映画と本の『たんぽぽ館』

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オリエント急行殺人事件

2017年12月26日 | 映画(あ行)
犯人を知ってしまっているのが、返す返すも残念



* * * * * * * * * *

トルコ発フランス行き寝台列車オリエント急行。
その列車内で名探偵エルキュール・ポアロの活躍する本作は、
どうしてか私達の憧れを掻き立てます。
その犯人像をわかってはいても、やはり見ずにはいられません。
俳優陣も豪華ですしね―。



名探偵として名を馳せるポアロ(ケネス・ブラナー)が乗り込んだオリエント急行。
その夜、実業家ラチェット(ジョニー・デップ)が刺殺されます。
列車は雪崩に遭い、ストップ。
警察もこられない中で、ポアロによる乗客への聞き取り聴取と推理が始まります。
教授、執事、伯爵、伯爵夫人、秘書、家庭教師、
宣教師、未亡人、セールスマン、メイド、医者、公爵夫人、そして車掌。
この13人の中に犯人はいる・・・・。



何と言っても雪の中を走るこの列車がいいですよねえ。
この映像が素晴らしい。
広大な大自然の中を走り抜ける列車。
それだけで、特に鉄道オタクでなくても、ロマンを感じます。



運行中の列車は、まさしく他の誰も入り込めない密室で、
絶対に中にいる誰かが犯人というわけで、
ミステリの舞台にはもってこいです。
この1900年代初期という時代も、セピア色めいていて、またステキ。



本作の冒頭は、ポアロがエルサレムである事件を解決するのですが、
この舞台が、なんとも今日の話題とぴったり符合しているのが奇跡的!
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、
いずれもの聖地であるがゆえに、人々のいざこざが約束された地でもある。
それを踏まえてのポアロの登場。
トランプ大統領は、これを見たでしょうか・・・?


さて、ポアロの人物像はどうにも滑稽で、
あまり好きとはいい難いのですけれど、
この度のケネス・ブラナーは、ずいぶんマシなのじゃないでしょうか。
あのヒゲさえなければ・・・といいたいけれど、
それがなければポアロでなくなってしまうので仕方ない。
でも、まさかのアクションシーンもチョッピリあって、斬新です。
あろうことか、断崖の上の鉄橋上で止まってしまった列車の、
その屋根を歩くシーンまであって、これは凄い! 
(もっとも、もう片側は、狭いですが歩くこともできる雪原ですけれど。)



ラスト、13人が横並びになった謎解きのシーンは、「最後の晩餐」をイメージしていますね。
真相に迫るいいシーンです。
でもやっぱり、ミステリで初めから犯人を知ってしまっているというのは
面白さも半減と言うかそれ以下だわ・・・やっぱり。
仕方のないことながら、残念でした・・・。
いっそ、ぜんぜん違う結末を見いだせないものでしょうか・・・?
宇宙人が犯人なんてのは論外ですが。


1974年のシドニー・ルメット版も見たい気持ちもありますが、
やっぱり犯人がわかっていれば、退屈さを感じてしまうかもしれません・・・。


<シネマフロンティアにて>
「オリエント急行殺人事件」
2017年/アメリカ/114分
監督:ケネス・ブラナー
出演:ケネス・ブラナー、ジョニー・デップ、ミシェル・ファイファー、ジュディ・デンチ、ペネロペ・クルス、デイジー・リドリー、ウィレム・デフォー
舞台背景★★★★★
ミステリ度★★☆☆☆
満足度★★★.5


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
犯人像 (iina)
2018-02-14 09:32:14
> 犯人像をわかってはいても、やはり見ずにはいられません。
原作とおりということは、iinaが前に映画化されたときに見た犯人たちと同じですね。1974年作。

前は、老いたイングリッドバーグマンやショーンコネリーも出ていました。
https://www.cinematoday.jp/news/N0077794

Unknown (たんぽぽ)
2018-02-14 20:02:16
iinaさま
本作は、犯人を変えてしまうと「オリエント急行殺人事件」ではなくなってしまうのだと思います。
ミステリの常識を裏切る・・・というところがキモですね。1974年版も、いつか見ようと思いながらまだ実現していません。

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