泡 盛 日 記

演劇人(役者・演出家)丹下一の日記です。

金のためなのか?

2009-08-01 22:12:54 | 丹下一の泡盛日記
 今朝は早起き、都内へ。所属しているプロダクション・タンクの事務所でシェイクスピアの読み合わせ稽古。毎週土曜日にこの会を続けていきたいとのこと。ようやく時間がつくれて参加する。
 今日は「ハムレット」。とにかく最初から読み出して最後までいく。休憩入れて5時間かかる。。。

 まあ、とにかく若い人は漢字が読めない、だけでなくこういう「古典」の台詞になれていないこともあって大変だ。
 自分だって1990年代にやった「夏の世の夢の夢」シリーズやTSCの舞台や朗読会に出ていなかったら似たようなもんだったろう。まあ、よくぞ最後までたどり着いたもんだ。
 再来週は稽古場でシーンの発表会。来週は台北にいて稽古に出れないので、なんか案を考えておかないといかん。急遽、稽古場で初めてあった女優さんに声かけて、共演のお願い。

 こういう底辺の作業の積み重ねがどんな舞台にも大事。
 先日、(劇場としては)閉じてしまったストアハウスの冊子に、稽古場・劇場として運営してきたことの経済的な苦労が語られて、その上で「そもそも俺たちは金のために芝居をやってきたのか?」という問いかけがあり、思わず「うん!」と膝を叩いた。
 ストアハウスや解体社、プロトシアターといった劇団が観客数は限られていても質の高い舞台作品を創り続け、そして経済的になりたたず観客も少ない日本より海外に発表の場を求めていった経緯は自分のそれとも重なる。
 経済的に黒字になるのは夢だが、はっきりいって不可能だ。そして、ただただ「より深みへ、高みへ」と突き進んでいった結果、出来上がったものなのだ。

 そしてその後、それが深いものであればあるほど、実は他の人の手によって広まっていく。
 アングラ演劇華やかな頃、とんがったテレビドラマやお笑い番組にはアングラのネタがいくつもパクられていて驚いたものだ。
 そして、それらははるかに「上手」な演じ手によって少し「上品」につくりかえられていた。

 手前味噌の自慢話だが、9年前に演出させてもらったイベントの最後のシンポジウムでまったくデザインの違う4つの椅子を舞台上に並べた。
 主催者の方の理解がなかなかえられずに苦労したが「これがかっこいいんです」で最後は押し切った。
 数年ほど前、ある人から彼が「あの時の椅子のイメージが妙に残ってるんです」って言ってたよ、と聞いた。そして、今日ある広告で全く同じイメージで4つの椅子が並んでいるデザインをみた。
 もちろんこのデザイナーが自分の舞台などみているはずもない。自分も9年前にやらないで、今やれば、きっと「かっこいい!」って思ってもらえたんだろうな。
コメント
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