ステージおきたま

無農薬百姓33年
舞台作り続けて22年
がむしゃら走り6年
コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

お疲れ!ハーベスター

2015-10-25 09:37:19 | 農業

 現役引退のハーベスター、リサイクル屋さんの手に渡った。こき胴の爪が折れ、ふるい網に穴が開き、もう満身創痍の状態で、それでも10年以上我が家で、ってことは通算30年以上!脱穀作業で意地を見せた。三菱農機製造のハーベスター、ついに使命を終えた。クレーンでトラックの荷台につり上げられて行く機械、あっ、しまった!また写真撮りそこなったよ。せっかく最後の姿だったのに。

 正直言って、随分苦労させられた機械だった。脱穀部分が不完全なので、こき残しが多く、こき終わった稲束を再度機械に流すなんて非能率的なことを何度もやった。ふるい部分に穴が開いている所為で、胴体部分から下に落ちる籾の量も馬鹿にならない。内部の掃除もしにくい構造で、品種がどうしても混ざってしまう、それもかなりの量で。さらには稲藁の結束でも、ぶきっちょで融通が利かず、すぐに絡まって、からみついた麻ひもを取り除くの一手間だった。無駄、無駄、無駄を強いる機械だった。

 こんなハーベスターだったけど、我が家はじめ数軒の米作りを10年もの間支えてくれた。やはり、感謝だな。頑固なディーゼルエンジンは健在なので、取り外されて再利用されるといいがなぁ、胴体部分は、これはもうスクラップ以外ないだろう、などと、感慨にふけっていたら、リサイクル屋さんの若者に声を掛けられた。

 覚えてますか?俺、置農出身です。おっ?!そ、そ、そうか。申し訳ない、思い出せない。聞けば、隣の組で中途退学したって話し、名前とクラスを聞いて、どうやらうろ覚えながら、記憶がよみがえって来た。たしか、高校生活からはみ出す形で止めていった生徒だ。向こう意気の強い、はじけた生徒だった。随分変わった!穏やかで、生き生きとした表情が懐かしげに語りかけてくる。

 良かった!あれから10年近く、紆余曲折はあったろうが、今は立派に働いている。てきぱきとした身ごなしに自信が溢れている。中退という躓きを乗り越えてしっかりと大人の仲間入りをしてくれている。中退した、あるいは中退させた生徒の行く末には、どこか後ろめたさをともなって気にしてきた。社会も大切な教育機関だとは信じつつも、まっとうな暮らしから滑り落ちていやしないか、気がかりだった。

 逞しく、爽やかな笑顔で現れたK君、良かった!さらに嬉しいのは、辞めた学校を自分の出身校と言ってくれたことだ。彼の中にいろいろな辛い思い出や口惜しい思いとともに、懐かしく大切な青春の一コマとして、中退した学校がある、そのことにとても暖かいものを感じた。

 そんな彼の会社にハーベターの廃棄を頼んだことが、それ以上ない素晴らしい選択だったように感じて、その幸せ感は終日続いた。

コメント
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