ビヨルン・ボルグとジョン・マッケンロー、フィル・ミケルソンとタイガー・ウッズそしてジェームズ・ハント(クリス・ヘムズワーズ)とニキ・ラウダ(ダニエル・ブリュール)。よきライバルに恵まれるかどうかで、どのプロ・スポーツ選手の人生も大きく変わってくるようだ。
かたや英国貴族のお坊っちゃま、かたやドイツ実業家の御曹司。どちらも裕福な家庭に生まれながら一流F1ドライバーになるまでの道のりに紆余曲折があったことが、映画の中で語られている。
女にはモテモテ、レース場内でタバコはふかしシャンペングラスを豪快に空けるハントは典型的な快楽主義者。マシーン・セッティングの天才ニキは、「20%以上のリスクはけっしてとらない」と明言する徹底した合理主義者だ。
マクラーレンと、フェラーリという一流チームへの移籍がきまった二人。つばぜり合いが展開されるGPシリーズにおけるレースシーンが本作の見所となっているのだが、名匠ロン・ハワードの手によって私のようなF1素人が見ても飽きない作りになっている。
超スローモーションと極短カット割り、(なんとレーサーの股間にもカメラが仕込まれ)ありとあらゆるアングルからとらえられたシーンが、F1レースのスピード感や迫力をあますことなく伝えているのだ。
そんな白熱したシーズンの最中、ドイツGPニュルンブルグリンクで起きたクラッシュ事故。大火傷を負ったニキ・ラウダが、連戦連勝を重ねるハントの活躍を横目に、闘病生活を送る様子も生々しく描かれている。
「俺がNo.1」といってはばからなかったニキがなぜあんなに人々から愛されたのか説明してくれと、本人から監督に(冗談まじりで)質問があったそうだが、「守る人(恋人)ができてしまった」と悩むほどのプロ根性を人々が認めていたからではないだろうか。
同情はしてほしくない、私はプロなのだ。
ニキ・ラウダ
ラッシュ/プライドと友情
監督 ロン・ハワード(2013年)
[オススメ度 ]