映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ナチュラルウーマン

2018年03月20日 | 映画(な行)

ものでは証明できない、思い。

 

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この度のアカデミー賞、外国語映画賞受賞作品です。



ウェイトレスをしながらナイトクラブのシンガーとして歌う
トランスジェンダーのマリーナ(ダニエラ・ベガ)。
年の離れた恋人オルランド(フランシスコ・レジェス)と暮らしています。
2人で誕生日を祝ったその夜、
オルランドは自宅のベッドで意識が薄れ、亡くなってしまいます。
さて、そこからが問題。
オルランドの元妻や息子が現れ、家をあけ渡すように言われてしまいます。
葬儀に出ることも拒否されます。
マリーナとオルランドでかわいがっていた犬まで取り上げられてしまいます。
その上、マリーナにオルランドの殺害容疑がかかり、警察で取り調べられたりもします。



トランスジェンダーに対しての根深い偏見・差別・・・。
それは、これまでも多くの映画で取り上げられていますが、
こんなふうに人としての権利までもを奪い去られるほどの理不尽な有様には、
憤りを感じてやみません。
特にこのマリーナの強く美しいまなざしに、
私達は同調こそすれ、嫌悪感というのはあまりありませんね。



マリーナが普通の女性だったとしたら、なんの問題もないはず。
きちんと結婚していれば、当然家にはそのまま住むことができるでしょうし、
葬儀の出席を拒否されるなどということもありえない。
オルランドはその日、誕生日のプレゼントとしてマリーナに「イグアスの滝」への旅行券を渡すつもりでした。
けれど歳のせいなのか、どこかへしまい忘れて見つからなくなってしまったのです。
そして、マリーナはオルランドの遺品の中からロッカーの鍵を見つけます。
オルランドが行っていたサウナのロッカーの鍵。
マリーナは、そのロッカーに旅行券が置き忘れられているのではないかと思い、
サウナに向かいます。
一見は女性なので、女性用のロッカールームからこっそり男性用の方へ忍び込んでいく。
いや、それで問題はないはずなのですが、妙にドキドキしてしまいました。
誰かが気付いて騒ぎ始めるのではないかと・・・。
そしてその挙げ句、ロッカーの中は・・・!



まさかの展開なのですが、けれどマリーナは思う。
オルランドの思いはそんな「旅行券」で証明されるようなものではない。
間違いなく自分のなかに彼の思いは息づいている。
そのように思い定めてはじめて勇気が持てる、ということなのでしょう。
ステキな展開でした。



マリーナ役のダニエラ・ベガは自身もトランスジェンダーの歌手だそうで、
なるほどそれも納得。
素晴らしい歌声で、魅せられました!

<シアターキノにて>
2017年/チリ・アメリカ・ドイツ・スペイン/104分
監督:セバスチャン・レリオ
出演:ダニエラ・ベガ、フランシスコ・レジェス、ルイス・ニエッコ、アリン・クーペンヘイム、ニコラス・サベドラ

LGBTを考える度★★★★★
理不尽度★★★★★
満足度★★★★★



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