顔も交じっている。

 09年暮れ、愛知県西尾市の県営緑町住宅の自治会が開いたクリスマス会。最初に杵(きね)を振ったエルメニ・セザルさん(42)は、ペルー人の自治会長だ。築およそ30年の緑町住宅には、70世帯が入居する。半数は日本人だが、残りはブラジルやペルー、中国などから来た人たちだ。

 「もう腕が上がらないよ」。セザルさんは笑いながら餅をほおばり、ローストチキンの調達に出かけた。「餅とチキン、日本人も外国人も好きだからね」

 日系2世の妻(41)と来日したのは90年11月。ペルーはすさまじいインフレと左翼ゲリラのテロに見舞われていた。東京や新潟で働き、00年、知人を頼って西尾市に来た。日本生まれの三男を含む3人の息子を育てるため、残業、休日出勤もいとわなかった。

 だが来日以来、不満が一つあった。「外人」と見る周囲の目だ。職場の忘年会で「お前らは泥棒だ」となじられたり、ごみの袋を開けられたりした。3年前から自動車部品工場の正社員になったが「偏見が続けば、可哀そうなのは子供たちだ」と思うようになった。

     ■  ■

 「自分たちのイメージを変えたい」。その一念で、セザルさんは「えい、やーっ」と手を挙げた。

 07年3月、集会所で開かれた自治会長を決める会合。みな押し黙り、役に就くことを敬遠しているような空気が漂い始めた時だった。「外国人でも自治会長ができるなら、私に教えてください!」

 出席していた住人たちは顔を見合わせた。「大丈夫か」「これでいいのか」。しかし、他に立候補はなく、前任者が補佐することで就任が決まった。

 やってみると、自治会長の仕事は結構忙しい。団地内の掃除、随時開かれる役員会。市役所から来る文書の配布。そして住人間のトラブル対応。セザルさんは、日本人と外国人双方の話が聞ける強みを生かし、乗り切ろうとした。

 外国人の子供たちが外で遊んでいるだけで警察を呼ばれたことがあった。「日本人は、あんまりにぎやかなのは嫌い。外国人は好き。だから日本人はちょっと我慢して、外国人も騒ぐのを少し抑える。それでいいでしょ」。そう話すと問題は収まった。

 共用部分に外国人が勝手に花を植えた。「花は周りを美しくする。植えた人が最後まで面倒を見ればいいことにしよう」とルールを決めた。少しずつ、セザルさんたちを見る目が変わっていった。

     ■  ■

 2年の任期を終え、09年春、新会長を決める会合がまた開かれた。日本人の役員の男性が手を挙げ発言した。セザルさんは、この男性が少々苦手だった。言葉の端々に、外国人をよく思っていないような雰囲気を感じていたからだ。

 「このメンバーでやってよかった。みなさんがよければ、もう1年、一緒にやりませんか」

 意外だった。セザルさんは「よろしくお願いします」と言って胸が詰まり、言葉を継げなかった。女性の役員が「これでいいね。これでいい」とうなずきながら補ってくれた。

 自治会長として3年目に入った。セザルさんは「外国人と、ひとくくりにするのではなく、一人の人間として評価してくれるようになった。私も今は、日本人は仕事ばかりの人たちだという決まった見方をしない」と語る。

 日本人の役員の一人は「住人同士の垣根が低くなり、あいさつや世間話がごく自然のことになった」と話し、こう付け加えた。「南米人のアバウトさが、不思議と日本人にも心地いいんです」

 1月の役員会は、正月の話で盛り上がりそうだ。【飯田和樹】=つづく

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 ◇そのとき日本、ペルーは
 ■1989年
 ペルーで年率2775%のハイパー・インフレ
 ■90年
 6月 1日 日本の改正入管法施行。日系3世まで就労可能に
   10日 日系のアルベルト・フジモリ氏がペルー大統領選で当選
 ■91年
 7月12日 ペルーで日本人農業技術指導員3人殺害
 ■96年
12月17日 左翼ゲリラのトゥパク・アマル革命運動(MRTA)がリマの日本大使公邸占拠。翌年4月22日に軍の特殊部隊が突入。ゲリラ14人全員と人質1人死亡
 ■99年
 日本人のペルー移民100周年
 ■2001年
 ペルー人の外国人登録者、全国で5万人を突破(08年末で5万9723人)

外国人看護師 日本語の壁なくすには

2010-01-07 09:20:34 | 多文化共生
(以下、中日新聞から転載)
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外国人看護師 日本語の壁なくすには

2010年1月7日

 来月の看護師国家試験に、来日中のインドネシア人候補者たちが挑戦する。漢字だらけの試験の難しさに「事実上の受け入れ拒否」との声も上がる。形だけの門戸開放にしない手だてが必要だ。

 介護福祉士候補を含めた外国人の受け入れは、経済連携協定(EPA)により二〇〇八年度からインドネシアとの間で実施。〇九年度はフィリピンからも来日した。今後、ベトナムも参加する可能性があるという。

 しかし、実際の受け入れは低調。インドネシアからは二年間で千人の枠に対し、五百七十人と半分程度。フィリピンからも一年目は三百十人にとどまった。負担の大きさに受け入れをためらう施設が多いためだ。

 看護師候補は三年以内、介護福祉士候補は四年以内に国家試験に合格しなければならない。受験機会は看護師が三回、三年の実務経験が必要な介護福祉士が一回。高いハードルだが、日本語教育や試験対策は何と各施設任せだ。昨年は八十二人が看護師試験を受けて、全員が不合格。問題には、例えば「気道閉塞(へいそく)」「腹内圧上昇」など漢字の専門用語が頻出し、期間内に合格者が出ない可能性すらある。

 厚生労働省は外国人の受け入れについて、人手不足への対応ではないと強調してきた。しかし、形だけ受け入れるという姿勢では、現場は混乱し、希望を持って来日した候補者たちの夢を壊すことになる。今後想定される外国人労働力の本格的な受け入れのテストケースとしてとらえ、もっと前向きな対応をする必要があろう。厚労省は新年度予算案にパソコンを使った日本語指導などの支援策を盛り込んだが、施設への丸投げを抜本的に改め、国の責任で日本語教育に取り組むべきだ。また、現在の滞在期間では受験の機会が少なすぎる。期間の延長を検討してはどうか。

 名古屋市内で働くインドネシア人女性は「試験問題を読み上げてもらえたら」と言う。電子辞書持ち込みの要望も出ている。看護師候補は全員、母国の看護師資格を持っており、言葉さえ分かればという思いが伝わる。一方で、医療や福祉の現場ではカルテなどの記録の読み取り、記入が不可欠。命にかかわる場面もあり、特別措置は望ましくないという指摘もある。門戸を開いたからには、技能を生かすために候補者や施設側の声にも耳を傾け、最善の道を考えてほしい。

「命を守る」事業 さらに推進

2010-01-07 09:19:32 | 多文化共生
(以下、タウンニュース(神奈川県)から転載)
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「命を守る」事業 さらに推進
森田区長に聞く今年の南区

南区作成の要援護者マップを
手に話す森田区長

職員のアイデアから生まれた
インフォメーションセンター


 本紙では南区の森田信英区長にインタビューを行い、昨年の振り返りと今年の重点事業などについて話を聞いた。就任3年目の森田区長は、1年目から取り組む災害時の要援護者支援事業などが着実に進んでいるとした上で、今年は区民の命を守る事業にさらに力を入れていく方針を示した(聞き手/本紙編集長 門馬康二)。

事業の中身が充実

-昨年の事業を振り返っての評価はいかがですか。

森田区長 -全体的に順調に来ています。事業そのものの中身も濃くなっていると感じています。

-その中で特に印象に残っている事業は。

区長-災害時の要援護者支援事業は南区では区長就任時までは何も手を付けていませんでした。それが昨年度は4自治会、今年度は33の町内会・自治会で要援護者名簿やマップ作りを進めています。区では市から提供されている情報を地図に落としているので、いざという時にその地図を使って回ることもできます。名簿作りは要援護者が自ら手を挙げてもらう方法をとっていますので、意思表示をしてほしいです。

-18区でも珍しい自殺予防事業にも取り組みました。

区長-全国で毎日100人近い人が自殺している中、この取り組みは市内18区で南区だけが行っています。昨年12月に実施した鎌田實さんの講演会にも多くの応募がありました。自殺予防に対する区民の意識が変わってきたと感じています。

-区役所窓口や職員のサービスについてはいかがですか。

区長-職員のアイデアで昨年5月、区役所2階にインフォメーションセンターを設置しました。サービスを提供するからには「人材こそ命」なので、CS(顧客満足)研修などで人材育成を行っています。職員が随分明るくなってきたと感じています。

-今年度から「地域力推進担当」を設け、自治会・連合町内会単位で担当者を置いていますが。

区長-担当職員が町内会の定例会に参加し、町内会長からの評判は良いです。「区役所が身近になった」との声もいただいています。

要援護者支援を拡充

-今年、重点的に取り組んでいきたい事業はどのようなものですか。

区長-要援護者支援事業は一層拡充していきたいです。これまでの2年間でこの取り組みに関しては市内18区の先頭グループに入ったので、今年は先頭に立てるようにしたいです。

-ごみ削減の「G30」をはじめとする環境問題も重要になってきていますが。

区長-南区のごみ量は順調に減り続けています。区民の皆さんにはよく協力していただいていると思います。また「緑のカーテン」は南区が先駆的な取り組みを進めており、他区からも参考にされています。区のシンボルである桜を2月に各連合町内会の地域内に1本ずつ植樹する予定です。

-そのほかには。

区長-南区は外国人の数が18区中3番目に多いです。今後はより力を入れて外国人支援を行い、相談会や交流を行いたいです。

あったかい区づくりを

-最後に南区民へのメッセージをお願いします。

区長-南区は75歳以上の高齢者率、65歳以上の単身世帯数が市内1位です。今後も元気な高齢者を支援していきたいです。今までも「命を守る」という視点から事業を進めてきました。今年も「南の風はあったかい」のキャッチフレーズの通り、あったかい区づくりを進めていきます。