青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

駅を調えること、地域を調えること

2020年10月14日 17時00分00秒 | 富山地方鉄道

(秋草揺れる@若栗駅)

宇奈月へ向けてすっくとレールが伸びる若栗の駅。トタンで覆われた古い駅舎に、秋の草花が揺れていました。地鉄の開業当時から残るようなレトロな駅舎巡りも、訪問の回を重ねるごとにそれなりの数が積みあがってきたように思うのですが、ここ若栗の駅は初訪問。集落の端、田園地帯との境目を電車が走り、その脇に慎ましやかな単式ホームがあるのはこの次の栃屋駅あたりと似た雰囲気。草に埋もれた古レールが残っているところを見ると、以前は交換駅だったのだろうか。

この駅の特筆すべきところは、駅舎の中のきれいさ。施設は古くとも、こざっぱりと掃除が行き届いていて、ベンチには新しい座布団が置かれている。そして本棚に並べられた「週刊少年ジャンプ」のきれいなこと!普通はこういう無人駅のこういう無人書架なんてどうやっても乱雑になっちゃうじゃないですか。さすがに巻数まで揃ってる訳じゃないけど、きっちりと隙間なく本棚に収まっていて、この駅を管理する方々(おそらく近所の方々なんだろうけど)の几帳面さが素晴らしいなあと思ってしまいましたよね。置かれてる掃除道具とか見ても、おそらく毎朝誰かがこの駅を清掃しているのではないかと思うのだが、若栗地区の皆様に愛されて管理されている駅の幸せそうな声が、聞こえてくるような気がします。

若栗の駅にやって来た17480形。なんか連結器がアッカンベーをしているな(笑)。80形はスカートなしの大井町線2編成と、スカートありの田園都市線2編成が在籍してますけど、個人的にはスカートありの方が締まって見えるような気がします。地鉄では初めての4扉車ですが、中2扉は閉め切って使っているので実質2扉車です。なかなか一般型の2扉車の出物もないですからね。

かつては渋谷と横浜を行き来していた都会っ子が、駅横の製材所の丸太を眺めながら無人の駅に停まる。東急時代は、乗る人のいない駅に停まることなどほぼなかったと思われるのだが、こと富山に来てからはそれも珍しくない日常の一つ。それでも、一日に100人も乗らないような駅をきれいに管理している人達がいます。地域の玄関口である駅を調えることは、地域を調える事。地域にとって大事な生活の足である地域交通が守られているのは、こういった人たちの小さな仕事の積み重ねであることも、改めて忘れてはならないのでしょう。

コメント
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