映画と本の『たんぽぽ館』

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嫌われ松子の一生

2017年12月09日 | 映画(か行)
女の転落の人生を、ポップに語る



* * * * * * * * * *

本作は気になりながらも、どうもこの演歌調の題名に引っかかりを覚えて、
見ないでいたのですが、
この度拝見して、もっと早く見るべきだったと思った次第。


昭和22年、福岡県に生まれた松子(中谷美紀)。
明るい少女時代を経て、中学校教師となります。
しかし教え子の窃盗事件のいざこざの末、失職。
東京に出て、男性遍歴を重ねるたびに不幸になっていき、
ついにはソープ嬢となり、殺人を犯し服役・・・。


どうにもこうにも不幸な転落の人生。
松子はその都度真剣に男を愛するのに、
裏切られ、傷を深めていきます。
そして最後には自暴自棄になり、もう殆ど立ち上がれなくなりかけている。


そもそも本作の冒頭、
ほとんどゴミ屋敷となりかけた部屋に住む一人暮らしの老婆が、
公園で殺されていた、というところから始まるのです。
それが松子。
近所の住民からは嫌われ、困った存在と思われていたらしい。
松子の甥に当たる笙(瑛太)が、
松子の部屋の後始末をしながら、彼女の人生をたどるのです。



本作をシリアスに描いたら、ものすご~く暗くなってしまいます。
私も、こんなあらすじだけ見たとしたら、全然見る気になりません・・・。
ところが、本作の映像と音楽はとてつもなくポップ。
原色に彩られて、時にはアニメーションが入り、
松子自身の歌声はあっけらかんと明るい。
ミュージカルと言っても良いくらい、音楽も多く、重要な位置を占めています。
松子の孤独を、せめて明るい語り口で紛らわそうとでもしているようです。
当人としては悲惨極まりないけれど、
はたから見れば滑稽、ということでもある。


また松子のこのような性格を形作ったのが、
大きく彼女の父(柄本明)に要因がありそうだと匂わせるところもなかなか深いですね。
妹が病弱なため、父の関心は常に妹にあり、
松子は父の関心を引くためにいつもおどけて見せていたという・・・。
中学教師をやめることのきっかけとなった少年との、
後の出会いというのもまた、物語に深みを与えます。
意外と(?)深いストーリー性と、ポップな画面。
実に見る価値のある作品でした。

<WOWOW視聴にて>
「嫌われ松子の一生」
2006年/日本/130分
監督:中島哲也
原作:山田宗樹
出演:中谷美紀、瑛太、伊勢谷友介、香川照之、市川実日子

悲惨な人生度★★★★★
満足度★★★★★
コメント
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