青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

海土有木夢想

2018年08月21日 23時04分03秒 | 小湊鐡道

(小湊標準型木造駅舎@海土有木駅)

ちょっと乾いたようなベンガラ色の寄棟の屋根に、Y字に組んだ柱が支える車寄せ。木造の板塀がくるりと周囲を囲んだコンパクトな駅舎。んで、だいたいその季節季節に応じた小湊鐡道のバスツアーのお誘い(赤とんぼツアー)の広告看板が掲げられているのが小湊スタイル。ローカル線の駅らしい慎ましやかな佇まいに魅了されるのですが、近年この駅舎他の鉄道構造物が国登録有形文化財に指定されました。この海土有木駅駅舎についても、市原市のHPで詳細に紹介されておりましてなかなか詳しい。こんな小さな駅ですが、開業時に建設を担ったのは鹿島組(現鹿島建設)なんだとか。へえー。

 

駅舎の中に入ると陽射しが遮られた分だけいくらか涼しくて、朝の風が吹き抜けて行く。ちょこっと斜めになった出札口にはいい感じのアールの付いた窓があって、行き先を告げると駅員さんが棚に並んだ硬券ホルダーからパチンパチンと切符を引き抜いて、ダッチングマシンで日付を打刻していたのでしょう。小湊の五井から上総牛久間では、つい最近までかなりの駅に駅員さんがいて、普通にそんな出札風景を見る事が出来ました。今は何だか立ち食い蕎麦屋のような味気ない券売機が置かれているだけ。だいぶ合理化が進みました。

 

かつては東京から郊外へ郊外へと広がる通勤需要を当て込んで、千葉急行電鉄がこの海土有木まで路線を延伸する計画があった事をご存知の方もいらっしゃるかもしれません。元はと言えば小湊鐡道が悲願の千葉乗り入れを夢見て免許を取得した路線ですが、小湊単体では資金が捻出できず、その夢は三セクの千葉急行電鉄に託されます。が、1995年に千葉中央~ちはら台までの開業を果たした後に大幅な債務超過によって千葉急行は解散。京成に引き継がれた後は延伸計画もほぼ立ち消えとなっています。

予定通りに京成千原線が海土有木まで乗り入れて来て、バブルがはじけなかったら、ひょっとしたら上総牛久辺りまでは電化されていたかもしれませんね。上総牛久発京成津田沼行きの電車とか…京成千葉線も線内急行運転とかあったかもしれない。それも全ては夢、今でも開発の手が伸びることなく、海土有木に静かに時が流れます。



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