東京コンサルティンググループ・マレーシアブログ

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~マレーシアにおける労働判例(正当な事由とは)~

2016-01-25 15:40:54 | マレーシア労務

  お世話になっております。東京コンサルティングファームの藤井でございます。

 今週からは、労働裁判の判例をケーススタディの題材として使用し、どういった思考軸を持って自社の従業員と接すればいいのかについて考えていきたいと思います。また、この判例が皆様のビジネスの一助となれば幸いでございます。

 

〜正当な事由とは〜

 

判例

<背景>

1991年に行われた裁判です。

 

マレーシアにあるA社は、B氏を1988年10月1日に採用いたしました。正式な採用は、1989年1月1日からとなっており、10月1日〜12月31日は試験期間として働いていました。当時の月給は、550RMであり、正式に採用された後の給与は、570RMとなる予定でした。A社は、1988年11月23日に正式な社員として、1989年1月1日から迎え入れる通知書を発行し、正社員としてB氏を迎え入れました。しかし、正式な社員として働き始めた9日後、1989年1月10日、A社から勤務態度に問題があるとして、解雇通知を渡され、解雇となりました。B氏はその後、理由と根拠が不十分として労働裁判所に訴えを起こし、裁判が始まることとなりました。

 

<B氏の主張>

 

会社が理由としてあげた、勤務態度や業績が良くないという根拠を明確に示してほしい。現時点で何が駄目であったのかまったく判断ができず、不当解雇に相当すると考えている。

 

<A社の主張>

 

正社員として迎え入れ、給与も20RM昇級をした。しかし、勤務態度は、試験期間中と同じであり、昇級した分の働きが一向に見えない。よって、会社としては、業務能力が満たしていないと判断し、解雇せざるをえなかった。

 

<裁判所の見解>

 

論点は、解雇理由である、勤務態度や業務パフォーマンスが会社の求める水準に達していないということであり、それが双方の間で明確になっていないということです。裁判所は、この点を踏まえ、以下のような見解を示します。

 

まず、解雇に該当すると言われる勤務態度や業務パフォーマンスが会社の基準に満たしていないという根拠がA社から提示されていない。また、B氏の勤務態度に問題があるという第三者側からの証言などもない。これら二つ事実から判断し、本ケースでは、A社の不当解雇という判例とする。

 

<解説>

 

本案件は、解雇するにあたり、何を持って正当な理由とするのかという部分が大きな論点となりました。A社側からは、何を持ってという具体的な内容がなかったため、労働裁判所に正当な解雇という認識を持たせることができませんでした。そうすると、会社を運営する立場である人は何を持って正当な理由とするのかという部分が非常に気になるところでございます。

 

労働裁判所が出している指針としては、下記のような手順を踏み、正当な解雇事由を得られると判断することができるとされています。

 

  1. 同じ内容の警告書を発行している
  2. 改善する機会を与えている

 

この1.2.を適切に踏まえ、それでも改善がない場合は、正当な理由を持って解雇できます。ただし、ここで注意が必要なのは、警告文をいつ送ったか、どんな内容(できれば具体的に)に対して送ったのかを明記し、それに対してしっかりと通知をしたという証拠を得るために、該当従業員と人事部のトップないしは、会社代表者の署名を取り付けておき、原本両方を保管することが望ましいです。また、改善機会を与える際にも、いつどこでどのような機会を与えたのかという部分もしっかりと証拠として残しておく必要があります。そこまでして、初めて正当な手続きを踏んでいるという証拠として機能することになるからです。また、気をつけて欲しいのは、警告文を与える回数や改善機会を与える回数も同じ業務に対して、最低二回は欲しいところです。ただ、この回数というのは非常に厄介でありますので、詳細(どう言った警告文にするか、回数はどの程度にするか等)は、必ず弁護士と相談の上、ケースに応じて対処することが望ましいと言えます。

 

何かご不明点等があれば、気兼ねなくお問い合わせくださいませ。

Tokyo Consulting Firm Sdn. Bhd.

Managing Director

藤井 大輔 (ふじい だいすけ)

TEL: +603-2092-9547 / E-MAIL: fujii.daisuke@tokyoconsultinggroup.com

Mob: +60-11-3568-4629

 


 

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~マレーシアの新しい統括事務所のスキームPrincipal Hubについて~

2016-01-15 19:23:33 | マレーシア投資環境・経済

 

Tokyo Consulting Firm Sdn. Bhd.

Managing Director

藤井 大輔 (ふじい だいすけ)

TEL: +603-2092-9547 / E-MAIL: fujii.daisuke@tokyoconsultinggroup.com

 

  お世話になっております。東京コンサルティングファームの藤井でございます。

 今回は、マレーシアにおいて新たに発表されたPrincipal Hub(PH)について、シンガポール及びタイと比較をしながら書いていきたいと思います。少し長くなりますが、お付き合いいただけますと幸いです。なお、後掲の財務管理センター(TMC)は今後も継続されます。また、その機能は、統括会社の機能とは少しばかり違うため、本コラムでの説明はいたしません。

 

  1. Principal Hubの説明

 Principal Hub(PH)とは、2015年5月1日から、マレーシアで新しく始められた地域統括会社のスキームの一つのことです。以前から、マレーシアでは、流通統括機能を有する会社(IPCやRDC)、地域統括会社(OHQ)、財務管理センター(TMC)のスキームがありましたが、本スキームは、別々であった流通機能統括会社、地域統括会社の両方の機能を兼ね備える新しいスキームであり、流通統括機能を有する会社(IPCやRDC)、地域統括会社(OHQ)のスキームは廃止が決まりました。TMCに関しては、まだ継続されております。このため、現在は、このPHの申請しか受け付けておりません。政府が明確な指針を出していないので、はっきりとしたことは言えませんが、上記のスキームを現時点で有している会社については、更新する段階でインセンティブがなくなり、PHへの切り替えを行うかインセンティブはないがその名称を使うかといった選択が今の所できると考えられます。

 このPHは、シンガポールやタイに対抗するため、かなり税率を下げています。その分、申請条件が今までの統括会社の申請条件よりもかなり厳格化しているという面もありますが、このPHの設置を促すことにより、マレーシアのビジネスセンターとしての地位が確立されることが期待されています。

 詳しいインセンティブや取得要件については、次項をご参照ください。

 

2.Principal Hubのインセンティブと要件

 

 

※インセンティブの延長については、申請時よりも20%人員(月給5,000RM以上)が増加していること、年間事業費が30%増加を要件に、5年間の延長が認められています。

 最低払込資本金は、250万RMが必要です。月額5,000RM以上は、技術あるいは専門性のあるスキル等を有する高度知的専門職の要件とされており、月額25,000RM以上は経営や戦略立案などを担う経営職の人材の要件となっています。また、ステータス取得3年経過後には、月額5,000RM以上の人材の半分をマレー人とすることが要件とされていますが、今後の実務上の扱いについては今のところ不透明です。外資規制もこのPHが認可された会社は適用外とされておりますが、これも実務面でどうなっていくのかは現状不透明です。

 なお、この軽減税率については、マレーシア国内から上がる所得が全体の30%を上回ると適用対象外となるため注意が必要です。

 

※1 参考 旧マレーシア統括機能優遇策

 

※     2 参考MIDA資料より作成(2012年度時点での制度利用状況)

 

3.シンガポール、タイの優遇策

 シンガポールやタイでは、以前のマレーシアと似たようなスキームから選べる形態となっています。現在マレーシアで地域統括会社(新スキームではない)ステータスを取得している日系企業の担当者様にお話を伺うと、シンガポールと比べコストが低いことが主な理由に挙げる方が多くいらっしゃいます。例えば、マレーシアでは人件費やオフィス賃料などでもシンガポールとは比べるかなり抑えることができますし、また人材もシンガポールと同様に、中国語と英語両方を話せる人材もいますので、同じ能力であれば、少しでも安い方が魅力となっているようです。また中には、ASEANとインド方面への両方の輸出入が可能な地理的な要因を根拠にあげる方もおりました。マレーシアで統括会社を開く要因となっているのは、事業のランニングコストの低さ、英・中を話す人材、そして地理的要因、この3つに大きく分けることができると思います。

 

 

4.マレーシアに地域統括会社を設置する意味とは

 世界銀行が出した報告書によると、TPPが仮にうまく機能すると仮定すれば、マレーシアはTPPの影響で、2030年までに輸出が20.1%、GDPが8%までに押し上げられるとされており、より大きな恩恵を受けることができると想定されています。また現時点でも毎年、輸出高は平均3.2%増えており、輸入高に関しては、国内の消費が落ちてきているものの、年平均6%増えております。ASEAN地域だけではなく、最近のマレーシアの輸出トレンドを見ていると、FTAを結びさらに両国間での貿易活動が活性化されているトルコ、インド、EUの取引が多くなってきています。また、マレーシア政府は、カタールやEUなどとFTAを結ぶことも視野に入れているため、さらなる貿易活動の活性化が期待されています。やはり東と西どちらにもスムーズに出られる地形、そしてASEAN地域内で港湾量第2位を誇るKLのポート・ケラン、港湾量第3位を誇る、JBのタンジュン・ペラパスの二つがある環境。これらの優位性はマレーシアに統括機能を置き、他国とのビジネスをしていくことを考える大きな魅力の一つでしょう。また、中国が海洋版シルクロード構想の実現に向けて、マレーシアへの投資を増やしてきていることも気になります。

 私としては、マレーシアに統括事務所を設置しグローバルな事業展開の拠点とすることを積極的に提案しております。何かきになる情報等をお聞きしたい場合は、いつでもご連絡ください。

 

 

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