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『感染症 広がり方と防ぎ方』(井上栄著 中公新書)

2006年12月22日 04時16分06秒 | 日記
 本日『感染症 広がり方と防ぎ方』(井上栄著 中公新書)を読みました。

 HIVがなぜ日本では少ないのかという問題について、「コンドーム文化」を挙げていました。
 団塊の世代が合計特殊出生率が4.5くらいなんだそうですが、それでは日本人が増えすぎるということで、産児制限の政策を行った。その中心が、コンドーム&荻野式の受胎制限を行って、合計特殊出生率は数年で2まで減少したのだそうです。
 そのときにコンドームを使うことへの抵抗感がかなり減少したのだそうです。それからピルを解禁するのも世界で一番遅かったし、ピルに対する抵抗感はコンドームと比べると強い。
 ピルを作っているアメリカの某製薬メーカーは日本において、ピルの需要を伸ばすための宣伝戦略をしているのだそうです。国会で問題になった「ラブ&ボディBOOK」にもピルのメーカーが金を出して、ピルを中学生に勧める内容になっていた。学校の先生もピルの有効性を教えることになる。医者は最初から製薬メーカーの味方である。ピルを勧めれば、自分にも処方箋の金が入るが、コンドームは一銭にもならないから。
 そんな事情で、コンドーム軽視の性教育が行われていったのだけど、それはせっかくのコンドームに抵抗感がない日本人の性行動を変化さえ、HIVの感染率を上げることになるだろうということでした。

 現状としては、コンドームの使い方を教えるどころか、性教育自体がやりにくい環境になってしまっています。このあたりをきちんとアピールしていかないといけないですね。

 それからインフルエンザなどには積極的に対策をとるのに、HIVについては対策が採られない理由について、HIVは発症が10年も先のことだというのが上げられています。急性型の病気については、担当の厚生官僚が対策を怠れば任期中に責任がかぶさる可能性が高い。それに対して、HIVは10年も先のことなので、そのころは自分は定年退官していたり、少なくとも今のポストにはいないので、責任を取らされることはないと判断をする。そうなると世論の反発がある可能性を知りながら自分がそのリスクを負うことをさける。あとになって対策をどうしてもとらなくてはならなくなったときには、そのポストにいるのは10年前の責任を負う事はできない官僚であり、責任はないけど対策はしましょうということになる。同じようなことは、中皮種でも起こっているということでした。
 薬害エイズでも、ハンセン氏病でも昔から繰り返されている構図ですが、役人はそれを改める気配はありません。お役所仕事のお役所仕事たるゆえんですね。

 
 もしこの主張が本当なら、ゲイもその恩恵を受けいてるかもしれません。
 HIV感染拡大の初速度は明らかに海外のゲイよりは遅かったし、今でも遅い。着実に感染拡大を続けていますが、速度は海外と比べると遅いです。パリではゲイの17%が感染者だという話です。日本では5%程度ですからまだ少ない。
 この理由として、ぼくは仮説をもっています。
 まず、日本のゲイにとってアナルセックスが一般化したのは実はそう昔のことではなく、90年代くらいだったんじゃないかと思います。ニューヨークでエイズが発見されたのが1981年ですから、その間10年間の猶予がある。この猶予の間に、他国と比べるとコンドームへの意識付けができた可能性があります。もともと男女間のセックスでもコンドームへの抵抗感は少なかったため、ゲイがそれを取り入れることにも抵抗感は少なかったかもしれません。いまでも、コンドームを着けて欲しいといって、それを拒絶する人はそう多くはないと思います。
 2000年代になって、「合ドラ」が流通して意識朦朧としたまま危険なセックスをする人びとが現れました。ここで快楽の深みにはまり込んでしまった人たちの中で、当然感染する人は多かったはずです。この人たちが、ヤバマンにヤバダネを着けちゃうような行為を行ったわけで、一旦そういう快楽を覚えると、そこから抜け出せない。ずるずると危険な性行動を行うことになっている。こういう確信犯を減らしていくのはどうすればいいのかはなかなか難しい問題ですね。

 日本のコンドームがうまく定着した文化は、ピルを使うことによって壊されかけています。コンドームの出荷量がここ数年で激減しています。そうなると妊娠はさけられても、病気はさけられません。それをきちんと教育の中でやるべきだろうと思います。

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