環屋

オタク漫画家環望のヘッポコBLOGなり。まあ見てって。

もしもの世界

2008年11月09日 02時54分03秒 | Weblog
こないだ出たフラッパーの最新号に 載ってるヴァンパイアバンド。
知り合いや読者、果てはアシスタントからも
「一話読み飛ばしたかと思った!」と驚かれました(笑)。
いや、そういう作りにしたあるんだけどね。

ある朝ミナ姫が目覚めるとそこは全く知らない場所。
アキラを始めとする人々は居るのだけど、みな人が違ったような振る舞いをする。
何より、その世界はバンドが存在せず、ミナ自身もヴァンパイアではなかった!
ここはいったいどこなのか!!

…みたいなね。
初めて知る年相応の少女としての生活に戸惑うミナを描きつつ、ラストで実は…、という感じで、次回怒濤の展開に続く。

色んな人から「エヴァの最終回が元ネタ?」とか「ジョジョ?」とか聞かれたんですが(笑)。
これは「if」ネタといいますか、外画ドラマでやたらと使われる作劇方法なんですね。
本来の物語世界とは違うパラレルワールドに登場人物達が放り込まれる。

有名なところではスタートレックシリーズの「ミラーワールド」と呼ばれる一連のエピソード群。
別次元の宇宙では地球が圧倒的軍事力で銀河を征服した大帝国を構築していて、カークがその皇帝になっている、という凄まじい設定。
後のネクスト・ジェネレーシン、DS9、ヴォイジャー、果てはエンタープライズでもこの世界の過去と未来が描かれ、もう一つの一大叙事詩となってます。
どの作品でも、おなじみの仲間達が敵味方に分かれて、陰惨な闘いを繰り広げていて、いい感じにゲッソリする内容(笑)。
なおネクスト~には「幻想惑星カターン」という大傑作エピソードもあって、こっちは観てて涙が止まらないくらいいい話。
今回のヴァンパイアバンドはこのエピソードとあといくつかから材をとってます。

アメコミでも大傑作あり。
X-menの「エイジ・オブ・アポカリプス」がそれで、時間跳躍能力を持つミュータント、リージョンが過去に跳んで、エックスメンを結成する前のプロフェッサーXを暗殺してしまい、そのため歴史がネジ曲がるというすごい話。
改変された世界はエックスメンの仇敵である悪のミュータント・アポカリプスに支配され、本来仲間だったはずのメンバー達は敵味方に分かれて殺し合ってる。
中でも泣かせるのは元の世界では最大の敵だったマグニートーがプロフェッサーXの遺志を継いで、エックスメンを結成し、ミュータントと人類の未来のために戦ってるとこ。いいんだ、これが。
X-menレーベル6タイトル(だったかな?)で半年にわたって同時連載された超大作で、正直これを頂点にエックスメンのテンションは下降した。
時間改変によるタイムパラドックス的パラレルネタ。
仮想戦記の根幹ですな。

変わってしまった世界を通して、本来の作品世界の味わいを噛み締める作業なわけだから感動しない訳がない。
他にも我が愛すべき「バッフィー・ザ・ヴァンパイアスレイヤー」や「フラッシュ」、「デッドゾーン」でもこの手の話は必ずあって、傑作が多い。
ほとんどアメリカのテレビ番組。
何故こんなにアメさんは「if」ワールドネタが好きなのか。
ちゃんと理由があります。

フランク・キャプラ監督の「素晴らしき哉、人生!」という映画がありまして。
多分彼らに取っての「if」ワールドネタのルーツはこれです。
あるクリスマス。善人であるだけが取り柄の男が、人に騙され世を儚んで自殺しようとしたところ、天使が現れて、「もし、彼が生まれてこなかったら世間はどうなっていたか」と見せて回る、というお話。
何の取り柄もないと思っていた自分が、いかに多くの人々と関わり、どれだけの人間を幸せにしていたかを知る。素晴らしき哉、人生!
この映画、あまりにも寓話的すぎて、興行的には大失敗。権利から何から丸ごとただ同然でTV局に売り飛ばされたのだけど、その御陰でクリスマスになるとアメリカ中のTV局でじゃんじゃん流されるように。
で、今ではイブの夜に家族そろってTVの前に座って、というのが定番になってる。
アメリカ人でこれを観た事ない人はまずいないとおもう(笑)。
そういうものをTVで観て育った人たちからのオマージュなのですよ。
更にそれを観て育った我々が、今度は自分の作品でそれをやる。
エヴァもジョジョもたどりたどっていけば、全てはこの「素晴らしき哉、人生!」につながっているのであった。
自覚はないかも知んないけどね(笑)。

もっとも「素晴らしき哉、人生!」のまえにディケンズの「クリスマスキャロル」があったりするんだけど。


SF作品を描く機会に恵まれたら必ずやろうと思ってた「if」エピソード。
描いててめっちゃ楽しい。
後半にご期待ください。
バケツ三杯分泣かす。

…このフレーズ久しぶりだな(笑)。
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