タマルさんはナツメヤシ

タマルは女性の名。ナツメヤシの意味で多産を象徴。聖書には約束の地カナンは、蜜(ナツメヤシ)と乳(ヤギ)の流れる地とある。

不妊からお産までの一貫治療

2018-06-13 21:20:04 | 不妊症


最近生まれた赤ちゃんとお父さん方ですよ。
もう退院されてしまいましたが。
1週間なんて、あっという間ですね。
それでもお産での入院は、日本ほど長い国は無いのですよね。
里帰りという習慣も、日本だけのものなのですね。

タマル産では、初産婦さんで7日間、経産婦さんで6日間の入院としています。
陣痛が長引いて、2日かかっても、追加費用はいただいていないのですよ。
それに深夜でも休日でも追加の費用は要りません。
個室料も無料ですから、これだけでかなりお得ですね。

ところで先週お産で入院されていた母子は2組だったのですが、
2組のお母さん共に、タマル産での不妊症の治療後に妊娠された方だったのです。
1人のお母さんは、人工授精の6回目での妊娠でした。
もう1人は、早い時期での人工授精だったと思います。
今朝の不妊外来でも2回目の人工授精で妊娠反応が陽性になりました。
そういう意味では目標の6回までは継続して、不妊治療は途中で断念してはいけませんね。

人工授精は、よく体外受精と勘違いされますが、
体外受精が最終の治療なのに対して、人工授精は最初にする治療なのですね。
体外受精は侵襲的な治療なのに対して、人工授精は保存的で、非侵襲的な治療とされます。

ですが「人工的」という言葉に引っかかる方が多くて、
とくに男性は嫌がることが多いのですよ。
でもね、これが最初の治療なのです。
ただしいきなりはしなくて、まずタイミング療法から始めます。
年齢的に余裕が有れば、3ヶ月くらいはタイミング療法をしますが、
余裕が無ければ1ヶ月しかタイミングは取らないことも有ります。

その次にはタマル産では、飲み薬の排卵誘発剤を使うことが多いです。
これはとばしても良いのですが、いきなり注射剤は躊躇されることが多いからです。
そして注射剤の排卵誘発剤と一緒に、人工授精をするのです。
この治療は、何も私が考えたものではなく、日本産婦人科学会のレジメに倣った、標準的な治療法の順番です。

それで、むかしは人工授精は何となく、6回くらいまでが良いとされていましたが、
7回以上することも多かったのです。
むかしというのは、まだ体外受精がそれほど一般的ではなく、
保存的な治療が優先されていた時代だったからです。
だから回を重ねて、やっと7回目の人工授精で妊娠した、という女性も多かったのです。

ですが最近では、体外受精を念頭に置いた治療計画を立てる必要が有ります。
ですから40歳以上では2回まで、35歳以上では4回まで、
34歳までは6回まで、というのが標準的な人工授精の回数です。
それでダメなら体外受精を勧めるのですね。

タマル産では20年近く、あるいは京大病院や天理よろづの不妊外来を担当してきて、
保存的な方法だけでも、けっこう妊娠できるものなのだなあと感じていますよ。
もちろん治療女性の高齢化とともに、体外受精に行こうされる方は増えましたが、
それでも体外受精まで紹介しないといけないカップルの方が、ずっと少ないのです。

赤ちゃんが欲しくなったら、ためらわずに不妊外来の門を叩いてください。
そして1年間だけ、我慢してついてきてくださいね。
体外受精が必要なカップルではさらにもう1年までは我慢してください。
数回、妊娠反応が陽性にならなかったとしても、必ずゴールを目指してください。
ただし、回数は念頭に置いて。

先日、他院で体外受精を10回以上も受けているという女性を見ました。
もう治療は断念するか、病院を変えてもう数回だけするかとアドバイスしましたよ。
確かに妊娠できない方も、ある一定の割合では有るのは事実ですからね。