タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

これ以上の産婦人科バッシングはやめてください

2017-06-14 21:11:25 | 産科

上の写真は、豊岡市の孝太(こうた)くん、4月25日生まれ。
「誰にでも思いやりをもって、他人に奉仕できる人になってください。
お産は痛かったけど、家族の支えがあって頑張れました。
個室で、主人も泊まることができたので、過ごしやすかったです。」

日本人の美徳ですね、他の人のことまで考えられるのは。

さて、今日は緊急提言ですよ。
このところまた、産婦人科バッシングが、いろんなメディアで繰り広げられています。
これでまた産婦人科診療所が減って、医療崩壊が進むことでしょう。

もともと医療崩壊はなぜ起こったのかご存知ですか?
医師数が減ったからではありませんよ。
また、医師が都会の病院の方が好きで、田舎から出て行ったわけでもありません。
みなさん誤解されているでしょう?

まず朝日新聞だったと思うのですが、
医局制度を批判したのですよ。
教授以下、白い巨塔のような制度はよくないと。

それで医局制度が崩壊してしまって、大学は地方に医師を派遣できなくなったのです。
言うなればハローワークが潰れて、民間の派遣会社が隆盛しているのと同じ構造です。
医師は当然、待遇の良い病院に流れて、地方の待遇の悪い病院には行かなくなっただけなのです。
本来は大学の医局に残って初期研修をして、
それから地方に数年行って、また大学に帰ったら研究生活をして、
そして公立病院などに派遣されるという良い循環が有ったのですよ。
これをメディアが潰したのです。
これが医療崩壊の主な原因ですよ。

その次に産婦人科の崩壊が始まりました。
これはまた原因が異なります。
これもメディアのバッシングから始まりました。
大野病院という公立病院で、帝王切開中に癒着胎盤が剥がれず、
出血多量で亡くなられた事故が有ったのです。

不幸な事故ですが、医師が不当逮捕されてしまうというセンセーショナルな事件が有りました。
医局は産婦人科医が1人しか居ない市中病院から、一斉に医師を引き上げたのです。
それに抗議してやめられた診療所も多かったのです。
それまで産婦人科医の犠牲のもとに成り立っていた産婦人科医療が、すっかり崩壊したのです。

それも静まったかと思っていたら今回の事件ですよ。
神戸と京都と大阪での麻酔での事故に対するバッシングです。
しかもロシア人妊婦の母親の手記ですよ。
その内容が、麻酔に対する不満だけではなくて、
産婦人科の半分を占める有床診療所では産んではいけないというものです。
ぜんぜん関係ないではないですか。
どうしてメディアはこんななんの脈絡もない批判を載せるのでしょうか。

だいたい病院で産むというロシアの方が、日本よりずっと妊産婦の死亡率が高いではないですか。
2016年のWHOの報告によると、10万人の妊婦の中で出産で生命を落とすのは、
世界平均で1,360人ですよ。びっくりでしょう?

ところが日本では10万人中たったの5人で、世界一安全なのです。年間なら50人ほどですね。
ところがロシアでは10万人中25人で、日本の5倍も危険です。
何もロシアのように病院だから安全というわけではないでしょう。
日本の有床診療所と病院の連携がうまくいっている証拠です。
それをロシア人や日本のマスコミが批判するのは、おかしな話です。

今、神戸の上田病院さんが刑事事件として訴えられています。
私も上田産婦人科で働いていたことが有るので、人ごとではありません。
兵庫県で一番、体制が整った産婦人科の民間病院なのですからね。
上田院長とは一緒に食事もした仲です。

医療事故はですね、ゼロにはならないのですよ。
みなさんが乗っている乗用車でも、どんなに安全運転をしていても事故は起こるでしょう?
その度に刑務所に入れられるくらいなら運転しますか?

どれほど頑張っても、日本では毎年50人ほどの妊婦さんがお産で亡くなられるのですよ。
ということは、毎年これから産婦人科施設が50件ずつ無くなっていくということですね。
みなさんもそのうち、産む施設が無くなるのは、間違いありません。
医療崩壊を加速させているのは、みなさんの方なのですよ。

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