オークランド通信

のんびりしたお国柄が気に入りニュージーランド在住27年。仕事、子育て、生活全版にわたって語ります。

その44 若者はオーストラリアへ 11-04-08

2008-04-18 10:42:31 | 第41回ー50回
その44 若者はオーストラリアへ

うちの息子が転職してブリスベンに行くことになった。
息子は生まれて初めて、家を出て行く。しかも外国、オーストラリアである。
24歳の息子の旅立ちだ。
大学を卒業して、今の会社に就職しまだ1年余りというのに、もう転職する。

3月なかばに、リクルートのエージェントにCV(履歴書)を送って、仕事が決まる
までわずか3週間。あれよあれよという間に決まった。
コントラクトにサインしてメールで送る、チケットもオンラインで買い、
すべてがあっという間に進んだ。


息子の転職活動は、職場内の根回しから始まった。
CVには、2-3名のReferee(照会先)の名前を載せなければならない。
求職した会社のショートリストに残ると、その会社はReferee に直接電話して、
息子の人柄、仕事ぶりなどを聞く。
どんなにかっこいいCVでも、Referee の評価が悪ければ、求職先は考えるであろう。
転職活動は、今の会社のスタッフには知られたくないし、しかし自分の同僚または上司
でいいコメントをしてくれそうな人物には、その旨を伝えておかなければならない。
今回は、会社でランチを食べてる時に、ブリスベンから息子のシニアの同僚に電話が
掛かってきた。
同僚は、息子に目の前で電話に答えていて、けっこういいコメントをしてくれたそうだ。

さてCVの話にまた戻る。
3月のある週末、息子は自分のCVをアップデートしてオーストラリアのメルボルンとブリス
ベンのリクルートのエージェントに送った。
そのあくる日から、オーストラリアのエージェントから電話がかかるようになった。
土日、夜でも掛かってくる。時差が2時間あるから、こちらの夜9時はあっちの7時で
ある。
静かなオークランドの我が家の暮らしでは、9時過ぎに電話がかかることはあまりないし、
ちょっとした騒動である。

オーストラリアのエージェントの中には、オークランドに支店があるところもある。
息子は、お昼休みや仕事の後、エージェントのオフィスに行き、面接や試験を受けた。
息子はエンジニア会社のドラフターなので、課題に沿ってキャドで図面を描くという
試験もあったそうだ。

面接、CVの選考の結果、エージェントは、求人を依頼している会社に連絡する。
登録人(息子)の就職が決まれば、エージェントはその会社から息子の年収の何%かを
受け取る。
息子は、仕事を探してもらえ、何も払う必要はない。
それにエージェントは、直接会社と喋る時のマナー、その会社の情報、ブリスベン
の暮らしなともアドバイスしてくれる。
めったやたらと自分でCVを送りつけるより合理的である。

具体的に会社が決まると、インターネットを使ってビデオインタビューや電話での
コンフェレンスで面接を受けた。
オーストラリアまで面接に行く必要もなく、双方の都合のいい時に話せて時間も節約できる。

今回息子は、メルボルン、ケアンズ、ブリスベンの3社から仕事のオファーを受け、
ブリスベンのA社に決めた。
A社は、航空券、4週間分の宿泊料、$5000の引越し代をだしてくれるそうだ。
息子は、今の年収から40%アップとなるので喜んでいる。

息子の仕事始めは、ブリスベン空港の拡張プロジェクトだそうだ。
今回の息子の就職の鍵は、そのプロジェクトに必要なArchicadの新しいプログラムで図面
を描けることであった。
A社からは、A社のメルボルンオフィスにも行って、そのプログラムを教えてほしいと言われ
ているそうだ。
期待されすぎると困る、と息子は言っていた。
今の会社でも大学新卒の一年生なのにである。
今はコンピューターの時代で、経験のある中年より、まだ頭の柔らかい、新しいプログラム
を使いこなせる若者のほうが重宝されるようだ。


うちの息子だけでなく、ニュージーランドの優秀な人材が海外に流出している。
ニュージーランド人にとって、ビザのいらないオーストラリアは気軽な転職先である。
飛行機でわずか2時間、高い賃金、所得税の安さ、福利厚生の充実は、ニュージーランド
人にとって魅力である。

おおまかに言うと、平均の労働者の所得税がニュージーランドで33%であるのに対し、
オーストラリアでは16%である。
年金は、ニュージーランドでは会社が4%、本人4%負担であるの対し、オーストラリアで
は、年金は8%全額が会社負担で、給与に上乗せされる。
ニュージーランドでは去年、年金制度Kiwisaverが始まったばかりで、先行きに不安感があ
る。
オーストラリアでは年金制度がすでに確立しているので、どうせ働くのなら、老後の安定し
た収入の得られるところと思うのは当然である。


この息子の転職活動にはおまけがあった。
今週月曜日に退職届けを上司にだしたところ、会社側はまさか息子が辞めるとは思ってい
なかったので大変困惑したそうだ。
そこでオファーをだすので、一日待ってくれと言われた。
火曜日に息子の会社は、メルボルンオフィスでの雇用で今より1万5千ドルの給与増額で
オファーしてきた。
オークランドの今のオフィスでは、今以上は給与は上げられないそうだ。
しかしながら、このオファーはA社には及ばないということで、息子は転職を決意した。


私達一家は、15年前夫の転職に伴って、誰も知り合いのいないオークランドに移住してき
た。
その時に比べたら、息子の今回の引越しなんて簡単なものである。
若者一人ならどうにでも、ブリスベンで暮らして行けるであろう。
小学生からのニュージーランドの教育で、英語も問題ではない。
スーパーでは同じ物が売ってるし、生活もさほど変わらないだろう。
しかし、息子は不安と期待でいっぱいである。

5月から夫婦だけの生活になる。
子供はいつかは巣立っていくものとは思っていたが、なんだかさみしい。
私の友人は、これから食費が節約できていいねとか、ブリスベンに息子に会いに行くついで
ゴールドコーストとか遊びに行けるからいいじゃないという。
幸いに娘一家が近くに住んでいるし、孫もしょちゅうやってくるので、これからはジジババ
に専念しよう。

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