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【性の生物学 第2回】 大腸菌の遺伝的多様性

2007年11月09日 00時48分13秒 | 性の生物学
 もうずいぶん前になりますが、性の生物学 第1回で大腸菌において接合という現象があり、それによって遺伝子の交換をしているということをお話ししました。
 性は「増える」こととは関係なく、「遺伝子を交換する」ことに関係しているのではないかという仮説を述べました。
 大腸菌は最適な条件では20分に1回分裂をします。大したことないと思うかもしれませんが、このペースで分裂を続けると、9時間で1億個体を超えるというすさまじいスピードなのです。その分裂のたびにDNAを合成しますからかなりのスピードでDNA合成をしていることになります。また、まだDNAの合成酵素などが原始的であるため、変異が起こりやすいのです。そうすると、突然変異だけでもかなりの個体で起こり遺伝的な多様性がある程度確保されることになります。突然変異の多くは個体にとって良くない効果をもたらし、次世代を生み出す能力が低くなるので、淘汰されてしまいます。しかし、とくにどちらが適応的だとはいえない変異が起こることもあるし、希にはより適応的な変異が起こることがあります。こうした遺伝子は集団の中に広がっていくことになります。
 さらに接合による遺伝子の交換によって、多様性が増します。遺伝的な多様性は高いほうが、環境の変化があったときにも生き残る個体が生まれる確率が上がるのでよいわけです。さまざまな遺伝子の多様性を持った個体がいれば、そのなかの一部は、環境が変化しても生き残るかもしれない。その期待値が上がることになるわけです。

 大腸菌のような細菌類は、「原核生物」と呼ばれ、ずいぶん単純です。私たち動物や植物を作る普通の細胞(真核細胞といいます)には、核だとかミトコンドリア、葉緑体などの細胞小器官がありますが、原核細胞にはありません。そのため増えるのも速くできるし、個体数を猛烈に増やすことができます。その過程で一定頻度で遺伝子の突然変異を期待できるわけです。

 しかし、もう少し複雑になって真核生物になってきたらそうもいきません。原核生物ほどは増えられないし、かといってあんまり高い頻度で突然変異を起こしたら、遺伝子が壊れてしまい、生きていけなくなります。それでも遺伝的な多様性を確保しようとして、生物がどんな戦略を採ったかを次回見てみたいと思います。

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