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コンプライアンス:「飲酒運転」に対する懲戒処分

2006-09-12 | 飲酒運転特集
飲酒運転による交通事故が後を絶ちません。先日の福岡での大変痛ましい事故の発生以降も毎日のように「飲酒による交通事故(死亡事故がらみ)」が報道されており、これだけ悲しい出来事が起こってもまだ同じようなことが繰り返されている現状をみると、なんともやりきれない気持ちになってしまいます。

こんな中、いつも拝見させていただいているtoshi先生のブログ「ビジネス法務の部屋」にて、「飲酒運転と企業コンプライアンス」がテーマとして取り上げられていました。まさに、現在の企業では、この「飲酒運転」に対して企業がどのように取り組むべきかということが「労務管理」の面からも、「コンプライアンス」の面からも、はたまた「CSR」の面からも考えなければならない状況に置かれています。

さて、toshi先生のブログでは、実際の相談事例に絡んで
社員が業務時間外に飲酒運転をして、検問にひっかかり、酒気帯び(呼気検査で一定以上のアルコールが検出された場合)もしくは酒酔い運転(検知値に関係なく、その言動から明らかに酔っていると判断される場合)で刑事罰(罰金を含む)で処分された、ということが会社に発覚した場合、はたして会社としてその社員を懲戒処分に付することは可能か?

という問題提起がなされていました。このテーマ、労務管理においては正に「古くて新しい問題」であり、「労務における企業コンプライアンス」を考える上で大変重要なテーマとなります。

現在の報道を見ていると「飲酒運転は絶対悪でけしからん!、だから懲戒解雇も当然だ!」というような風評となる気がしてなりません。しかしながら、こと「企業における労務管理」では、このような「飲酒運転⇒懲戒解雇」と短絡的に結ぶことはかえって「企業としてのコンプライアンスを損なう」結果になりかねません。

そもそも、企業が従業員に対して懲戒処分を行うことが出来るのは「社内における規律を保ち、自社にとって不利益になるような行動をさせない」という大義名分があるためです。その中で最も重い懲戒解雇処分は「従業員として雇用を続けることが会社にとっての著しい不利益となるため、その原因となる従業員そのものを排除する」ということになります。

今回のテーマとなっている「飲酒運転」というのは、悲惨な事故に繋がることもあるため、「社会的には」決して許されるものではありません。しかし、「業務時間外の飲酒運転」という場合においては、その一事だけを持って「従業員として雇用を続けることが会社にとっての著しい不利益となる」とまで言い切ることは相当困難です。なぜなら、従業員の私生活上の行いは会社とは基本的に無関係であるからです。従業員であるからといって、常に会社に対して責任を負わなければならないというわけではないのです。したがって、少なくとも「業務時間外における一回の飲酒運転」だけで即懲戒解雇というのは、労働基準法が求める「客観的な合理性」を欠いてしまう結果となる恐れがあります。(もちろん業務時間外であっても、社用車利用中の飲酒運転ということになれば、話しは全く変わってきます。また、業務中の飲酒運転は「職務専念義務違反+服務規律違反となります。)

ちなみに、セクハラの場合には例え業務時間外であっても、一般には従業員間の問題となるため「業務に関連性のある出来事」として十分に懲戒処分を問うことができます。また、刑事事件等を起こして「逮捕」された場合は、私生活上の行為であったとしても、逮捕されている期間は現実的に出勤ができませんので、刑が確定した時点で「業務への著しい支障の発生による解雇」という筋道を立てることができます。

では、このような「飲酒運転」に関する企業対応としては具体的にはどのような形を取ることが望ましいのでしょうか?これは、業種や仕事内容によっても変わってくるのですが、まずは「飲酒運転をするような従業員には、仕事に関連して運転をさせない」ということは、「業務上における損害発生の予防」という観点からも客観的な合理性があると考えられます。したがって、「業務時間外における飲酒運転の対応」としては、まず
○自家用車による通勤の禁止
○社用車の運転禁止

という処分を行うことが考えられます。これについては、1回目は「数ヶ月~1年程度までの有期限」の処分にして、時期を置かずに2回目を行った場合には「無期限処分」にする等が考えられます。また、これにあわせて「会社の指定する教育の受講」もあわせて行うことも考えられます。(但し、教育受講費用を自己負担にした場合には減給処分に類する可能性もありますので、法令上の要件を満たす必要があります。)

さらに、営業やプロドライバーのような方で「社用車や自家用車を利用できないと仕事にならない」といった場合については、
○車を利用しなくても良い職種への配置転換

ということも考えられます。ただ、職種転換の際には「職種転換による降給が給与体系上認められるかどうか?」については検証が必要です。(一般論で言えば、職務給は職種転換の一事でも変更できますが、能力給は職種転換だけでは変更できません。)

会社としては、従業員の私生活には過度に干渉しないながらも、「従業員が業務の上で車両を使用する際のリスク」を出来るだけ減らすというのが『労務管理とコンプライアンスのバランス点』になってくるのではないかと私は考えます。会社にとって大切なことは「業務の上で起こりうるリスクを減らす」ということであり、「制裁処分を課すこと」ではありません。また、ブランドイメージを形作っていく「評判」も大切ですが、「当事者を含む全ての利害関係者に対して、自らの意見としてきちんと筋道を立てて説明できる」ことが何よりも大切です。

今回の飲酒運転問題のように、「労務管理」と「コンプライアンス」の間では、一見すると「双方が並び立たない」ように見える事柄というものはよくあります。しかし、企業においてコンプライアンスを考える対象はあくまでも「企業組織として行う活動(今回で言えば懲戒処分を課すこと)」です。 このような労務管理に関わる問題については、「労働基準法」その他の労働法令をしっかり遵守することが「労務管理におけるコンプライアンス」の第1歩であると私は考えます。

以上、大変長くなりましたが今日はここまで。
コメントにてご意見をお聞かせいただけば大変幸いです。

(06.09.26追記)
このエントリに関連するお話しを
飲酒運転特集
にまとめています。ぜひこちらもあわせてご覧ください。



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2 コメント

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Unknown (松本アツ)
2006-09-12 20:10:31
すばらしい解説ですネ
Re: Unknown (Swind)
2006-09-12 23:08:15
松本アツ様>

お褒め頂きましてありがとうございます

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