こちら探偵社
T.I.U.総合探偵社(第30110220号)
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ギリギリ探偵白書・191
ギリギリ探偵白書
「寸借詐欺・第3話」
調査を始めるにあたり、まずは依頼者が騙されたという
大手探偵社に調査料金の返還を求めた。
そして、しぶしぶ3分の2を返還させる段取りが出来た。
依頼者さん 「やっぱり全額ですよね」
阿部 「いや、それで承諾した方がいいでしょう」
依頼者さん 「なぜですか!!返すって事は認めたって事ですよね」
阿部 「とにかく、指示に従って下さい」
依頼者さん 「・・・わかりましたよ」
多分、問題の探偵社は、認めたわけではない。
トラブルを起こされたくないだけだ。
彼らからすれば、他のカモを探せばいいだけだ。
カモはすぐに見つかる。
何と言っても、数億円を投資して広告を出しているのだから・・・。
その連絡を受け、私は田中と特務部の○下を会議室に呼んだ。
阿部 「田中はわかってるな?」
田中 「駄菓子の事ですよね」
阿部 「違うよ。昨日の依頼の事だよ!!」
田中 「あっ、依頼ですね。わかりますよ」
○下 「阿部さん、まさか調査指揮がこのデブってことは・・・」
阿部 「ないよ。指揮は俺がやる」
○下 「ふぅ~、それなら安心だ。で?出会い系トラブルですよね」
阿部 「ああ、多分、他にも被害者がいるはずだろ?」
○下 「・・・ですね。この手は、多人数から金を引っ張りますから」
出会い系から、詐欺を行う者の場合、多人数の被害者がいることは
この調査では常識である。
たいていの被害者は、その女性から身元を証明する住民票などを渡され
突拍子もない理由で、お金が必要だと泣きつかれる。
騙される男側には下心もあるだろう。
男はそれで信用し、お金を貸してしまう。
はじめは小額だ。
しかも、そのお金はキッチリ返す。
そして、女性が借りるお金は段々と上がってくる。
最後に大きく借りてドロンである。
※ドロン・・・「逃げてしまう事。」
これを「寸借詐欺」という。
被害金額が少なかったり、事件性という性質より民事事件的要素が
強いため、ほとんど、警察では取り扱わない。
こうした詐欺の被害は非常に多いのだ。
加害者側となる女性がプロの詐欺師の場合は
ドロンの後、時折、電話をかけるようだ。
その電話で「返す事ができないから・・・もう少し待って欲しい」
と言うのだ。
法律でいえば、それらの問題はただの金銭消費契約。
つまりは、借金。
個人間なら10年経てば、時効である。
詐欺師は、実は頭が良い。
法律もキッチリ悪用しているのだ。
我々は、まず、その女性の名前をインターネットで調べてみた。
すると、ある掲示板に辿りついた。
その掲示板には「私は○○万円、やられました!!」という書き込みが
並んでいる。
阿部 「これだな・・・。え~と、総額は7000万って感じかな?」
田中 「すごいっすね。うまい棒なら10円だから・・・え~と・・」
○下 「7000万円なら、700万本だろ。ゼロを引くだけだろ」
田中 「・・・・食いきれねぇ~!!」
○下 「大丈夫か?」
阿部 「田中、お前はこの書き込みの奴らと接触して女の情報を集めろ」
○下 「じゃあ、自分は、女が依頼者さんに渡した住民票から調べます」
阿部 「ああ、まず、そこには住んでいないだろうから、マンションの」
○下 「契約者と持ち主ですよね」
阿部 「ああ、○下、気をつけてな」
○下 「はい、大丈夫です」
調査が始まり、追跡していくうちに、この女性が結婚していて
普通に暮らしている事がわかった。
田中 「代表、写真を入手しました。さっき、依頼者さんに
確認取ったら、本人に間違いないそうです」
○下 「こっちは、引越し先の住所から本人を確認してきました
・・・5歳の子供と3歳の子供がいますね・・・」
阿部 「・・・子持ちなの?しかも、主婦?」
田中 「はい・・・。参りましたね・・・」
○下 「・・・確かに、参りましたね・・・」
阿部 「参ったなぁ・・・・。しかし、罪は罪だからな」
その後、話し合いを行う事になった。
主婦詐欺師が依頼者さんに金額の全てを返済する事で終結する事になった。
(何とも呆気ない結末であった・・・)
完
メールマガジン「ギリギリ探偵白書」の復刻版です。
ギリギリ探偵白書は、過去に行った調査を本人了承のもと掲載しています。
尚、調査時期や調査対象者・ご依頼者様の個人情報は本人様の請求以外は開示いたしません。
また、同作品に登場する人物名は全て仮名です。
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