映画『八犬伝』(10月25日公開)関連の取材予定が入ったので、原作となった山田風太郎の『八犬傳』(廣済堂文庫)を図書館で借りて読んでみた。
『八犬傳』は、曲亭馬琴の伝奇小説『南総里見八犬伝』をモチーフに、馬琴と絵師の葛飾北斎との交流を描いた「実の世界」と「八犬伝」の「虚の世界」を交錯させながらの二重構造で描くという興味深い趣向。いわば「伝記」と「伝奇」の融合だ。
中でも虚構で正義を描く馬琴と、虚構で現実の闇を見つめる『東海道四谷怪談』の鶴屋南北との物語についての問答が印象に残る。ここには作家としての風太郎の思いや葛藤も投影されているのだろう。
最後は盲目となった馬琴の口述を、息子の嫁で無学のお路が筆記する様子が描かれる。お路なくして八犬伝の完成はなかったのだ。風太郎は「これを馬琴のえがく神変をしのぐ奇蹟といわずして何といおう」と書き、「『八犬傳』の世界を、江戸草創期における『虚の江戸神話』とするならば、この怪異壮大な神話を生み出した盲目の老作家と女性アシスタントの超人的聖戦こそ、『実の江戸神話』ではあるまいか」とも書いている。ここで初めて虚と実が一つになり、実が虚をしのいだのだ。見事な大団円である。
さて、「八犬伝」については、NHkの人形劇「新八犬伝」(73~75)脚本:石山透、音楽:藤井凡大、人形:辻村ジュサブロー、語り(黒子):坂本九で親しんだ。
九ちゃんの名調子に乗って繰り出される「因果は巡る糸車、巡り巡って風車」「抜けば玉散る氷の刃、名刀村雨」「八犬士の前に立ちはだかる玉梓(たまずさ)が怨霊」「さもしい浪人、網干左母次郎(あぼしさもじろう)」「関東管領、扇谷定正(おおぎがやつさだまさ)」「本日、これまで!」といった口上や名文句が印象的だった。九ちゃんが歌う挿入曲「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」とエンディングテーマ「夕やけの空」もよかった。
『七人の侍』(54)や『荒野の七人』(60)のメンバーを覚えたのと同じように、犬江親兵衛「仁」、犬川荘助「義」、犬村大角「礼」、犬坂毛野「智」、犬山道節「忠」、犬飼現八「信」、犬塚信乃「孝」、犬田小文吾「悌」といった具合に、八剣士の名前と珠の字も覚えたものだ。
調子に乗って『南総里見八犬伝』日本の古典文学 15 ジュニア版 (福田清人・偕成社)を読んだりもした。ちょうど中学生の頃だった。
「夕やけの空」
https://www.youtube.com/watch?v=i2e9SH7sRqs
「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」
https://www.youtube.com/watch?v=1XNVetkB0Y8
『里見八犬伝』(83)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/d9178f195e1a1962b8d60d6ffd48fdbb
共同通信エンタメOVOに連載中の
『週末映画コラム』
今週は
映画製作の裏方に光を当てた2作
本物の侍が時代劇の斬られ役に『侍タイムスリッパー』
事件に巻き込まれたスタントマンの奮闘を描く『フォールガイ』
詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1443538
戦時下における放送と戦争の知られざる関わりを題材に、プロパガンダの先頭に立ったアナウンサーたちの葛藤や苦悩を実話を基に描いた『劇場版 アナウンサーたちの戦争』が8月16日から全国公開される。本作で、開戦ニュースと玉音放送の両方に関わった伝説のアナウンサー・和田信賢を演じた森田剛に話を聞いた。
「この役を通して、言葉をどう伝えるのか、表現するのかということを探っていたような気がします」
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/interview/1443344
NHKスペシャル「アナウンサーたちの戦争」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/4d999ab78e8f8d54362f27663c2efab8
『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(89)
やっぱり映画は楽しく、面白くなければダメなのだ
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/eb96bbaf421200c455587aab28f33161
ある映画の試写(情報解禁前)を見たら、冒頭でアメリカの「ヴェンチュラ・ハイウェイ=Ventura Highway」がカーステから流れてきてびっくりした。
https://www.youtube.com/watch?v=dAUUy7NMnaY
というのも、先日パリオリンピックのブレイキン女子決勝で、DJがかけた曲がアメリカの「名前のない馬=A Horse With No Name」だったからである。
https://www.youtube.com/watch?v=09YKl-06JYQ
「名前のない馬」は、最近では『コヴェナント 約束の救出』(23)や『ナイス・ガイズ』(16)でも流れていた。昔「あぶない刑事」でも使われた回があったような覚えがある。
今アメリカが来てるのか…。だとすれば昔よく聴いていた者としてはうれしい。
『コヴェナント 約束の救出』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/af382b715262ed7f9d3dc422e6170651
『オズの魔法使』とミュージシャン
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/8bea5b048a5b828b840ec0ce505ea92c
パリオリンピック閉幕。1924年のパリ大会は『炎のランナー』(81)の舞台となった。今回は誰が記録映画を作るのだろうか。
『東京2020オリンピック SIDE:A』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/b2bac75b18633c0c86e00a100831c530
オリンピック記録映画 オリンピック関連映画
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/e40b5779b822179355c603c5666e0f5d
パリオリンピック開幕
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/43c5ccd9052d0b3798984ba719ead224
堀米雄斗の金メダルで思い出した『ロード・オブ・ドッグタウン』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/6e7f495a30aab9c429a35f5b0be86b41
「巴里の空の下」とトム・クルーズ
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/08c790c493a7e5951eab213543af3032
パリオリンピックの閉会式の冒頭で聴いたことのある歌が流れた。この歌は「巴里の空の下」というシャンソンで、ジュリエット・グレコやエディット・ピアフの歌唱が有名だが、元はパリの下町の庶民の暮らしをいくつかの物語を織り込むようにして描いたジュリアン・デュビビエ監督の『巴里の空の下セーヌは流れる=Sous le ciel de Paris』(51)の主題歌。
ルネ・クレール監督の『巴里の屋根の下=Sous les toits de Paris』(30)もあるので紛らわしいが、どちらも歌が印象的なパリへの愛に満ちた名作だ。
トム・クルーズの「ミッション:インポッシブル」のパロディのような登場の仕方は面白かった。ただ、開会式もそうだったが、事前撮りしたものと合成して流すところはちょっとしらけた。
『巴里の屋根の下』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/4df5bf76ed512a279dcc818d084df689