「今日は3月3日なのね~」
ケイコは恨めしげにお雛様のPOPを見た。雛祭りの催事は今日が最後で、明日からの入学シーズン春の催事に切り替えの為、残業である。
ケイコはスーパーでアルバイトをしていて、催事コーナーの担当だった。
「運悪すぎ~」とケイコは心でつぶやきながら、桃の造花やフーセンの雛人形を外して、桜や菜の花に彩られた一年生のPOPに次々と付け替えていった。
作業が終わり裏のゴミ置き場に使用済みのお雛様や桃の花を捨てながら、ケイコは何だかかわいそうな気持ちが湧いてきた。POPのお雛様でもちょっと不憫で心が痛んだ。
「お雛様、もらっていってもいいですか?」
「そうか・・・ケイコちゃんも、女の子だもんね~」
催事コーナーの主任はおどけながら、好きなだけ持ってっていいよと言った。ケイコもふざけながら言い返して、フーセンの雛人形一組と桃の一枝を持ち帰った。たしかに主任に言われても仕方がない、ケイコは化粧気もなくいつも男のような服装をしているのだから。
「汚いとこですが、こちらへドーゾ」
ケイコはアパートに帰ると、タンスの上の小物をどかしてお雛様とお内裏様を置き脇に桃の枝を立てかけた。
「お雛様はすまし顔なのに、あんたたちは笑っているねぇ」
ケイコは語りかけながら、雛あられの代わりにチョコレートを2粒、マンガ顔のお雛様にお供えした。
「ブ~ブ~ブ~・・・」
携帯が鳴った、話すといつもケンカになってしまうお母さんからだ。
「お雛様を出して待っていたのに、どうして帰ってこないの!」
ケイコはそんなことすっかり忘れていた。いつもならここでケンカになるのだが、何故かお母さんは優しくてケイコも腹が立つことはなかった。ケイコは申し訳ない気持ちになり、携帯を切る間際お母さんに明日にでも帰ると約束をしていた。
「なんか調子が狂うな・・・」と思いながらも温かな気分だった。
そして、ケイコは取っておきのワインとチーズを出してひとりだけのひな祭りをしようとしたとき・・・
「トン・トン・トン」
ドアをノックする音がした、ドアを開けるとミカとトモだった。最近ケンカして気まずくなった二人だ。
「・・・なぜかケイコと会いたくなって」
始めは気まずかったが、すぐに楽しいひな祭りパーティーになった。みんないつものように心置きなく笑っていた。ケイコもこんなに愉快で穏やかな気持ちは久しぶりだった。
「不思議ね、あなたたちのせいかしら・・・」
ケイコは、タンスの上のフーセンのお雛様をチラッと見て考えたが、すぐに笑い声の絶えない女の子の宴の中に戻っていきました。
おわり
小売や物流の仕事をしていたことがあるので、たくさんの販促品を扱いました。本当に捨てるには惜しいな、というPOPも結構ありました・・・。
そんな彼らにも第二の人生?があるといいですよね~。
ケイコは恨めしげにお雛様のPOPを見た。雛祭りの催事は今日が最後で、明日からの入学シーズン春の催事に切り替えの為、残業である。
ケイコはスーパーでアルバイトをしていて、催事コーナーの担当だった。
「運悪すぎ~」とケイコは心でつぶやきながら、桃の造花やフーセンの雛人形を外して、桜や菜の花に彩られた一年生のPOPに次々と付け替えていった。
作業が終わり裏のゴミ置き場に使用済みのお雛様や桃の花を捨てながら、ケイコは何だかかわいそうな気持ちが湧いてきた。POPのお雛様でもちょっと不憫で心が痛んだ。
「お雛様、もらっていってもいいですか?」
「そうか・・・ケイコちゃんも、女の子だもんね~」
催事コーナーの主任はおどけながら、好きなだけ持ってっていいよと言った。ケイコもふざけながら言い返して、フーセンの雛人形一組と桃の一枝を持ち帰った。たしかに主任に言われても仕方がない、ケイコは化粧気もなくいつも男のような服装をしているのだから。
「汚いとこですが、こちらへドーゾ」
ケイコはアパートに帰ると、タンスの上の小物をどかしてお雛様とお内裏様を置き脇に桃の枝を立てかけた。
「お雛様はすまし顔なのに、あんたたちは笑っているねぇ」
ケイコは語りかけながら、雛あられの代わりにチョコレートを2粒、マンガ顔のお雛様にお供えした。
「ブ~ブ~ブ~・・・」
携帯が鳴った、話すといつもケンカになってしまうお母さんからだ。
「お雛様を出して待っていたのに、どうして帰ってこないの!」
ケイコはそんなことすっかり忘れていた。いつもならここでケンカになるのだが、何故かお母さんは優しくてケイコも腹が立つことはなかった。ケイコは申し訳ない気持ちになり、携帯を切る間際お母さんに明日にでも帰ると約束をしていた。
「なんか調子が狂うな・・・」と思いながらも温かな気分だった。
そして、ケイコは取っておきのワインとチーズを出してひとりだけのひな祭りをしようとしたとき・・・
「トン・トン・トン」
ドアをノックする音がした、ドアを開けるとミカとトモだった。最近ケンカして気まずくなった二人だ。
「・・・なぜかケイコと会いたくなって」
始めは気まずかったが、すぐに楽しいひな祭りパーティーになった。みんないつものように心置きなく笑っていた。ケイコもこんなに愉快で穏やかな気持ちは久しぶりだった。
「不思議ね、あなたたちのせいかしら・・・」
ケイコは、タンスの上のフーセンのお雛様をチラッと見て考えたが、すぐに笑い声の絶えない女の子の宴の中に戻っていきました。
おわり
小売や物流の仕事をしていたことがあるので、たくさんの販促品を扱いました。本当に捨てるには惜しいな、というPOPも結構ありました・・・。
そんな彼らにも第二の人生?があるといいですよね~。