青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

死神博士とハンターチャンス ~大深温泉その2~

2005年08月17日 21時51分44秒 | 日常
(写真:大深温泉の風景)

アスピーテラインから砂利道を降りて、大深温泉の駐車場に到着。霧と森の中に包まれて、古びてはいるが普通に過ごしやすそうな宿に見えた。
車から降りて中に入ろうとすると、カギがかかってて中には誰もいない。あれれと思ったら、足元に立て札が出ていて「オンドル・浴室にいます」とある。
砂利道を歩いて宿の主人を呼びに行くと、風呂の掃除をしていたらしく長靴履きであった。これが昨日電話に出たオヤジか…見ると、天本英世といかりや長介を足して2で割って、柳生宏の衣を付けて揚げたような顔立ちである。

「スンマセン~、昨日電話して来たんですけど」
「あ、なんだ?けんがぐか?」
天本長介(仮名)は振り返るなりこう言うのである。んなわけねーだろ(笑)。こんな山ん中に見学に来る香具師なんかいるか(笑)。
「昨日電話したんですよ!今日泊まりたいって!」
「ん?とまり?とまりてだ?…んだばこっぢいご」とスタスタと小屋へ戻る。先ほど「過ごしやすそう」に見えたのは、管理人のこのオッサンが泊まる管理棟らしい。

「やどちょさかいて」
そう言ってオッサンは紙を突き出す。余計な事を一切言わないオッサンである。口下手なのかしら?東北人っぽいなあ。朴訥なのだろう。悪い人ではなさそうだが、電話ではぶっきらぼうに聞こえてしまうのだろう。宿帳を書き終わった我々を案内するオッサン。
「ここがお湯だ。んで、ここが炊事場だ。冷蔵庫ねから地下水で冷やすだ。で、ここがオンドルだ。場所によっぢゃあづいトコあるからきつけねばなんねえべ」
と一通り歩きながら説明する。

泊まる小屋は噴煙の上がる地獄地帯の最奥にあった。上こそプレハブで組んであるが、中は木材がムキ出しで、なおかつ地面には粗末なムシロを引いただけのだけの簡素なものである。ムシロをめくると下はそのまま地面であり、尻を乗せるとボコボコとした荒い地面の感触が伝わって来る。火山地帯の地熱で、座ると尻の下がジワリと熱い。この上に寝転がって、じっくりと体を暖める療養用の小屋がオンドル小屋なのである。
ちなみに中はこんな感じ。体育館の用具小屋のようでもあり、被災者の避難所のようでもあり…無数の虫の死骸が転がっている。灯りは裸電球が天井から釣り下がっているだけで、ともあれ「こんな場所に泊まるのか」と言う事に妙な感慨を覚えるのであるが(笑)。

説明が終わり、荷物を運び込む我々。小屋の前までは車が入れないので、運ぶ道具は荷物用に置かれているネコ車である。先客は青森から来たと言う40代の夫婦一組。他の客は昨日あらかた帰ってしまったらしい。もう今日は誰も来ないと思われるので、広く使わせてもらおう。
どんどん荷物を運び込んで、自分達の根城を作って行く。ダービーの席取りの並びで、自分らの場所を作るようなそんな感じだ。

ネコ車2往復で、今晩の根城が完成した。
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