吹田市の随意契約問題

2012-11-03 16:02:05 | 政 governing
維新の「価値観」とは

 吹田市庁舎に太陽光パネルを設置する工事に絡んで、市の不祥事が明るみに出た。一般競争入札で施工業者を選定しなければならないものを、特定の企業に工事を依頼する随意契約にし、しかも国には「競争入札だった」と虚偽の報告をしていたのである。さらに、市から随意契約を受けた企業が同市の井上哲也市長の後援企業だったから、話はややこしくなった。

 また、この井上市長は橋下徹大阪市長率いる大阪維新の会の顧問であることから、維新の法令順守に対する姿勢までもが問われることになったのである。

 この工事にかかる費用は約2250万円。吹田市では、国が省エネ対策のために普及させた「グリーンニューディール基金」を活用、太陽光パネルを市庁舎に設置した。ところが、市の規則では130万円以上の工事は本来、一般競争入札とすることが義務づけられている。吹田市が特定の企業に随意契約で工事を発注したのは、明らかに市のルールに違反している。

 井上市長は記者会見で「本来は入札すべきだった。私が業者を指定し、随意契約を結ばせた事実はない」と自身の関与を否定し、職員への処分も検討すると説明した。

 この問題は大阪市にも飛び火した。大阪維新の会顧問でもある吹田市長の責任を問われた橋下市長が「たいへん不適切な契約だ」と不快感を表明。同時に、井上市長には「維新の顧問をいったん引いてもらう」と、大阪維新の会の代表として厳しい姿勢を示した。

 井上市長が説明するように、かりに吹田市の職員が勝手にやったことだとしても、結果的に市長の道義的責任は免れない。だからこそ、橋下市長も顧問解任という処分を下したのである。

 また井上市長はこの案件を決裁しているが、かりに吹田市職員から「これは随意契約でした」と説明を受けていたとすれば、市長の過失はさらに重くなる。なぜなら、130万円以上の工事は競争入札でというルールを井上市長が知らないはずはないからである。もし随意契約を認識した上での決裁なら、井上市長は大阪維新の会の顧問を解任されるだけではなく、吹田市長としてケジメをつける必要が出てくるだろう。

 大阪維新の会は、既成政党とは違うというウリで有権者からの支持を得た。既成政党がつかってきた既得権益とは無縁の存在であると宣伝もした。だからこそ、大阪の多くの人々から大きな信頼を得たのだ。

 この件について、大阪維新の会の幹事長である松井一郎大阪府知事は「われわれと価値観は一致していないので辞めてもらう」と発言。井上市長から離党の申し出があり了承したことを明らかにした。

 予想外に早い展開だが、大阪維新の会にはこれですべて済んだとは考えてほしくない。今回の問題を吹田市のみに任せるのではなく、独自でも徹底的に調査して事実関係を明らかにすべきである。また、「価値観の一致」にこだわるのならば、そもそもなぜ価値観が違う人間を仲間に入れたのか。今後に向けてその反省が必要ではないだろうか。

 (近畿大学総合社会学部准教授)


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