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「蛍草」葉室麟

2018年02月13日 | 本(その他)

やんわりとユーモアも交えて

螢草 (双葉文庫)
葉室 麟
双葉社

* * * * * * * * * *


切腹した父の無念を晴らすという悲願を胸に、
武家の出を隠し女中となった菜々。
意外にも奉公先の風早家は温かい家で、
当主の市之進や奥方の佐知から菜々は優しく教えられ導かれていく。
だが、風早家に危機が迫る。
前藩主に繋がる勘定方の不正を糺そうとする市之進に罠が仕掛けられたのだ。
そして、その首謀者は、かつて母の口から聞いた父の仇、轟平九郎であった。
亡き父のため、風早家のため、菜々は孤軍奮闘し、ついに一世一代の勝負に挑む。
日本晴れの読み心地を約束する、極上の時代エンターテインメント。

* * * * * * * * * *

しばらく葉室麟さん作品にはご無沙汰・・・。
などといっているうちに訃報があり、驚きました。
本当にとりあえずなのですが、追悼の意味で読んでみたのが本作。
でも少し意外な気がしましたよ。


これまで葉室麟さんといえば、
主人公の武士や関係する女性はいつも「凛として美しい」イメージでした。
本作の主人公はまだ少女ともいうべき菜々。
武家の出ではあるのですが、父が殿中での刃傷沙汰で切腹に至ったという事情があり、
それを隠して、武家・風早家の女中に入るのです。
その彼女が、女中初日に寝坊をしてしまうというシーンから物語は始まります。
もちろん彼女の芯のところは清く正しく美しく、そして強い。
でもちょっぴり天然っぽいところがありまして、
すごく親しみを感じてしまうのです。
藩主の不正に関わるお家騒動という背景は、やはり葉室麟さんなのですが、
こんな風にやんわりとユーモアをも交えた語り口の作品は、
私はこれまで読んでいなかったと思います。


彼女の周りにいて彼女を支える人たちがまたそれぞれ個性的で素敵です。
そして菜々はいちいち違う名前で覚えてしまうのです。
壇浦五兵衛をだんご兵衛、
お舟さんがお骨さん。
椎上節斎を死神先生。
湧田の権蔵を駱駝の親分。
それぞれのイメージとつながっていて読者としても覚えやすくて、これは傑作。
菜々のほのかな恋心も語られる、まさに痛快、極上の時代エンタテイメント。


葉室麟さんは多作の方でしたから、今後も時々読ませていただこうと強く思いました。
短期間に燃焼し尽くした・・・という作家さんでした・・・。
合掌。

「蛍草」葉室麟 双葉文庫
満足度★★★★★

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
読みました (こに)
2018-02-19 08:30:18
突然の訃報に本当に驚きました。
もう新しい作品は発表されないなんて悲し過ぎます。
葉室作品、私も大切に読み続けていきたいと思います。
Unknown (たんぽぽ)
2018-02-19 19:33:36
こにさま
本作はユーモアもあって、葉室作品の意外なところを発見した気がしました。全然、葉室作品を読み込んでいないということですね・・・。私も、今後も少しづつ読んでいきたいと思っています。

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