さかなの眼

眼からうろこが落ちる「さかなの眼」です。

評価する側、される側

2005-02-18 | Weblog
真っ当な成果主義、「十匹の蟻」を書いたらいろんな意見を頂
戴した。「内側から見た富士通成果主義の崩壊」(日経BP企画
刊)。90年代初頭、成果主義を他企業に先駆けて推し進めてい
った富士通、一言で言えば社員の心まで不良債権化しだして経営
危機にまで落ち入ってしまった。取った次の策が個人から小チー
ムの目標設定の成果主義への転換だった。もう少し言えば当時心
が不良債権化した富士通の社員が自社の製品を買わなくなってし
まったことも大きくマイナスに働いた原因だと言う人もいた。人
を評価するのは一流企業の人事でさえこんなに難しい。成果主義
で失敗のスパイラルに落ち込んだ組織の話は今後も尽きる事はな
い。今日の話は人がつくりあげていく「もの」の評価も簡単には
できないと言う話である。評価する側に立ったら、自分も評価さ
れていると言う当たり前の論理認識から出発しなければならない。

国交省が「工事成績評定の統一」。こんな記事が先月の朝日新
聞の一面記事に載っていた。国の発注機関も沢山ある、そのほか
に地方自治体の発注工事も加えればいくら公共工事が減ったとい
っても全国毎年相当数ある。出来上がった工事を成果品として発
注者に納める。当然付いてくるのが工事の出来栄えから始まって
つくっていくプロセス、創意工夫、現場技術者の資質と対応など
を評価した工事成績である。一般の人が読んだらこんな事も出来
ていなかったのかとも簡単に思われて読み流されてしまう朝日新
聞の記事、実は中身は各発注者別の評価基準がまちまちだったの
を統一することに決めた記事なのである。確かにそう、同じ建設
会社が工事をしているのに発注者別の評価が異なるのはおかしな
話である。ましてや評価の全然ない、出来ない自治体だって沢山
ある。統一基準で評価なら目標が定めやすくなる。後は発注者が
すべての工事評価を何百万件のデータベース化に出来ていれば建
設会社の優勝劣敗をつけやすくなる仕組みになる事は確かだ。

 建築設計の評価の登竜門になるのが建築学会作品賞、この賞の
評価もいろいろ言われてきた。日経アーキテクチャー(2005 
1-10号)、「横浜ターミナルはなぜ建築学会賞を取れなかっ
たのか」で特集を組んでいる。この作品に対して受賞して当然の
意見もあれば、受賞しなくてホッとしたまで意見はもちろん分か
れている。どちらかと言えば建築としての話題性を考えると受賞
すると考えていた人の意見が多い。選考経過ではこの作品に対し
て作品のオリジナリティー、実現へのプロセスの甘さ、コストを
含めた技術的な押さえの甘さが指摘されている。それでもやはり
気になるのが発想の柔軟性、設計者の将来に対する期待性と言う
点ではかなり評価の高い作品になっていてもそれだけでは学会賞
を受賞できなかった事である。もっと言えば「学会賞らしさの建
築」からはみ出たから評価が落ち、選考から外れたのかも知れない。

 題名が「○○船」、敢えて具体的に題名を書かないけれども数
年年上だった先輩の卒業設計の事が思い出される。見事に大学の
教授たちの評価が分かれたのは当時有名な話だった。最高点をつ
けた先生もいればこれは建築でないと言って点数をつけられなか
った先生もいたと言う。どれが平面図で、立面図がどれなのか、
断面図も見ようによっては平面図に見える。全部フリーハンドの
卒業設計だった。結果は卒業設計で話題になっても賞をとる事は
出来なかったが、ほかの新聞社のデザイン賞では見事評価が違っ
て最高賞をとっていた。先輩は、今では新聞、建築雑誌でたまに
見かける有名な大学教授にまでなっている。確かに世の中全般の
流れは評価、評価の掛け声とともに流れている。建設工事成績の
統一評定もますます煮詰められていく。評価基準が整備されるの
は良いこと、それでも問題なのはきちんとした評価を評価する側
が出来ているかどうかにかかっている。工事はプロセスが大事、
プロセスは人を評価することに集約されていく。人を評価する人
は難しい。ましてや公共工事の発注者は間接的な顧客、陰に隠れ
た真の顧客は国民であるから一層難しい。遊んでいた「十匹の蟻」、
とんでもない餌場を見つけてくる時もある。「評価する側、される側」、
尽きる事のないテーマである。


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
感性 (白い雪)
2005-02-18 15:01:07
 マニュアルや知識以外で判定できる人間性と感性を培いたいものである・・・

 これからは、「感性の時代」=間違いない!
返信する
量ではかる (さかなの眼)
2005-02-18 15:21:10
どうも評価しにくいものを評価する方向へと動き出している流れだと最近思います。感覚、感性のレベルを評価で数値化することに無理がある。まったく逆の方向、建設工事の評価は測れるもの、数値化できるものの評価で良いんじゃないかとも言う気分にも最近なってきた。
返信する
アメリカ流ビジネスモデル (五代裕作)
2005-02-26 14:41:31
 アメリカのビジネスモデルは,世界で最も優れたシステムを有している。その効率的で合理的なビジネスモデルはどんな分野にだって活かされる。



 例えばボート競技である。



 ある時,アメリカチームとイギリスチームとの間でボートレースが行われた。結果はイギリスチームが1マイル差で勝利した。



 アメリカチームはすぐに敗因を分析するため,情報の収集に取りかかった。最先端のコンピュータを駆使してデータを集めた結果,イギリスチームは漕ぎ手が八人,操舵手が一人だったのに対し,アメリカチームは漕ぎ手が一人,操舵手が八人だったことがわかり,これこそが敗戦の一要因の可能性があると指摘されるに至った。

 

 早速,さらなる研究チームが組まれ,何百万ドルという研究費用が注ぎこまれた。その成果として,アメリカチームは漕ぎ手が少ないために推進力がイギリスチームに比べて弱く(約八分の一という驚くべき数字が弾き出された!),それが敗因であるとの結論が導き出された。



 アメリカ人は組織を一新する勇気と決断力を持っている。アメリカチームは早速組織の大幅な改革を断行した。そして,以下のような新体制で次回のレースに望むことになった。



 ステアリングマネージャー・三名

 エリアステアリングマネージャー・二名

 サブ・ステアリングマネージャー・三名

 ジェネラル・マネージャー(GM)・一名

 新任の漕ぎ手・一名(なお前レースと異なり,その働きに応じて報酬額が決まるインセンテ

ィブ制を導入)



 こうして挑んだレースだったが,今度は2マイル差をつけられてイギリスチームに完敗した。アメリカチームは再び研究チームを発足させた。



 ちなみアメリカチームはフレックス制を導入していたため,レース当日は六人しか集まって

いなかったのである。
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