映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

先生と迷い猫

2015年10月15日 | 映画(さ行)
猫をきっかけに繋がる人々の輪



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埼玉県岩槻市で実際にあった地域猫探索を記したノンフィクション
「迷子のミーちゃん地域猫と商店街再生の物語」を原案とした作品です。
ロケ地を伊豆下田として、
ひなびてのどかな町の光景と猫がなんともいえない雰囲気を表しています。



偏屈で頑固な元小学校の校長先生(イッセー尾形)は、
妻(もたいまさこ)に先立たれて、わびしい一人暮らし。
そこへ毎日のように一匹の三毛猫が、まるで亡き妻のお参りをするかのように通ってきます。
このミイは妻の生前からよく来ており、妻がいつもかわいがっていたのです。

しかし校長はこの猫が気に入らない様子。
ある時とうとう、猫用の潜り戸をガムテープで止めつけ、
入って来られないようにしてしまいました。
ところがその後、ミイは本当にパッタリと姿を見せなくなってしまいます。
その後わかったのは、ミイは町の多くの人達に可愛がられていて、
タマコとかソラ、ちひろなど、いろいろな名前で呼ばれていたということ。
皆いなくなってしまった猫の心配をしています。
校長先生は、ミイを閉めだしてしまったからいなくなってしまったような気がするのでしょうね、
街の人達をも巻き込んで、猫の捜索を始めるのですが・・・。



偏屈で人付き合いも苦手な校長先生が次第に人の輪に溶け込んでいく。
きっかけは一匹の猫ではありますが、
あるべき地域再生の姿がほんのり浮かび上がります。
これまではあの奥様がとてもうまくこの校長先生の頑固さをカバーしてきたのでしょうね。
特に男性はそういうご近所付き合いが苦手。
なにかしら地域とのつながりを持つことができるといいですよね。



本作、皆がたった一匹の猫を案じ、力を尽くす物語ですが、
では人間のこと、特に「子ども」は?
という問いかけをしているようにも思いました。
不登校の子、虐めにあっている子・・・。
猫を心配するのはいいけど、
それならもっとできることがあるのではないか・・・と。
そのために、ここはやはり「元校長先生」なのだろうな。


偏屈な元校長、イッセー尾形さんが実にいい味を出して演じていました。
「若い頃は面白かった・・・」と、
子供たちと楽しみながら過ごした教員生活を垣間見せ、
そして「校長時代はなにも面白くなかった」などと語るところに、
リアルな人間像が浮かび上がります。
それにしても、一生を教育に捧げたという自負があるから、
ちょっぴりいばりんぼ。
いかにも昔の「先生」たちの中には、こういう方が多くいらっしゃるように思います。



校長先生が撮りためた昔の写真を町のホームページに使いたい、
ということで、時おり市役所の職員(染谷将太)が訪ねてきます。
そのいかにも現代風の礼儀も知らないような青年が、
それでもちょっぴりいいところも見せるのがいい。
染谷将太さんは、どんな役でもこなせて、役者としてはやはり有望ですね。
ミイ役は天才(?)猫のドロップで、すべて代役なしだったそうです。
素晴らしい!! 
三毛猫、いいですよね。
私ももし猫を飼うのだったら三毛猫がいいなあ・・・。
以前から憧れています。

「先生と迷い猫」
監督:深川栄洋
原案:木附千晶
出演:イッセー尾形、染谷将太、北乃きい、ピエール瀧、もたいまさこ

ほのぼの度★★★★☆
満足度★★★★☆