童話の星屑たち

みついただしの描く小さなお話たちです。

絵本「ぼくがすて犬になった日」(石風社刊)
全国書店にて好評発売中

旅立ちは木枯らし

2006-11-26 | 童話
 木枯らしが吹き季節が秋から冬に移る頃、色づいた木々は大変賑やかなのです。そんな木の葉のお話です。

「バス停前のケヤキ葉っぱさん、となり町まで飛んだらしいぞ」
「ホホーッ」
「電柱脇のイチョウ葉っぱさんも港の船の甲板で見たと、カラスが話しているのを聞いたわよ」
「そりゃすごい!」
パン屋前の桜の木では赤や黄色に着飾った木の葉たちがワイワイと何やら噂話をしていました。
 一年の仕事を終えた木の葉たちは、おしゃれして見知らぬ遠くへ旅立つのを待っているのです。

「そろそろ風が吹きそうね」
暖かだった空気がヒンヤリしてきました。こういうときはいきなり強い風が吹きます。
サワサワと風が吹き出しました。木の葉たちは風に揺れながら、またおしゃべりを始めました。
「オレは海よりも山に飛んでいきたいなー、おまえは?」
「遠くよりも、どこまでも高く上ってこの桜の木や街を見てみたい」
木の葉たちはこれから始まる、風まかせの旅にドキドキしてきました。

                 ビューッ!

 突然、強い北風が吹き起こりました。
ビュウビュウと風に吹かれて、長い間木の葉たちの家であった桜の木から、みんな大空に向かって飛び立ちました。
「じゃあねー!」                     「元気でー!」
               「素敵な旅をー!」
赤や黄色におしゃれした木の葉たちは青空にクルクルと舞い上がっていきました。みんなこれから始まる旅に胸を膨らまして・・・・


 木の葉の飛び去った枝では、残されたいくつもの冬芽たちがちょっと寂しそうに木枯らしに揺れていました。

  おわり
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「星を釣る人」ホームページはじめました

2006-11-16 | 星を釣る人
 こんにちは、tamiです。「童話の星屑たち」をお読みいただきありがとうございます。
絵本「星を釣る人」のホームページを開設しました。絵本の作品紹介やオープニングのフラッシュアニメなど見ることができます。お勧めは一部分ですが立ち読みができます。メニューにもリンクを貼りますのでクリックしてみて下さい。
 次回はお話を書きますのでよろしくお願いします。

星を釣る人~灯台通信~
http://www.creatorsworld.net/mitsuitadashi/flash/index.html


申し訳ありませんが、携帯ではアクセスできないのでPCでお願いします。
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落ち葉焚き-(おばあさんの庭・秋)

2006-11-03 | 童話
 おばあさんの庭は落ち葉の季節です。敷き詰められた色とりどりの落ち葉は、ふかふかした絨毯のようです。
「今日は風もないし、落ち葉焚きをしましょう」
おばあさんのこの季節の楽しみは落ち葉焚きをすることでした。おばあさんは小枝とよく燃えそうな落ち葉を拾い集めました。そして、火を点けようとしたときに、大事なものを忘れていることに気が付きました。
「あら、いけない。お芋を忘れた」

 おばあさんが家の中にお芋を取りにいっている間に、外の通りから庭の中にポトンとボールが落ちました。
「こんにちはー!」
子供の声がします。男の子が物珍しそうにきょろきょろしながら玄関に立っていました。おばあさんが用件を聞くと、どうやら、庭の中に誤ってボールを投げ入れてしまったようです。
 男の子は庭の中を探したのですが見つかりません。そうしているうちに男の子はボールのことよりも、いろんな落ち葉やドングリを拾うのに夢中になっていました。おばあさんも色づいた木の実や、きれいだけど食べられないキノコなどを見せながら一緒に探しました。
「一緒に落ち葉焚きしましょうか?」
おばあさんは落ち葉焚きのことを思い出しました。男の子は大喜びです。

 秋の青い空に白い煙がまっすぐ昇っていきます。男の子はチロチロと燃える焚き火を面白そうに眺めています。
おばあさんがお芋の焼き具合をみようと焚き火の中に枝をかきいれると、コロコロと真っ黒になったボールが転がり出ました。
「アラ、まぁ・・・」
「焼きボールだ!」
おばあさんと男の子は顔を見合わせて笑いました。
こんなところに隠れていてはいくら探してもわかりません。

 おばあさんは焼きあがったお芋を二つに割るとひとつを男の子にあげました。ふんわりと湯気をたて、金色になったお芋はおいしそうです。そして、おしゃべりをしながら熱々のお芋をフーフーいいながら食べました。
 おばあさんの庭は静かで何もありませんが、たまにこんな楽しいこともあります。

  おわり
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