川口保 のブログ

1市民として市政を眺めつつ、社会のいろいろな出来事を取り上げています。

検証!松阪駅西再開発事業(最終)

2008-11-27 06:18:37 | 思うこと
 松阪駅西地区市街地再開発事業は事実上破たん状態になりました。これまでこの事業が歩んできた道を振り返って、私なりの検証をしています。

◆再開発=失敗
 全国で行われている再開発事業では、再開発=失敗とまで言われている。それほど成功例が少ないことを表している。今回のように途中で破たんということではなく、たとえ事業が成立しても、どれだけの効果が表れるかです。工事が終わり景色は見違えるように変わった、しかし市街地の活性化などの効果は現れず借金だけ残った。これでは何のための事業かわからない。

◆小松市の失敗例に学ぶ
 私たちが会派の行政視察で訪れた石川県小松市では、今から15年前から駅周辺の再開発事業が始まった。バブルがはじけたとはいえ、まだまだ国からいくらでもお金が出る時代、約500億円もの大金をかけて小松駅の高架事業、駅東・駅西の区画整理事業が行われた。そして駅に降り立った私たちがうらやむような広い駅前広場などスッキリした駅周辺になった。
 しかし事業が終わっても駅を利用する人が増えることはなく、駅の高架下の商業スペースに入る店が少なく、駅に隣接するアーケード商店街はシャッターの閉める店が多く、人影もまばらであった。結局事業費の半分の250億の負担が小松市の重くのしかかってきた。この負債のためなのか、平成の合併は行われず、市は新規の事業には全く手が付けられない状態であった。
 ほかの自治体の成功例、失敗例を研究して、失敗しないやり方を学ぶことも大事ではないでしょうか。

◆民間活力の導入はよいが
 私は韓国で仕事をしたことがあるが、韓国は民間資本を有効に使うPFI事業が盛んである。国家的事業の高速道路、鉄道、長大橋などの工事をPFI事業で実施されています。
 今回、松阪駅西再開発事業は民間主導で始まった。自治体の財政が苦しい時、民間資本を活用した事業は決して悪くはないが、この事業は手法が悪かった。民間が「絵」を書いたものに後から市が乗っていった感じである。民間主導でもよいが、都市計画事業である、始めから市が指導すべきであった。
 事業途中で事業パートナーに信頼がもてなくなり、確約書云々となれば、市側から見れば相手が悪かったと言わざるを得ない。

◆今後の再開発や市街地活性化事業の進め方
 これまでの経過とともにこの事業を検証してきたものをまとめます。

1)まず市民に説明し、市民の理解を求める
 今回は民主導といえども、国や市の補助金を使い、市の土地も使う都市計画事業であることから事業の骨格が決まった時点で、準備組合も市も市民に説明し、市民の理解を求めることからスタートすべきであった。それも市民意見交換会やまちづくりフォーラムなど市民の代表によるものもよいが、各地区に出向いて行って説明し、理解を求めるべきであった。

2)まちとしての景観への配慮
 駅前はよくその町の玄関口とも例えられ、市民にとって大切な場所です。景観に対する配慮が必要です。三交跡地利用のような、たとえ民間が民間の土地に民間の資本で事業を進める場合でも、駅前という公の場所では景観に対する配慮が必要であろう。

3)市の歴史や文化に対する配慮
 松阪市は歴史と文化あふれるまちです。新しいまちづくりには松阪市の歴史と文化に対する配慮が必要です。今度計画されている中心市街地活性化事業においても同じことです。
 長い時間をかけて積み上げられた松阪市の歴史と文化をいかに保全していくか、いかに生かしていくか大切です。

4)プロのアドバイスを受ける
 松阪市が主催した「まちづくりフォーラム」で講演された都市プランナーの簑原敬氏やパネラーの全国市町村再開発連絡協議会顧問の横島毅氏ら専門家からも今回の再開発事業には疑問を投げかけられた。これからの再開発事業にはいくつかの都市で再開発事業を手がけてきたこのようなプロにアドバイザーを頼むべきではなかろうか。
 
 中心市街地商店街の皆さんからはこの事業を早く進めてほしいとの熱い思いも聞かされました。自分たちの仲間からシャッターを閉める店が増えてきている状態で「わらをも掴む」思いでしょう。
 再開発や市街地活性化は市民のまちづくりに対する思いを大事にすべきです。市民の理想と事業が成立するかの現実の溝をみんなでいかに埋めていくかということが大切です。
 
 この駅西再開発事業の検証を私なりに進めてきましたが、この事業がこのような破たんへの道を歩んだことに対して、私も市政をチェックする立場にある議員の一人として、反省をしなければならないと思います。
 議会でも、市民の間でもあれだけ激しい議論がなされたこの事業、今終焉を迎えるにあたって、あのときの喧噪は何だったのであろうかと複雑な寂しさをおぼえます。(おわり)
  (写真は再開発が行われた小松駅前の様子です)
                         平成20年11月27日
                             松阪市議会議員 川口 保
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