映画と本の『たんぽぽ館』

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キャロル

2016年02月16日 | 映画(か行)
惹かれ合う理由



* * * * * * * * * *

本作は1952年に、パトリシア・ハイスミスによって発表された小説。
けれど、当時は同性愛は法に触れることもあり、
別名で出版されたといいます。
今や同性婚も認められつつある時代。
だからわりと何気なく見てしまうのですが、
本当はもっと危機感のある作品なのでしょうね・・・。
ただ本作は時代性も考慮して、
ことさらに差別や罪悪感をオーバーに描くことは避けています。





1950年代のニューヨーク。
カメラマンの夢を持つテレーズ(ルーニー・マーラ)は、
デパートのおもちゃ売り場でバイトをしています。
そこに訪れたのは、娘のクリスマスプレゼントを選ぼうとしているキャロル(ケイト・ブランシェット)。
ゴージャスな毛皮のコートをまとうエレガントなその夫人に、
テレーズは心を奪われてしまうのです。
そしてまた、キャロルもその時、清楚なテレーズの佇まいに魅せられてしまう。
彼女は後に「天使が舞い降りたようだった」と語ります。
心と心が惹かれ合うことには、性別など関係ない。
至高の愛を語るにふさわしい幕開けです。
テレーズが売り場に置き忘れた手袋をキャロルが送り届けることから、
交流が始まります。



キャロルは、離婚訴訟中で、
娘の親権が得られないかもしれないことに悩んでいます。
生活は裕福ですが、夫にとってはただの「お飾り」の妻で、
自分らしさを押し殺して生きていくことに耐えられなくなっているのです。



テレーズには恋人がいて、求婚もされているのですが、
何故かそんな気になりません。
それよりも本当にやりたいこと、カメラマンへの道を歩みたい。



いずれにしても、当時の社会の常識、
「女は結婚して家庭に入り、夫のために家庭を守る」という生き方に、
生きがいを見いだせないし、それを生きがいにしたいとも思わない。
この二人にはそういう共通項があるわけですね。
だから、たまたま出会って一目惚れ・・・ではありますが、
惹かれ合うことにはそれなりの理由というものがある、ということです。
そして互いに女性であるからこそ、
そうした「常識」の枠を軽く飛び越えることができるのかも。


例えば本作、男女の愛と置き換えればまあ、よくあるストーリー。
だけれど、本作の二人が同性でないとしたら、惹かれ合う理由が見つかりません。
女性が互いに自分らしさのまま生きていこうとするからこそ、
美しく力強い物語になる。
私としては当初の予想以上に感動してしまったのですが、
その秘密は多分こんなところにあるのだろうと思います。


一つ私が気になるのは、
キャロルは始め娘が欲しがっている「お人形」を買うつもりだったのですよね。
でもお目当ての物は売り切れてしまっていて、キャロルはテレーズに問う。
「あなたは4歳の頃に何が欲しかった?」
テレーズの答えはなんと「汽車とレールのセット」。
テレーズはやはり、普通の女性とはちょっぴり変わっているということを示すエピソードではありますが、
これ、本当にキャロルの娘は気に入ったのでしょうか?
作品中はその答えは示されませんでしたが・・・。
多分あのダンナは呆れて、ばかにしたでしょうね・・・。



旅に出た二人がホテルで、
そのほうが安上がりだからとシングルを二つではなく、ツインの部屋を取りますね。
テレーズはその夜ちょっぴり期待している。
けれどそこはキャロルが見事に焦らします。
こういうテクニックがなんとも言えず心憎い。
ちょっぴり意地悪な大人。
ゴージャスな毛皮のコートを、袖を通さず肩に羽織る。
そんな立ち姿が、どうしようもなくサマになる
ケイト・ブランシェットなのでありました・・・。


「キャロル」
2015年/アメリカ/118分
監督:トッド・ヘインズ
原作:パトリシア・ハイスミス
出演:ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラ、サラ・ポールソン、ジェイク・レーシー

惹かれ合う理由★★★★★
満足度★★★★★

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