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ゲド戦記 Ⅲ さいはての島へ

2017年04月17日 | 本(SF・ファンタジー)
老と若。生と死。

さいはての島へ―ゲド戦記〈3〉 (岩波少年文庫)
ゲイル・ギャラティ,Ursula K. Le Guin,清水 真砂子
岩波書店


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ゲドのもとに、ある国の王子が知らせをもってきた。
魔法の力が衰え、人々は無気力になり、死の訪れを待っているようだという。
いったい何者のしわざか。
ゲドと王子は敵を求めて旅立つが、その正体はわからない。
ゲドは覚悟を決める。

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本作のテーマ、ズバリ「老―若」、そして「生―死」。


ゲドは魔法使いの中の頂点である大賢人となっています。
そこへ王子アレンが世界の変容を知らせにやって来る。
二人はその原因を探るため長い旅に出ます。


ゲドが「老」、アレンが「若」ということですね。
ゲドは言います。
これは私の旅ではない、あなたの旅だ。
ゲドは何か「する」ことをアレンに委ねているのです。
自分はそれに付き従い見守り、補助する立場だと。


作中では「ある」人生と、「する」人生ということに触れられています。
少し長くなりますが、引用。

「よくよく考えるんだぞ、アレン、大きな選択を迫られた時には。
まだ、若かった頃、わしは、ある人生とする人生のどちらかを選ばなくてはならなくなった。
わしはマスがハエに飛びつくように、ぱっと後者に飛びついた。
だが、わしらは何をしても、その行為のいずれからも自由にはなりえないし、
その行為の結果からも自由にはなりえないものだ。
一つの行為がつぎの行為を生み、それが、またつぎを生む。
そうなると、わしらは、ごくたまにしか今みたいな時間が持てなくなる。
一つの行動と次の行動の間のすきまのような、
することをやめて、ただ、あるという、それだけでいられる時間、
あるいは、自分とは結局のところ、何者なのだろうと考える時間をね。」



口数少ないゲドが、旅の合間にポツリと話す言葉には深みがありますねえ・・・。
「する」ことが若者、「ある」ことが老人。
だけれども、若くても時にはじっとして、自分の心と向き合うことも必要なのだ、と。


そして彼らはついにはこの世の果て、
「生と死」のはざまの地まで行くことになりますが・・・。
ここで、ゲドは魔法の力を使い果たしてしまうのです。


で、実は私はゲドのその後を描く、このあとの巻「帰還」のほうが面白く感じたのですが、
それはまた、続くということで・・・。


「ゲド戦記 Ⅲ さいはての島へ」 ル=グウィン 岩波書店
満足度★★★.5



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