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大統領の執事の涙

2014年02月19日 | 映画(た行)
黒人からみたアメリカの歴史



* * * * * * * * * *

7人の米国大統領に仕えた黒人執事の実話を元にしています。



子供の頃ほとんど奴隷と変わらない状況で
南部の綿花畑で働いていたセシル・ゲインズは
ワシントンへ出てホテルのボーイとなり、
やがてホワイトハウスの執事の職を得ます。
アメリカのキューバ危機やケネディ暗殺、
ベトナム戦争等大きな歴史のうねりの中心地に勤務しながらも、
彼自身は何も語らず、30年間ひたすら職務に忠実に生きてきた。
それだけならば、単にアメリカ史のおさらいですが、
本作のテーマはアメリカにおける人種差別のこと。
そして父と息子の相克。



ホワイトハウスの執事といえば、つまりは白人に仕えること。
彼はこの仕事に誇りを感じていますが、彼の長男ルイスはそのことに反発し、
キング牧師を師と仰ぐ公民権運動に身を投じていきます。
父と息子は互いのことを恥じ、憎み、絶縁状態になっていくのですが・・・。


キング牧師は父を恥じているルイスにこんなふうに言っていましたね。

「そういう仕事をすることで、
白人が黒人に向けるイメージが変わっていくのだ。
お父さんもまた戦士なのだよ」と。

セシルもまた、公民権運動をどうでもいいと思っているわけではないのです。
何よりも彼の父親の死を目撃しているわけですから・・・。
白人と同じ仕事をしても黒人の給料が低いこと、
そして昇進もしないことを上司に抗議もします。
実際の社会の中で誠心誠意自らの役割を果たしていく事こそが
実は真の武器で、セシルもまたりっぱな戦士。
大統領の執事でなくても、多くの黒人たちが
こんな風に人種差別と闘いぬいてきたのではないかと思います。



それにしても、公民権運動に対抗する白人たちのなんとも浅ましく醜いこと・・・。
黒人がデモをして、さんざん白人に痛めつけられて、
挙句に警察に捕まるなどという理不尽が
当たり前にまかり通っていたわけですねえ・・・。
こんな体験をしてきた人々にとって、
オバマ大統領の就任は、やはり夢のように晴れがましい出来事だったことでしょう。


アメリカの近代史と黒人の歴史。
そしてこのうねりと共にある家族の歴史。
これらが一体となって、しっかりした見応えと感動を生み出しています。



歴代の大統領を誰が演じているのか、
それがまたお楽しみでもあります。
アイゼンハワー大統領にロビン・ウィリアムズ、
ケネディ大統領にはジェームズ・マースデン、

ジョンソン大統領にリーブ・シュレイバー
ニクソン大統領にジョン・キューザック、
レーガン大統領にアラン・リックマン、
・・・と、豪華な布陣。
それからはじめの方しか出てきませんが、
あのいかれた綿花の農場主がなんとアレックス・ペティファーなんですよね! 
なんて贅沢な配役。


それから原題は“The Butler”で、単に「執事」ですが、
邦題は「大統領の執事」のところまでで良かったのではないかと思います。
涙・・・までは余計でした。

2013年/アメリカ/132分
監督:リー・ダニエルズ
出演:フォレスト・ウィテカー、オプラ・ウィンフリー、デビッド・オイロウォ、マライア・キャリー

アメリカの歴史発掘度★★★★☆
満足度★★★★★

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