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谷瑞恵著『異人館画廊』シリーズあらすじネタバレ感想!図像術と焦れキュン

谷瑞恵著『異人館画廊』シリーズ1巻から6巻まであらすじ、ネタバレ感想。
図像術をベースにミステリーが展開されていて美術が好きな人にも楽しめる内容。
宗教知識がなくても読みやすいライトノベルだが、絵画関連の描写には厚みがある。
父と娘の確執もあれば焦れキュンもあり!


『異人館画廊』シリーズ

著者:谷瑞恵
発行:株式会社集英社
(集英社オレンジ文庫)



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『異人館画廊』あらすじ・ネタバレ感想


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『異人館画廊』シリーズ 

<異人館画廊・Cube>とは、主人公・此花千景の祖母・此花鈴子が営む画廊兼ティーサロンの名前だ。
キューブは「あらゆる手を使って」隠れた名作、珍しい美術品を収集するサークルの名前でもある。
亡くなった千景の祖父・此花統治郎が始めたサークル活動で、千景の幼馴染みの西之宮透磨が名付けた。

キューブは立方体の6面を表す。
自然の立方体は結晶、完成された造形で調和のシンボルとされる。
人工の立方体は、熟達した専門家を表す。

図像とは、例えば剣で刺された革袋の絵は、幼児虐殺の聖書の一場面を指す。
孔雀は「傲慢」、ロバは「怠惰」など。
図像術は意味のある物を絵に描き込んで、それを見た人の精神に大きな影響を及ぼす為、普通の人は見ることができない。
千景は特殊な能力があり、それらを見ることができる。

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『異人館画廊』シリーズ主な登場人物 

●此花 千景(このはな・ちかげ)
 図像術の研究者・専門家の18歳
 誘拐され7歳以前の記憶がない
 両親とは離婚後いっさい会っていない
  →父とは6巻で対面
 8歳で渡英、祖父の死をきっかけに帰国
 スキップを重ね既に大学は卒業済み

●西之宮透磨(にしのみや・とうま)
 老舗画廊『西之宮画廊』の経営者
 早くに父が亡くなり画廊の跡を継ぐ
 千景の祖父の世話になった恩がある
 かつて強烈な図像術を見たらしい
 キューブのメンバー
 千景とは幼馴染みで許嫁だが……

●此花 鈴子(このはな・すずこ)
 千景の父方の祖母
 <異人館画廊・Cube>を営んでいる
 絶品のお菓子を作るキューブのメンバー

●江東 瑠衣(えとう・るい)
 キューブのメンバーで普段は小劇団の役者
 ティーサロンでもバイト中
 年齢不詳

●槌島 彰(つちじま・あきら)
 有名占い師で元探偵のキューブメンバー
 アニマル系ド派手ファッション

●カゲロウ
 キューブのメンバー
 ただし姿は見せない→4巻で登場
 性別・年齢・経歴不明→4巻で男と判明
 ネット上で有名な美術品バイヤー
 盗難・紛失品のオークション情報等探る
 千景の誘拐事件の関係者→6巻

●阿刀 京一(あとう・きょういち)
 千景のまたいとこで高所恐怖症の警察官
 透磨と同じ中高一貫校に通う同級生だった
 KYすぎて透磨とは犬猿の仲

●此花統治郎(このはな・とうじろう)
 亡くなった千景の祖父で画家
 千景の行く末を心配し透磨に託す
 『西之宮画廊』経営立て直しで手を貸す
 キューブの活動を始めた

***** ***** *****
●此花伸郎(このはな・のぶろう)
 千景の父親だが千景を捨てた
 3巻から悪意しか見せていない
 積木の秘密結社の会員だったことも……

●矢神(やがみ)
 図像術に興味あり
 プラチナ・ミューズ経営
***** ***** *****
●積木和人(つみきかずと)
 ハッピーファクトリークラブ社長
 婚活クラブの裏で秘密結社の真似事

●犬飼(いぬかい)
 子供の千景を誘拐し焼身自殺

●今井貴子(いまいたかこ)
 積木の紹介でプラチナ・ミューズで働く
 千景の誘拐事件の当事者の1人

●真柴安吾(ましば・あんご)
 図像術を使って絵が描けると言う

●小原洋太(おはら・ようた)
 図像術研究者
 霊能者Bを名乗り廃墟に人を集める

***** ***** *****
●芦田宏武(あしだ・ひろむ)
 建築家

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『異人館画廊 盗まれた絵と謎を読む少女』 

●あらすじ
此花千景は、誘拐されたことで7歳以前の記憶がない。
両親とは離婚後に父方の祖父母に預けられたきり会っていない。
祖父母は千景を連れイギリスへ渡り、千景が大学に入る頃に帰国した。

千景は、祖父・統治郎の死をきっかけに日本に帰国する。
祖母・鈴子は<異人館画廊・Cube>と言う名の画廊兼ティーサロンを営んでいる。
祖父の絵に囲まれ、祖母が美味しいケーキを焼く柔らかい雰囲気の画廊だった。
だが、<異人館画廊・Cube>にはもう一つ別の顔があった。

「キューブ」は“あらゆる手を使って”隠れた名作を収集するサークルでもあった。
キューブのメンバーは祖母を含む6名。
祖父が亡くなった為、孫娘の千景がリーダーのポジションに置かれてしまう。

イギリスでスキップを重ね既に大学を卒業していた千景は、18歳ながら図像学(イコノグラフィー)の研究者でもあった。
図像を使った絵が盗難に遭い、それが日本にあることが判明し、専門知識がある千景はグレの図像術の絵探しに巻き込まれる。

●感想
図像学(イコノグラフィー)とか図像術は『異人館画廊 盗まれた絵と謎を読む少女』を読むまで知らなかった。
西洋画には特別な意味を持つ物や動物が描かれているのを目にすることはある。
剣に巻き付く蛇の絵などが図像だ。
この本では、恐ろしい図像を潜ませた絵を見た人は精神的に追い詰められ自殺したり、大罪を犯したりすると設定されている。
サブミナル効果みたいなものかな?

祖父・統治郎が始めたキューブの活動は、千景を含め6人で行っている。
普段はロリータファッションで<異人館画廊・Cube>のティーサロンでバイトをしている瑠衣は、劇団員としての演技力で潜入捜査をしたりする。
元探偵の有名占い師・彰は調査力を発揮。
カゲロウはネットで情報収集。

メンバーの1人西之宮透磨は子供の頃から千景をよく知っているが、千景には当時の記憶がない。
統治郎は、まっとうな人間関係を築けず孤独な千景の将来を心配し、亡くなる前に透磨に「嫁」にもらうようお願いしていた。
透磨は誘拐された千景を発見した人物でもあり、事件の秘密を知っている。
その上、若くして画廊の経営者になった透磨が画廊の経営立て直しをするのに統治郎が手を差し伸べた恩がある。

両親に愛されず友達もいない千景は、祖父に頼まれた許嫁・透磨を認めがたい。
愛されなかった人にありがちな「私は1人で大丈夫」発想にとらわれている。
虐待されたりした人もそうだけど、自分への好意を信用できず、難しい態度をとったり面倒くさいことを言って相手を試しちゃうんだよね。
千景もそんな女の子だ。

千景の両親は、千景のことで喧嘩が絶えず、父親は千景が絵を描くことを禁じた。
そして離婚してからは、どちらも千景とはいっさい会わないという何だか自分勝手な親たちという印象を受ける。
まあ、そうなったのも千景が頭が良すぎたことや図像を理解できたからだけど。
「うちの子は天才!」と喜ぶ親もいるが、千景の両親はむしろ「普通の子」が良かったんだろうね。

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『異人館画廊 贋作師とまぼろしの絵』 

●あらすじ
ブロンズィーノの展覧会に偽物が混ざっているという噂を耳にした千景は、高級画廊『プラチナ・ミューズ』がブロンズィーノを扱っているという話を聞き、確かめようと透磨とともに『プラチナ・ミューズ』のパーティーに紛れ込む。

ある収集家が「コレクションの中に良くない物がある」と言い残しこの世を去った。
妻が知人の古門志津香に相談したところ西之宮画廊を紹介される。
透磨は千景と一緒に絵を確認しに赴く。
千景はここでも贋作の存在に気づく。
贋作の真相に近づいていく千景の元に脅迫状が届きはじめ、ある日、千景は雑踏の中で腕を切られる。

●感想
古門志津香は透磨の元カノだった。
突然、透磨からもうつきあえなくなったと言われ別れたが、本人は全然納得してなかったのね。
志津香が千景に牙をむいたあたり、透磨の別れ方も悪いよって気がする。
「賢い女性は話せば分かる」なんて男の都合の良い思い込みだよ。

この巻でも、図像が描かれた本物の絵画は出てこないが、図像術を用いれば良くないことが起きると知っている人達は「本物を見た(という思い込み)」恐怖心から病む。
いろんな恨みつらみが死へ向かっていく。
素直な人間であることが大事だなぁって思うお話だったわ。

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『異人館画廊 幻想庭園と罠のある風景』 

●あらすじ
イギリス時代の恩師が図像術を用いた絵画のカタログ・レゾネ(所在目録)を編纂するにあたり千景に協力を求めてきた。

絵の持ち主とされるのは、西之宮画廊の顧客でもある波田野靖史。
西洋絵画とくにブリューゲルの収集家であるが大変人嫌いでネットもメールも使わない。
千景は透磨と共に瀬戸内海の離島・仁和島の波田野家を訪ねる。
波田野は自宅の庭園を千景に見せ、この庭園を完成させれば望みの絵を見せると言う。

波田野の息子・務は、悪事の限りを尽くしていると近所で有名だった。
千景は、庭園で絵を描く務と会い、なぜか彼に共鳴してしまう。

●感想
千景の父親で空間プロデューサーの此花伸郎は波田野家の庭園をデザインしていた。
『イカロスの墜落』風の庭園に欠けているものはイカロスだった。
イカロスの意味は、親の言うことを聞かない子供ってことなんだけど。
伸郎から千景へのメッセージともとれる。
うーん、随分長い年数をかけた大がかりなメッセージだわね(ーー;)

3巻では、殺人事件や危険ドラッグなども絡んで、それらは全て務の仕業だと思われているのだけど、実は……意外な展開だった。
桐真澄も此花統治郎の絵の偽物を売ろうとしたくせに鈴子にクレームをつけに来るようなとんでもない女として登場したが、最後は「ほほ~」と思う行動に出る。

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『異人館画廊 当世風結婚のすすめ』 

●あらすじ
土地の名士だった成瀬家の当主・成瀬美津から、代々伝わる見てはいけない危険な絵の鑑定を依頼された透磨は、千景を連れて成瀬家を訪れる。
しかし、肝心の絵は養女・雪江が持ち出したらしい。
その雪江が殺された。
持物から彼女が<異人館画廊・Cube>に来ていたことが判明する。
彼女はホガースの絵を画廊に置き去りにしていた。

雪江はハッピーファクトリークラブという会社の社長・積木和人と親しい関係だった為、透磨と千景、瑠衣はその会社が主催する婚活パーティーに潜入する。
そこで千景は、丸めがねの学生・花崗一郎(みかげいちろう)に出会う。

調査をすすめるうちに、雪江の親友・井原奈々代も行方不明になっていることが判明。
積木はヘルファイヤーという危険な団体も作っており……。

●感想
この巻では、子育てに悩んでいた千景の母の過去が語られている。
実は千景は、記憶がなくなる以前に母に連れられ成瀬家を訪れていた。
千景をまともにしたい母親は、霊感でもなんでも頼りたかったのね。

ついにカゲロウが登場!
花崗一郎(みかげいちろう)→カゲロウ。

1巻で頑なだった千景は、4巻では他のメンバーを頼りにするようになる。
透磨と千景はイイ感じになりつつあるわ♪

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『異人館画廊 失われた絵と学園の秘密』 

●あらすじ
美術で有名な鈴蘭学園の生徒が自殺をはかった後、学園では呪いの絵を見た生徒達がパニック状態に陥る事件が起こる。
透磨は、自殺未遂で入院中の生徒・由美の両親から、彼女が虹展に出そうと描いていた絵を探して欲しいと頼まれる。
その頃、鈴蘭学園の理事長・浜里も図像術の専門家である千景の意見を求めて異人館画廊にやってくる。

まだ18歳の千景は、理事長のはからいで学園に編入する。
由美は呪いの絵が描けると恐れられており、千景は由美の彼氏と噂される裕也、由美のライバルのカオリ、クラスメイトは誰も知らない由美の親友・有紗と接点を持つが、誰が本当のことを言っているのか分からない。
だが、プラチナ・ミューズ画廊から由美のスケッチブックを手に入れ、彼女がクラーナハのユディトとルクレティアを描こうとしていたことを知る。
真相に近づきすぎた千景は何者かにスタンガンで襲われ……。

●感想
キューブのメンバーと接するうちに、千景の人付き合いのハードルが下がったようだ。
潜入した学校で坂井有紗と友達になり連絡先の交換もしている。
千景のように、人生の目標がはっきりしている人間は友達などいなくても特に困りはしないと思う。
それでも、同じ時間を共有して同じ思い出を作れる友達は1人くらいはいた方が人生が豊かになる気がする。

今回は、カゲロウが千景に正体を明かす、と言っても本名は名乗っていない。
それでも、異人館画廊に食事にやって来るまで千景との距離が近くなってきた。

それにしてもクラーナハの絵は怖い。
作中の絵もなかなかキモい絵だった。

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『異人館画廊 透明な絵と堕天使の誘惑』 

●あらすじ
千景のもとに脅迫めいた手紙が届く。
それには、見た人を不幸にする絵を描き上げると書かれていた。
そして、有名な心霊スポットで絵にまつわる噂が流れ始める。
千景と透磨は噂の【切山荘】に調査に訪れ、倒れている女性を発見する。
女性は今井貴子と言い、画廊[プラチナ・ミューズ]で働いていた。
しかも、千景の誘拐事件の現場に居合わせていたことが判明。
千景は忘れていた記憶を思い出しそうで……。

●感想
透磨と千景の心が近づき、誘拐事件の真実が明らかになっていく。
カゲロウは、誘拐犯・犬飼の甥だった。
透磨が、図像術を施した絵を見ても平気な理由も判明する。
真柴安吾はバンクシーっぽいスタイルの画家だが、彼も千景の誘拐事件関係者。

これまでのお話の中で千景はキッチリと父親・伸郎と対面していなかったが、6巻で面と向かうことになる。
まあ、お互いに他人のふりをしてやりすごすのだけど。

透磨に、嫌だったかと問われ、全然ロマンチックじゃなかったと不満を口にする千景は、完全に透磨を受入れていると思う。
ちょっとニヤリとする2人の会話だったわ

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ご訪問ありがとうございました(人´∀`*)

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