重度の身体障害と知的障害が重複する重症心身障害児に特化して通所サービスを提供する乙訓地域初の事業所「からふる・ぶらんしゅ」(からふる)が今年2月、京都府向日市上植野町で開所した。医療の進歩で、人工呼吸器や経管栄養などの医療的ケアを受けて自宅で暮らす重症心身障害児は全国的に増えているが、在宅生活を支える体制は弱い。支援の現場を訪ねた。
■家とは違う体験、喜怒哀楽が上手に
「おはよー」。職員の呼び掛けに、車で約10分の自宅から訪れた杉井慶生ちゃん(2)が笑った。酸素吸入のチューブが喉に、胃へつながる経管栄養の管が鼻についている。体温を計測中、「ゴロゴロ」と音が大きくなる。職員が喉からたんを吸引した。
からふるに週2回通う慶生ちゃんは、産前に心室中隔欠損症と診断された。両親は「胎内死がほとんど。1年後の生存率は10%」と告げられた。手術を重ね、生後8カ月間、新生児集中治療室(NICU)で過ごした。
退院後、訪問リハビリを受け始めると、活動量が増えた。体の反り返りが和らぎ、寝返りもうてるように。リハビリの機会を増やそうと療育の場を探したが、候補は京田辺市や京都市北部の施設。車で長時間の送り迎えが必要で、その最中も頻繁にたん吸引しなければならず、断念した。
1年後の今年3月から、からふるへ通い始めた。母親の真衣さん(31)は「家以外の時間を持ち、同年代の子どもと関わりが生まれたら」と期待する。
からふるでは、職員たちが、首が据わりきっていない慶生ちゃんを慎重に抱きかかえ、毛布にくるんで揺らしたり、台車に乗せて動かしたり。刺激への反応を表情や心拍から見定める。慶生ちゃんがチューブを外すこともあり、気は抜けない。1時間かけて栄養剤を注入し、メニューが終わる。
「家とは違う体験がいろいろできる。喜怒哀楽が上手になってきた」と真衣さんは実感する。「通所日は朝から機嫌が良いみたい」
向日が丘支援学校の中学部に通う向日市寺戸町の男児(13)は週2回、放課後2時間を、からふるで過ごす。
仮死状態で生まれ、脳性まひで全介助がいる。2015年11月、突然、気道閉塞(へいそく)が生じた。一時は心配停止状態になり、翌年の1月にたん吸引を容易にするため気管切開した。
医療的ケアの内容が増え、利用していた放課後等デイサービスへの通所をやめた。母親(49)は「医療の度合いが大きくなると、安心して通うハードルが高くなる」と話す。
看護師が常駐するからふるがなければ、放課後は家で過ごすしかなかったという。「家だけでは、できることは限られる。社会への足がかりを積み重ねて成長してほしい」
■専門技術の担い手不足、環境も整わず
「からふる・ぶらんしゅ」代表の神谷真弓さん(50)は「重症心身障害児のケアには専門的な技術が必要で、担い手が足りない。幼稚園や保育園での受け入れは難しいのが現状。自宅の外で発達が保障される環境は整っていない」と語る。
厚生労働省は、重症心身障害児について、通所支援の不足から2020年度末までに、未就学児への「児童発達支援」と就学児が通う「放課後等デイサービス」の事業所を、基本的に市町村に1カ所以上確保することを目標にする。
からふるでは、理学療法士や看護師、児童指導員などの職員を置き、児童発達支援と放課後等デイサービスを展開。体を使った遊びや工作、外出を通じ能動的な活動を重視し、リハビリに取り組む。酸素吸入や胃ろうの管理、たん吸引など医療的ケアを行う。利用者は5月末で2~13歳の計11人。
【 2017年06月12日 12時45分 】
■家とは違う体験、喜怒哀楽が上手に
「おはよー」。職員の呼び掛けに、車で約10分の自宅から訪れた杉井慶生ちゃん(2)が笑った。酸素吸入のチューブが喉に、胃へつながる経管栄養の管が鼻についている。体温を計測中、「ゴロゴロ」と音が大きくなる。職員が喉からたんを吸引した。
からふるに週2回通う慶生ちゃんは、産前に心室中隔欠損症と診断された。両親は「胎内死がほとんど。1年後の生存率は10%」と告げられた。手術を重ね、生後8カ月間、新生児集中治療室(NICU)で過ごした。
退院後、訪問リハビリを受け始めると、活動量が増えた。体の反り返りが和らぎ、寝返りもうてるように。リハビリの機会を増やそうと療育の場を探したが、候補は京田辺市や京都市北部の施設。車で長時間の送り迎えが必要で、その最中も頻繁にたん吸引しなければならず、断念した。
1年後の今年3月から、からふるへ通い始めた。母親の真衣さん(31)は「家以外の時間を持ち、同年代の子どもと関わりが生まれたら」と期待する。
からふるでは、職員たちが、首が据わりきっていない慶生ちゃんを慎重に抱きかかえ、毛布にくるんで揺らしたり、台車に乗せて動かしたり。刺激への反応を表情や心拍から見定める。慶生ちゃんがチューブを外すこともあり、気は抜けない。1時間かけて栄養剤を注入し、メニューが終わる。
「家とは違う体験がいろいろできる。喜怒哀楽が上手になってきた」と真衣さんは実感する。「通所日は朝から機嫌が良いみたい」
向日が丘支援学校の中学部に通う向日市寺戸町の男児(13)は週2回、放課後2時間を、からふるで過ごす。
仮死状態で生まれ、脳性まひで全介助がいる。2015年11月、突然、気道閉塞(へいそく)が生じた。一時は心配停止状態になり、翌年の1月にたん吸引を容易にするため気管切開した。
医療的ケアの内容が増え、利用していた放課後等デイサービスへの通所をやめた。母親(49)は「医療の度合いが大きくなると、安心して通うハードルが高くなる」と話す。
看護師が常駐するからふるがなければ、放課後は家で過ごすしかなかったという。「家だけでは、できることは限られる。社会への足がかりを積み重ねて成長してほしい」
■専門技術の担い手不足、環境も整わず
「からふる・ぶらんしゅ」代表の神谷真弓さん(50)は「重症心身障害児のケアには専門的な技術が必要で、担い手が足りない。幼稚園や保育園での受け入れは難しいのが現状。自宅の外で発達が保障される環境は整っていない」と語る。
厚生労働省は、重症心身障害児について、通所支援の不足から2020年度末までに、未就学児への「児童発達支援」と就学児が通う「放課後等デイサービス」の事業所を、基本的に市町村に1カ所以上確保することを目標にする。
からふるでは、理学療法士や看護師、児童指導員などの職員を置き、児童発達支援と放課後等デイサービスを展開。体を使った遊びや工作、外出を通じ能動的な活動を重視し、リハビリに取り組む。酸素吸入や胃ろうの管理、たん吸引など医療的ケアを行う。利用者は5月末で2~13歳の計11人。
【 2017年06月12日 12時45分 】
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