島崎藤村作詞・藤江英輔作曲の「惜別(せきべつ)の歌」は、
島崎藤村詩集の若菜集にある以下の『高楼(たかどの)』が基になっているそうだ。
『惜別(せきべつ)の歌』
遠き別れに たえかねて
この高楼(たかどの)に 登るかな
悲しむなかれ 我が友よ
旅の衣(ころも)を ととのえよ
別れといえば 昔より
この人の世の 常なるを
流るる水を 眺(なが)むれば
夢はずかしき 涙かな
君がさやけき 目のいろも
君くれないの くちびるも
君がみどりの 黒髪も
またいつか見ん この別れ
君が優しき なぐさめも
君が楽しき うた声も
君が心の 琴の音も
またいつ(か)聞かん この別れ
4 君の行くべきやまかわは
落つる涙に見えわかず
袖のしぐれの冬の日に
君に贈らん花もがな
島崎藤村の若菜集http://www.aozora.gr.jp/cards/000158/files/1508_18509.html
こゝろなきうたのしらべは
ひとふさのぶだうのごとし
なさけあるてにもつまれて
あたゝかきさけとなるらむ
ぶだうだなふかくかゝれる
むらさきのそれにあらねど
こゝろあるひとのなさけに
かげにおくふさのみつよつ
そはうたのわかきゆゑなり
あぢはひもいろもあさくて
おほかたはかみてすつべき
うたゝねのゆめのそらごと
『高殿』
わかれゆくひとををしむとこよひより
とほきゆめちにわれやまとはん
妹
とほきわかれに
たへかねて
このたかどのに
のぼるかな
かなしむなかれ
わがあねよ
たびのころもを
とゝのへよ
姉
わかれといへば
むかしより
このひとのよの
つねなるを
ながるゝみづを
ながむれば
ゆめはづかしき
なみだかな
妹
したへるひとの
もとにゆく
きみのうへこそ
たのしけれ
ふゆやまこえて
きみゆかば
なにをひかりの
わがみぞや
姉
あゝはなとりの
いろにつけ
ねにつけわれを
おもへかし
けふわかれては
いつかまた
あひみるまでの
いのちかも
妹
きみがさやけき
めのいろも
きみくれなゐの
くちびるも
きみがみどりの
くろかみも
またいつかみん
このわかれ
姉
なれがやさしき
なぐさめも
なれがたのしき
うたごゑも
なれがこゝろの
ことのねも
またいつきかん
このわかれ
妹
きみのゆくべき
やまかはは
おつるなみだに
みえわかず
そでのしぐれの
ふゆのひに
きみにおくらん
はなもがな
姉
そでにおほへる
うるはしき
ながかほばせを
あげよかし
ながくれなゐの
かほばせに
ながるゝなみだ
われはぬぐはん
『惜別(せきべつ)の歌』
遠き別れに たえかねて
この高殿(たかどの)に 登るかな
悲しむなかれ 我が友よ
旅の衣(ころも)を ととのえよ
別れといえば 昔より
この人の世の 常なるを
流るる水を 眺(なが)むれば
夢はずかしき 涙かな
君がさやけき 目のいろも
君くれないの くちびるも
君がみどりの 黒髪も
またいつか見ん この別れ
君が優しき なぐさめも
君が楽しき うた声も
君が心の 琴の音も
またいつ(か)聞かん この別れ
中央大学と「惜別の歌」の関係
http://www.geocities.co.jp/Milano/5796/1972_029.htm より
「惜別の歌」は私たち中央大学の学生にとっては「蛍の光」に代る
歌とされ 親しい友と別れる時離れがたい心情にかられた時この歌
を唄って別れる慣わしとされている
時・昭和19年の春・自由なる学園中央大学の庭にも戦雲は容赦な
く吹き寄せついに学徒動員の斬が下った 私たちの先輩である中央
大学の学生は長野県は遠く諏訪湖の付近に配属きれ それと時を同
じくして東京のとある女子大生が勤労奉仕をしていた 初めのうち
はただ目を見かわしていたが二人の間に淡い恋心が湧き 清く美し
くそして激しく燃えた
春が過ぎ 夏が過ぎやがて枯葉の吹きずさぶ秋となった頃 上の一
見習士官が二人の間をねたみ 中央大学の学生を千葉県は遠く習志
野の地へ転属を命じた この悲しい知らせを聞いた二人は深い悲し
みにうちひしがれ とある高殿に登って島崎藤村作「若菜集」の一
節より口ずきんだのがこの歌の始まりとされている
*この歌の由来については 【二木紘三のうた物語】 に藤江英輔氏ご自身の文章で、詳しい事実が紹介されていますので、興味をもたれた方は是非ご覧になって下さい。
http://app.m-cocolog.jp/t/typecast/210196/181227/17897828
最新の画像[もっと見る]
- QUEEN 1984 Thank God it's 💝Christmas🎄 3年前
- ヘルダーリンの詩 『イスター』 3年前
- ドンキホーテへのサンチョからの信頼 3年前
- 橋掛 野口米次郎 3年前
- 詩を贈ることについて 谷川俊太郎 4年前
- 雑誌「種蒔く人」創刊100年 顕彰会「今こそ耳を傾けて」 4年前
- 西川史晃(フーミンさん) 東京から歩いて富士山に登ったら一度死んで生まれ変わる体験だった 4年前
- 伝道之書 Ecclesiastes 4年前
- Wordsworth,"London,1802"ワーズワース『質素なる生活、高遠なる思索』 4年前
- すべての問題は山に行けば解決できる 西川史晃(フーミンさん)の著作 なぜ山に登るのか⁉️ 4年前
古風な歌詞で旧制高校の寮歌のような雰囲気が気に入りました。
先日倍賞千恵子さんのYouTubeを検索していて、再びこの歌にたどり着き感動しました。
貴ブログで作曲の奥深い由来も知って更に感動しました。
私はブログ「団塊世代の我楽多(がらくた)帳」の1月26日付記事で倍賞千恵子さんを紹介しています。もしよかったらご一読ください。
タイトルが 高殿
となっています。
ご確認ください