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「科学する心」池澤夏樹

2020年03月16日 | 本(エッセイ)

文系でも科学は面白い

 

 

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大学で物理学科に籍を置いたこともある著者は、
これまでも折に触れ、自らの作品に科学的題材を織り込んできた。
いわば「科学する心」とでも呼ぶべきものを持ち続けた作家が、
最先端の人工知能から、進化論、永遠と無限、失われつつある日常の科学などを、
「文学的まなざし」を保ちつつ考察する科学エッセイ。

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物理の点数は最悪ではありながら、なぜか「科学」には心躍る私。
未知のものへの好奇心とか探究心はあるつもりなので、
科学する心は常に持ちたいと思っています。
本巻は敬愛する池澤夏樹さんの科学に関するエッセイなので、わくわくしながら読みました。
どの章立ても、興味深いものばかりです。

 

「原子力、あるいは事象の一回性」の中では、
あの震災時の福島原発の事故時の対応についてこんな風に言っています。

圧倒的に強い相手とのテニスのようなものだ。
飛来するサーブを返せない。
こちらのサーブはことごとく強打となって返ってくる。
右へ左へひたすら翻弄される。

予想しなかった事態に、思いつく限りのあらゆる手を尽くしても全く歯が立たない、
そういう感じですね。


「体験の物理、日常の科学」では、「以前は科学は実感で納得できた」と言います。
例えば電熱器のニクロム線。
電気が通れば赤くなって熱をもつ。
なんとも単純明快。
私が子どもの頃家にあった足踏みミシンなども、
ペダルを踏んだ動きをベルトで伝えると言う仕組みが子供心にも納得できたものでした。
しかるに今は、電子レンジの仕組みもよくわからないし、
スマホの中身がどうなっているのかなんて、全く想像もつかない。
ほとんどがブラックボックスの中。
そんな中で、料理が身体感覚を用いる科学の第一歩だと著者は言います。
そうか、料理も科学なんだ!


「考える」と「思う」の違いでは、AIのことに触れています。
特に「ブレードランナー」や「ターミネーター」、「2001年宇宙の旅」の映画を
例にひいて話が進むのがとても興味深い。
著者はAIは「考える」ことはできるが「思う」ことができない、と言います。
ただし、「今のところ」ということで。

 

「パタゴニア紀行」では、私も以前テレビ番組となった
池澤夏樹さんのパタゴニア旅行記を見たことを思い出しました。
日本のちょうど裏側にあるパタゴニア。
行ってみたくもありますが、いかにも遠そうだなあ・・・。

 

最終章「光の世界の動物たち」では、地球上の生物の壮大な進化の歴史が語られます。
地球が今の形をなしたのがおよそ46億年前。
著者はわかりやすく地球年齢の数字を換算し、今、46歳だと言うことにする。
8歳あたりで生命が誕生。
しかし多細胞生物が生まれるのはようやく40歳。
そして40歳半くらいのところで、いきなり多様な生物が登場。
それというのも、生物が「眼」を持つようになったからだというのです。
なるほど~。
壮大すぎてなんだかクラクラしてきます。

 

後日、ぜひ著者にはこの度のウイルス渦について「科学」してもらいたいです。

 

図書館蔵書にて
「科学する心」池澤夏樹 集英社インターナショナル
満足度★★★★.5

 


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