東日本大震災によって 多くの美術館・博物館が 大きな被害を受けました。
被災してから休館を余儀なくされている美術館・博物館が たくさん あります。
また 日本では 震災のために、多くの展覧会が中止・延期・日程変更となりました。
このような災害のなかで 美術館・博物館に行くことは
被災地への応援、 支援につながると思います。
3月11日の地震のあと 今年の3月30日 日本を代表する彫刻家 世界的彫刻家 佐藤忠良さんが
天国に召されました。 98歳老衰でした。
宮城県出身。
佐藤さんは 彫刻以外にも作品が多く なかでも 絵本の挿絵のお仕事にも
熱心でした。
福音館書店の「おおきなかぶ」は 世界中で愛され
マレーシアでは 「英語版」を購入することができます。
ミャンマーなどアジアのこどもたちにも愛されています。
トルストイの「おおきなかぶ」は 多くの翻訳絵本がありますが
私は 佐藤さんの作品が 一番好きです。
小学校の教科書にも 採用されています。
以下は 松居直さんの佐藤さんへの追悼文の一部要約です。
「佐藤忠良先生が敗戦後の数年間、シベリアで抑留生活を体験されていたこと、
紙も鉛筆もない抑留生活の厳しい労働の間にも、ひたすら眼だけで、ロシアの農
民や自然をデッサンされていた話もお聴きしました。
またその彫刻作品は、人間の身体の写実的な造形にとどまらず
生命の働きと内なる精神の世界とを観る者に感じさせる、
すばらしい造形芸術です。
こうした芸術の力を子どもに伝えることのできる絵本を、私はどうしてもつくりたかったのです。」
「1981年にパリの国立ロダン美術館で個展をされるほどの世界的な彫刻家が、
子どものために渾身の力をこめて絵本を仕上げられるお姿に感動したあの日のこと
を、私は今も忘れることはできません。感謝です!」
こどもにこそ 本物の絵を。
しっかりとした絵を。
1997年の福音館書店の「母の友」に 佐藤さんの特集記事がありました。
当時 幼児を育てていた私は 感動とともに読んだのでした
以下 抜粋要約
「あの本をつくった当時は、子どもたちに見せるためにふわっと甘い感じで描
いた「童画」というのがはやっていたんです。
松居さんがね、ぼくに、本当にデッサン風な絵を描いてくれっておっしゃったんですね。
決しておもねらないで、
写実風に、それを子どもたちに見せたいからって。
僕は3回描き直した。
自分で気に入らなくて。
ほら、この、かぶを引いてるおじいさん。
これが押しているように見えるんだ、下手をすると。
だから、自分で鏡に映して、ポーズをしてみて、押した絵と、引っ張ってるのと、どこがどう違うのかって考えて。"」
佐藤さんの姿勢は 私が 我が子に絵本を選ぶときの おおきな指針になりました。
こどもにおもねた絵ではなく
こどもが声をあげて喜ぶから よいのではなくて、 感動は 心の本質に響くものだということ。
子どもの絵本にほんものの芸術を。
仙台市の宮城県美術館内に1990年、佐藤忠良記念館ができました。
そして この大震災で休館していた 佐藤さんの故郷 宮城県の宮城県美術館が 再開し
佐藤忠良さんの追悼展を開催しています。
大震災と美術館。
多くの作品が 復興の力になりますように お祈りします