童話の星屑たち

みついただしの描く小さなお話たちです。

絵本「ぼくがすて犬になった日」(石風社刊)
全国書店にて好評発売中

星どろぼう

2014-01-03 | 童話
 帰り道をいそぐ、熊の親子がいました。秋の夕ぐれは、すぐお日さまがしずんでしまいます。お空にはお星さまがポツリポツリとまたたきはじめていました。

 「あっ!おかあさん。お星さまがあとからついてくるよ!」
小熊のココがふりかえると空をゆびさしていいました。ゴーゴーと音をたててお星さまがチカチカ光りながらココたちの上を飛んでいきました。
ココはふしぎそうな顔をして、飛んでいくお星さまを見つめていました。
おかあさんはココの見つめているお星さまを見て、ほほえんでいいました。
「あれは飛行機ですよ。光っているのは星ではなくて、飛行機のランプなの。飛行機がここにいますよと光っているの」
「お星さまじゃないの?」
「そうよ。人間の乗り物なの。さぁ、寒くなってきたからはやくお家に帰りましょう」

 その夜、物知りのおじいさんがココのお家にやってきました。ココはさっきの飛んでいくお星さまのことをおじいさんにはなしました。
「そうかそうか。でも・・・飛行機だとはかぎらないぞ」
「ほんと!ぼくもふしぎだな~とおもったんだ!」
「飛行機にみせかけて、星どろぼうもまじっているからの・・・」
おじいさんはココに星どろぼうのはなしをしました。

 星どろぼうは、気に入った星を空から盗みとると体中にはりつけ、それはそれは美しいそうです。鳥のようなすがたで音もなく夜空を飛び、盗んだ星にあきると人間に化けて人間たちに星を売りつけているそうです。

 「ココが見たのはゴーと音がしたのだから、まちがえなく飛行機じゃよ」
おじいさんが笑っていうと、おかあさんがおじいさんのお話は作り話が多いから信じちゃだめよと、ココの頭をなでました。
 
 ベッドに入ってもココは星どろぼうのことが気になって、なかなか眠ることができませんでした。耳をすましていると、遠いところから小さくゴーという音が聞こえました。ココはベッドから出るとお家の外に出ました。
ゴーゴーとふたつの飛行機がたくさんのランプをつけて、高いお空の上を飛んでいました。

 「・・・星どろぼうって、ほんとうにいるのかな・・・?」
ココは飛行機を見つめながらつぶやきました。すると、片方の飛行機がクルッと向きを変えココの方へ音もなく鳥のように羽ばたきやってきました。

 星どろぼうです!体中の星が美しく光りかがやいていました。
「なんだ、熊の子供か。星どろぼうはほんとうにいるさ・・・」
星どろぼうは体の星をひとつつまむと、ココの前に落としました。
「この星はもうあきた、おまえにくれてやる」
そういうと、星どろぼうは羽ばたき、夜空へ消えていきました。ココはおどろいてひと言もあげることができませんでした。

 次の日、おかあさんやおじいさんに星を見せると、ただのガラス玉だと笑われました。
でも、大人になった今でもココはだいじに星どろぼうの星を持っているそうです。

  おしまい


 久しぶりに更新しました
昨年はいろいろとあって、ブログもすっかり夏以降はお留守にしてしまいましたやっと落ち着いてきたのでボチボチと再開してみました。
このお話は何年か前に書いたものです。今すぐに新作は書けないし、気に入っていたお話なので蔵出してみました。
今年も気長によろしくお願いします

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コメント (2)
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