ゲイリブは商業主義？

　Jackさんと言う方のブログを「ゲイと覚せい剤」のエントリーにコメントを付けてくださった哲さんが紹介してくださいました。

　Jackさんの見るところ、「日本のゲイリブは、ゲイ向けのセックス産業が資金源になっているため、HIV感染予防啓発にしろゲイリブにしろセックスを奨励することになり、HIV感染予防啓発にはつながらない」ということです。

　これは一面の真実を表しますよね。
　たしかに風俗産業がかなりの資金源になっていることは間違いない。クラブにしろハッテン場にしろHIV感染拡大の現場になっていることも間違いないでしょう。

　ところが、エロという駆動力を抜きにした、純粋ゲイリブのようなものをやろうとしても、だれも興味を持たないという現実があります。
　私は、伏見憲明編集の『クィア・ジャパン』シリーズに結構かいてますが、その売り上げにしたってたいしたことはありません。
　そもそも、一応、執筆者の「彼氏」を自称する人間が、この本についてはまるっきり協力的なところはありませんでした。少しは友だちに紹介したり、売り込んでくれたりするのかと思ったら、そんなことをしたことはありません。それどころか自分で売り上げに貢献しようと言う気もありませんので、うちにあった見本誌を拾い読みするだけで終わりました。口先だけでは「こんな仕事ができてすごいね」とはいいますが、本当にすごいなどとはこれっぽっちも思っていないことは、行動を伴わないところからすぐに分かります。自分かわいさに発する、単なるご機嫌取りの言葉だったわけです。
　「彼氏」を自称する人間ですらその程度にしか考えないものなのですから、もちろんそれ以上の距離がある人が興味を持つとは思えません。

　もちろん、雑誌のつくりに問題があって、十分に練り上げられた原稿が、高密度に並んでいて、読者のニーズに答えていないということになりましょう。ぼくの原稿もたいしたものではないのかもしれません（ぼくにできる限りの努力はしたつもりですが、一流のルポライターから見れば大したことはありません）。
　読者のニーズなるものがなんなのかというと、結局、エロのエンジンを駆動しないと売れません。
　ゲイ向けの産業が、各方面で広がりを持っていれば、たとえばTOYOTAにしろNISSANでもHONDAでもアメリカのゲイ向けフリーペーパーには広告を出したりしているので、そういうところを引き付けてきて資金源にすることも可能かもしれませんが、日本人は「自分はゲイだからゲイフレンドリーな会社の商品を買おう」などと思ったりもしないので、不可能です。

　もう１つは、ハッテン場などのゲイ風俗をゲイリブから締め出せば、HIV感染拡大は起こらないのか？と言う問題もあります。これにしても、結局は自宅やホテルで「キメ生乱交」くらいなさいますでしょうから、さして効果を上げるとは思えません。情報が行き渡らないため、気をつける人がますます減る可能性もあるでしょう。

　これで、風俗産業をスポンサーに持つことを放棄したら、そのまま資金力不足で何一つ立ち行かなくなります。パレードにしろ、NLGRにしろそういうところからの資金はある一定割合では入ってきているはずです（具体的にどの程度なのかは知りません）。

　そういう資金を放棄することは、日本ではゲイリブをやめましょうということと同じです。日本ではゲイ向けのHIV感染予防キャペーンを張るのは止めましょうということにほかなりません。
　さて、その結果、HIV感染者の増加はどうなるのか？
　同性婚などのポリティカル・イシューについては一切前進をすることはないでしょうがそれもいいということです。

　そういう縛りの中でしか、ほとんどのゲイリブ的な活動は成立しなかった経緯があります。その縛りをなくしてやろうとしたところは、貧乏です。
　それが、矛盾に満ちていようと、ほかにやりようがなかったのだから仕方がない。こういう批判をなさる方には、一般のゲイがパレードやNLGRに寄付をどんどんしてそれだけで財政がまかなえるような状況をぜひとも作っていただきたいと思います。