読後感

歴史小説、ホラー、エッセイ、競馬本…。いろんなジャンルで、「書評」までいかない読後感を綴ってみます。

天空の舟

2006年06月06日 | 歴史小説
                        宮城谷昌光  文春文庫

 商の湯王を助けて王朝を開いた名宰相・伊尹を描いた作品。何しろ甲骨文字しかない時代の話、宮城谷ワールド全開である。中原以外の地がかすんだ感じが何ともいえない。『重耳』『太公望』もいいが、私はこれが一番好きである。冒頭の大洪水の場面から一気に引き込まれる。
 湯王はじめ、顎、咎単、費伯、荊伯…魅力的な脇役が多数いる中で、湯王と伊尹の宿敵、夏の暴君・桀の知力と人格の深さが印象深い。魅力的な敵役ってのは歴史小説の出来を左右するね。同じことは『太公望』の受王にもいえるだろう。