映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「ロズウェルなんか知らない」 篠田節子 

2008年07月27日 | 本(その他)

「ロズウェルなんか知らない」 篠田節子 講談社文庫

ロズウェル。
さて、聞いたことがあるような気がするけれど、なんだっけ?と、まず思うわけです。こんな私のために、巻末にちゃんと解説がありました。
ロズウェルは、ニューメキシコ州南東部にある小都市で、1947年に、UFOが墜落したとされる「ロズウェル事件」が起きた場所。
そのUFOは、ひそかに米軍に回収されたとか、宇宙人の解剖が行われたとか、いろいろなウワサが流れたという事件。

さて、この本は、そんなUFOがらみのストーリー。
でも、SFではありません。
なんと、温泉もなく名所もなく、観光客の途絶えた過疎の町、駒木野。
その「町おこし」がテーマ。
駒木野は、2030年には人口0になるという予想が出ている、どうにもならない過疎の町。
青年クラブ(といっても、メンバーはすでに、30代、40代)では、なんとか町の活気を取り戻そうと知恵を絞る。
ひょんなことから、町にUFOが出現するという評判がたち、
彼らは、これを逆手にとって、町を「日本の四次元地帯」として売り出すことを決意。ネットを駆使し、町の年寄りたちを説き伏せて、彼らの悪戦苦闘が始まる。

すっごく面白い!。これが偽らざる感想です。
しかし、時々あるんですよ。
篠田作品で、途中は、すごく面白くて、興奮してしまうほどなのに、
最後まで読んだらなんだかあっけなくて、あれ?、というのが。
この本も、そうでなければいいなあ・・・と、ちょっと心配になりながら・・・
でも、大丈夫でした。なかなか感動ものです。

青年団のメンバーはいたって現実的で、UFOなんて、信じていないのです。
まさに、ロズウェルなんて知らない。
しかし、そういうことには詳しく、アイデア豊富な変人、鏑木の思いつくまま、
民宿の部屋に、山に、廃墟の遊園地に、
いろいろな仕掛けを施して行く。
UFOも、座敷わらしも、一緒くた。
四次元地帯として、ひとくくり。
読んでいるこちらも、やらせ、作り物と、当然わかってはいるのですが、
たとえば、民宿の開かずの間に時期はずれの古い雛人形が飾ってあって、薄明かりに照らされている・・・とか、
閉鎖された遊園地にあった地下の「お化け屋敷」に作られた、宇宙人解剖のジオラマとか・・・、
思わずぞっとしてしまいます。
ここをめがけてくる人たちも、かなりのオタクというか、なにやら怪しげな人たちではあるのですが、
とにかく話題になり、宿泊客も急増。
やる気のなかった、民宿経営の老人たちも、急に意欲を見せ始め、
おまけに、地元で細々と作っていた畜産品も、人気が出てくる。
ところが、さすがにいんちきだ、やらせだ、という批判も出てきて、窮地に立たされる彼ら。
結局、これは最初から、遊びと割り切っても、楽しめるわけですね。
UFOの里。結構じゃないですか。
そういうイベント、そういう夢。
ディズニーランドとそう変わらない。

結局これはプロジェクトX並みの、町おこしの感動の記録なのでした。
そして、すべてやらせと割り切っているのに、
それでも説明のつかない何かが残るというオチも、楽しい。
こんなところが本当にあったら行きたいなあ
・・・と思ったら、現にそういう村おこしに取り組んでいるところはあるそうです。
アイデアの勝負ですねえ。
どこも、過疎化に苦しんでいるということでもありますが。

満足度★★★★★



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