硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

「犬を飼うという事」  8

2013-10-04 08:45:32 | 日記
翌日、次郎君に、はずれであった事をおしえたら「え~っ。またはずれなのかぁ。」と、悔しがった。
吉行君も「う~ん。これはわからないなぁ。」といって腕を組んでいる。
唯ちゃんも「ちがってたの! じゃあなんでちがうの?」と、僕に迫ってきた。でもなんで違うのか分からない僕は、「なんでだろう。」と、答えるだけで精一杯だった。

唯ちゃんは納得がいかないみたいで、

「餌をやったり、散歩に行く事が大切じゃないなんておかしいよ。」と言ったから、僕は、

「それも大切な事なんだけれど、もっと違う答えがあるみたいなんだよ。」と言うと、考え込んでいた二郎君が、

「難しい事は考えない!!やっぱり、誕生日に買ってもらう!これしかない。」

と言うと、よしゆきくんも、

「そうそう、それが一番簡単だよ。」

「それよ。それっ!」

みんなその意見に賛成しているから、僕もそれしかないかなぁと思い始めていたら、隣の席に座っている、普段から静かな敬太くんが、読んでいた本を閉じて、

「・・・それじゃあ、無理だと思うよ」

と、小さな声で言ったから僕たちは驚いた。

「どっ、どうしてそう思うのよ。」

唯ちゃんが突っかかったように言うと、

「・・・。だって、問題に答えないといけないって言っているんだから、答えないとだめだと思うんだ。」

と、小さな声で答えた。それを聞いた唯ちゃんは

「でも、誕生日って言えばプレゼントじゃない!おねだりしたらきっと買ってもらえるわよ。」

と、少し怒りながら啓太くんに言っている。それでも敬太くんは諦めようとはせずに、

「・・・むつきのお父さんは約束を守る人。だから、おねだりしたって無理だよ。」

その言葉に唯ちゃんは、

「どうして敬太くんにそんなことがわかるの?それに・・・。」

そう言いながら僕の方を見て、

「そうなのむつきくん!」

と、聞かれてしまったけれど、よく分からないから、

「いやっ、どうかなぁ。」

と答えると、

「なによ。はっきりしないわねぇ。」

と、言ってあきれられてしまった。

だから、「・・・。よく分からない。」と言うと、唯ちゃんは、

「よく分からないって。いつも一緒にいて分からないの?」

と、聞き返してきたからもう一度、

「分からないよ。たしかに約束事は守ってくれるけれど、あまり深く考えた事がないもの。だったら、唯ちゃんはお父さんの事ってわかってる?」

と、聞き返してみると、唯ちゃんは少し戸惑いながら

「・・・。パパはいつもお仕事で忙しいからあまり家にいないけれど、唯には優しい・・・。」

唯ちゃんはうつむいて黙り込んでしまって、少し重い空気が広がった。すると敬太君が、

「おれの親は離婚してしまったから、家にはお父さんはいないけど、たまに会えるんだよ。それで、会った時は、いろいろ話すけれど、それでもお父さんの事はわからないよ。もし、離婚してなくてもお父さんの事が分かるかって言われたら、やっぱりわからないと思う。でも、むつきの父さんは約束を守る人だってわかるきがしたんだ。」

と、言うと、今度はみんなが本当にだまってしまった。

敬太君は学校の帰りに僕の家に遊びに来たことがあって、その時、僕のお父さんと読んでいる本について話をしていたことがあって、その時、僕のお父さんについてなにかを感じたんだと思った。

しばらくすると次郎君は、

「そっかぁ。敬太ンちは、お母さんだけなんだね。」

と、言うと、それを見た吉行君も、

「大人の都合って奴だね。でも僕らはそれをどうする事も出来ないし、どちらかについてゆくしかないんだよね。」

と、言って話を続けると、それまでうつむいてだまっていた唯ちゃんが

「・・・。最近お母さんはお父さんの悪口をよく言っている。たまに会えばけんかしているし、そんな時すごく不安になる。」

寂しそうにつぶやいた。それを聞いた次郎君は

「でも、でも、離婚していないんだからいいじゃん。」

と明るく言うと、吉行君もその話にのって、

「そうそう、喧嘩なんて僕の家でもしょっちゅうだよ。本当につまらない事で喧嘩しているから、関わらない事にしているよ。」

「吉行んちも? おれんちもつまらない事で喧嘩してるよ、おかずがまずいだとか言っては喧嘩するし、休みにはゴルフばっかりとか・・・。そう言いながらもパパが出張の時は何処かに遊びに行ってしまうし・・・。まったくしょうがないよね。」

「そうそう、しょうがないよね。でも、喧嘩するほど仲が良いって言葉があるしね。それに唯ちゃんの家はまだいい方だぜっ。」

「ほんと、ほんと。だから大丈夫さっ。」

そうすると、唯ちゃんが小さな声で

「そうなんだ。よかった。」と、つぶやいた。

僕の家では喧嘩はめったに起こらない。その代わりとても長く話し合っている。お父さんもお母さんもなんだか一生懸命に。だから、そういう親の喧嘩話が出てくると、不思議な気持ちになる。でも、それぞれにお父さんとお母さんちがうんだなぁと思っていると、敬太くんが、

「ごめん。おれがこんな話をするから。」

と、みんなにあやまったら次郎君が

「だいじょうぶだって。それより、むつきの話だよ」

と、言って話を元に戻した。

「ああ、そうそう。」

「そうだった。忘れてたわ。」

「ホントだよ。さっさとなぞを解いちゃおうよ。」

僕達は問題についてまた考え始めた。

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