カバー3曲めは、ディック・ミネさんの「人生の並木路」
https://columbia.jp/artist-info/hikawa/discography/COZA-216-7.html
Kiinaの歌唱はこちら↓
https://m.youtube.com/watch?v=yqFDsvw628k
歌詞は歌ネットより。
https://www.uta-net.com/song/54986/
オリジナルは、昭和12年公開の映画「検事とその妹」の主題歌として作られました。
ディック・ミネさんの名唱で戦前戦後を通じて愛されてきましたが、森進一さんが古賀政男さんの作品を集めて制作したアルバム「影を慕いて」でこの曲を歌われて、新たな感動を呼びました。
森さんとタッグを組んでいらした作曲家の猪俣公章さんが、ご自身の自伝の中でアルバム制作の経緯を紹介されていました。
猪俣さんは古賀政男さんのお弟子さんでしたが、「森さんで古賀先生のアルバムを作りたい」とお願いしたところ、「自分はコロムビアの専属」(森さんはビクターです)と門前払い。
ところが、以前から古賀さんご自身が森さんに興味を持っていらしていて、その直後に「ちょうどコロムビアとの契約更新の空白期間がある。今なら!」と古賀さんの方から猪俣さんに連絡され、それでもコロムビアに配慮して古い作品で構成することにしたのだそうです。
森さんのレコーディングには古賀さんが直々に立ち会って細かく指導され、時には涙を流されていたと。
確か「人生の並木路」もそうだったように記憶しています。
長々とご紹介したのは、猪俣さんの自伝「酒と演歌と男と女」の中でも、特にこのエピソードが強く印象に残っていたからです。あの伝説のアルバムがそんなことから誕生したんだなぁと。
そういうわけで、森さんの鬼気迫るような歌唱の印象が強い「人生の並木路」ですが、改めて創唱者のディック・ミネさんの歌唱を聴いてみると、こちらもしみじみと深く胸に沁み渡ってきます。
要は、この曲は単に歌が上手いだけでは聴き手の心に届かない難曲なのだろうということです。
歌詞だけを見ると淡々と3行詞が並んでいるだけのようでいて、そこに聴いている人それぞれが自分だけの思いを寄せる、そんな曲なのでしょう。
私はKiinaが28歳で吹きこんだこのアルバムよりも、ずっと後になってから確か「BS日本のうた」で五木ひろしさんとコラボした時の歌唱の方が印象に残っています。
五木さんが1番をKiinaが2番を。短いフレーズでしたが、大先輩の胸を借りるのではなく、解釈の深さも表現力の高さもまったく五分と五分の素晴らしいコラボでした。
ちなみに、私が「泣くな妹よ 妹よ泣くな」のフレーズで思い浮かべるのは、うんと幼い頃に祖母に連れられて町の劇場で観た映画のワンシーンです。
後で思うに、おそらく「にあんちゃん」だったのではないかと。