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FAKE

2016-06-20 23:30:36 | 映画

驚きのサムラゴウチ・ザ・ラブストーリー!

満席で観れずに帰ること2回、3度目の正直で残4席に滑り込んで
ようやく森達也監督のドキュメンタリー「FAKE」を観てこれました。

<あらすじ>
新垣隆がゴーストライターをしていた事などが暴露され謝罪会見を行った佐村河内守のその後を「A」、「A2」の森達也が追ったドキュメンタリー。
会見でマスコミが取り上げなかった事実、メディア関係者からの取材依頼の様子などからカメラは佐村河内守の素顔に迫っていく。


森達也監督のドキュメンタリーはその背景で我々が受け取っているメディア報道と併せて初めて成り立つもので、
単体で鑑賞するような作品ではないと思う。
「A」や「A2」も当時の酷い報道内容を知っていて、
そのカウンターとして違う視点(別段の罪もない一般信者らか見た社会)もあると気付かせてくれるもので、
当時の社会情勢を知らない若い人が「A」を観て”オウムは特に悪い人々ではなかった”
などど勘違いしてしまうのは違うでしょうと思う。

さて、その上で、本作は昨今のゴーストライター報道に対する佐村河内守の視点であったり言い分が描かれる映画という事になる。
報道されなかった真実や出演交渉に訪れるTV局スタッフの姿勢から恒例のマスコミの問題点が明らかになっていく訳だが、
途中、佐村河内守が外国メディアから取材を受けるあたりからガラリと流れが変わっていく。
なんともボンヤリとした人物として描かれている本作の佐村河内守が語る言葉からは
我々を騙そうといった意図や嘘は感じられない。
”曲は新垣隆との共同作業だった”という証拠に外国人記者から当たり前のツッコミを入れられた時の佐村河内の動揺は何だったのか。
あれは「あっ、オレ、作曲してないかも」と気付いたシーンなのではないだろうか。
佐村河内守とは自己暗示をかけるように”自分は作曲している”と思い込んでいた人物だったのかもしれない。
その佐村河内守 自身の視点が持てればマスメディアや社会が必要以上にバッシングしている事を我々も気付けるのではないだろうか。

長年、この人のゴーストライターを続けた新垣さんは本当に大変だっただろうなぁという事もよくわかる。
新垣隆さんを悪役として描くのは笑いが起きてしまうため失敗しているし、
森達也監督とのやり取りでも新垣隆さんの人柄の良さしか感じられなかった。

”衝撃のラスト12分”は自分には何も衝撃を受けなかったが、ネタバレ禁止ということで伏字にします
以下、観終わった人だけ反転して読んでください

「マスコミは佐村河内守は演奏できないはずのに演奏している」!(演奏作曲でも可)という意味で”衝撃”と宣伝しているだろうが、
バンドをやろうとしていたという経歴から考えても演奏はできるはずなので特に驚きはない。
さらに、最後に「聞いてもらいました」と言うように、
注意していればわかるのだが、実際に簡単なメロディー以外を演奏している映像は一つもない。
録音していた曲を重ねて再生しているだけである。
「ほら、こうしたら本当に演奏しているように見えたでしょう」というのが森達也監督の言わんとすることなのだ。

衝撃のラストというよりむしろ、最後は失意の佐村河内守が夫婦愛で止まっていた1歩を踏み出す美しいシーンだと思う。
どこまでフェイク?という本作だが、夫婦愛の所はフェイクであってほしくないなぁ。
観た人とどこまでがフェイクか話をするのが楽しい映画だと思います。

森達也監督の映画は好きなのだが、佐村河内守のドキュメンタリーを撮ると聞いた時に
もう”ドキュメンタリーは嘘をつく”はもう十分じゃないのかなと思った。
FAKEを観終わったあともその印象は変わらない。
どうせなら、ゴーストライター、スタップ細胞、都知事や地方議員の不祥事など昔から延々と続く
”質の低い酷いマスコミ報道”に視聴率を与えてメディアにそういうものを作らせている
我々の人間心理をえぐるようなドキュメンタリーが観たいです。

最後にもう一つ大きな見どころを。
佐村河内宅のニャンコの名演技に注目を! 驚いた表情が最高です♡
あと観る時は豆乳を持っていく事をお勧めします。

最後に、もちろんこのブログ記事もFAKEかもしれません。



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2 コメント

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Unknown (FBOY)
2016-06-21 00:04:27
映画に登場する海外記者の記事を読むと、佐村河内氏の取材の前に、新垣氏にも取材してます。作曲についての新垣氏のコメントを要約すると「実際の作曲に指示書は役に立ちません。悲劇を音楽にするのに、悲劇の体験を語る必用はありません。作曲に必用なのは音楽の技法です。」この取材が映画のあのシーンに繋がっているのです。
Unknown (たら印)
2016-06-21 08:00:16
新垣隆さん、著書の「音楽という<真実>」でもそのように書かれていましたよね。
読んでいたので、「これがその指示書(?)かぁ。これで作曲と言われても・・・」と思いました。
記事があるという事なので海外記者の取材は本物なんですね。

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