MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『恐怖人形』

2020-02-21 00:48:09 | goo映画レビュー

原題:『恐怖人形』
監督:宮岡太郎
脚本:奥山雄太/青山悠希
撮影:布川潤一
出演:小坂菜緒/萩原利久/黒羽麻璃央/水上京香/石川瑠華/福島雪菜/黒沢あすか/萩原聖人
2019年/日本

「テレビドラマ以上、映画未満」のSF作品の内容について

 主人公で19歳の女子大生の平井由梨は幼なじみの中川真人と出かけては趣味のカメラを楽しんでいたのだが、ある日、同じ赤い封筒に入ったパーティーの招待状を受け取る。素性の分からない怪しい招待状だったが、参加するだけで10万円もらえるということで真人が乗り気になって由梨も渋々行くことにする。
 現地には既に6人の参加者が揃っており、迎えに来たワゴン車でかなり離れたキャンプ場まで連れていかれ、そこで「日本人形」に襲われることになる。
 作品の性格上ネタバレは避けるが、途中で急にいなくなった真人が由梨と会った際に、両手が血まみれになっていた理由が分からないし、背中を刃物で刺された涼太がそれでも生きているという状況があり得ないと思ったが、一番あり得なかったのはキャンプファイヤーの前で由梨が過去を思い出した際に、何故かThinking Dogsが担当している主題歌の「SPIRAL」が流れることで、ラブロマンスではなくホラー映画なのだから明らかに場違いで雰囲気が台無しなのだが、おそらくこれは監督としても不本意だったと察する。
 映画としてはともかく、新作のSFテレビドラマ『ウルトラQ』と見做すならば『チャイルド・プレイ』(トム・ホランド監督 1988年)と『悪魔のいけにえ』(トビー・フーパー監督 1974年)を和風テイストでミックスした秀作だとは思う。
 どうでもいい話だが、時代設定は2015年なのか?


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『男はつらいよ お帰り 寅さん』

2020-02-20 12:33:27 | goo映画レビュー

原題:『男はつらいよ お帰り 寅さん』
監督:山田洋次
脚本:山田洋次/朝原雄三
撮影:近森眞史
出演:渥美清/倍賞千恵子/前田吟/吉岡秀隆/後藤久美子/夏木マリ/浅丘ルリ子
2019年/日本

男のつらさが深刻化した原因について

 冒頭は諏訪満男の夢から始まるのだが、このシュールさがかつての松竹ヌーヴェルヴァーグを彷彿とさせ、これはただ単に寅さんを甦らせた作品ではないのかもと思わせたのだが、結局は、寅さんの回顧録のような作品で終わってしまっている。
 『男はつらいよ』シリーズの第50作目とされている本作の問題は、本作の主人公である諏訪満男を演じた吉岡秀隆が本当に辛そうな感じで、同じようにつらかったはずの渥美清の振る舞いは笑えるのに、満男は全く笑えないところである。一体満男は車寅次郎から何を学んだのかというくらいにユーモアを感じない。例えば、満男が帰国する及川泉を見送りに空港に行った際に、満男は隠していた自分の妻の死を泉に語ってしまう。妻が死んだことなど語るべきではなかったと思うが、おそらく演出上、かつて満男と泉がキスしたシーンを挿入したかったがために満男に妻の死を語らせることで満男と泉がキスをするきっかけに利用したのである。酷い話だと思う。


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『mellow』

2020-02-20 00:51:48 | goo映画レビュー

原題:『mellow』
監督:今泉力哉
脚本:今泉力哉
撮影:水口智之
出演:田中圭/岡崎紗絵/志田彩良/松木エレナ/白鳥玉季/SUMIRE/山下健二郎/ともさかりえ
2020年/日本

不確かな物語の「構造」について

 最初のうちは「2」と「3」という組み合わせにこだわって演出していると思っていた。例えば、「mellow」という花屋で花束を買った水野陽子が先輩の浅井宏美に渡して告白するのであるがフラれてしまう時に、陰でバスケットボール部の後輩の佐藤の視線があったことや、主人公の夏目誠一が得意先の青木麻里子に夫の誠一の同席のもと告白されたりして、その後、宏美は陽子と一緒に帰宅途中で佐藤に告白されるのである。つまり本作においては2人では無理でも3人いれば結果はどうあれ自分の本心が伝えられるという「構造」があるはずで、逆に言うならば誠一とラーメン店を営む古川木帆は木帆の父親の左近が亡くなっているからお互い告白し損ねていると推測できるのである。
 ところが誠一に好意を持っていた宏美は誠一と陽子の3人の時には告白できず、結局我慢できずに早朝に誠一の花屋に行って2人きりの時に告白してしまいフラれてしまう時、ラストにおいて誠一と木帆が2人きりになった時にどのようになるのか観客に想像がつかないところが欠点のような気がするのである。
 因みに「mellow(メロウ)」とは親友という意味である。


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『風の電話』

2020-02-19 12:52:26 | goo映画レビュー

原題:『風の電話』
監督:諏訪敦彦
脚本:諏訪敦彦/狗飼恭子
撮影:灰原隆裕
出演:モトーラ世里奈/西島秀俊/三浦友和/渡辺真起子/山本未來/西田敏行
2020年/日本

主人公が「素」であることの意味について

 主人公の17歳の高校生のハルは東日本大震災で家族を失い、今は広島県呉市に住んでいる伯母の広子に引き取られて暮らしているのだが、広子が病に伏して入院したことをきっかけにハルはヒッチハイクで9年振りに岩手県大槌町にあった実家に帰る決心をする。
 要するにロードムービーで、テーマは震災に限らず日本におけるクルド人などの難民問題も扱っているのだが、主人公のハルを演じたモトーラ世里奈はあくまでも「素」のままでドキュメンタリー的な要素を残し、冒頭で平成30年7月に起きた呉市の災害跡地に横になるハルをベテラン俳優陣たちが連携しながら大槌町の家があった跡地で再びハルが横たわるまでをサポートしているように見える。意外と退屈にならないところがすごいと思う。


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『ブラック校則』

2020-02-19 00:55:54 | goo映画レビュー

原題:『ブラック校則』
監督:菅原伸太郎
脚本:此元和津也
撮影:高木風太
出演:佐藤勝利/髙橋海人/モトーラ世理奈/田中樹/箭内夢菜/堀田真由/星田英利/薬師丸ひろ子
2019年/日本

50年後の「いちご白書」について

 ジャニーズ事務所が製作に関わっているという偏見でそれほど期待せずに観に行ったが、他と違い本作が佳作と見なされる理由は、主人公の小野田創楽と月岡中弥を演じた佐藤勝利と髙橋海人の好演もさることながら、お笑いコンビのはらちゃんに見間違えるほどの、ヒロインの町田希央を演じたモトーラ世理奈の強烈なキャラにあり、その風貌に完全に本作を甘い「恋愛映画」にさせない意志を感じさせるからではないだろうか。
 校則を巡る生徒と教師の戦いは2019年の10月14日から28日までの2週間で、中弥は最後の日にバイトで得た18万円で生徒たちにいちごサンドを振る舞うのだが、これは『イチゴ白書』(スチュアート・ハグマン監督 1970年)を意識した演出だと思う。


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『どすこい!すけひら』

2020-02-18 12:56:30 | goo映画レビュー

原題:『どすこい!すけひら』
監督:宮脇亮
脚本:鹿目けい子
出演:知英/草川拓弥/金子大地/松井愛莉/池端レイナ/富田望生/りゅうちぇる/竹中直人
2019年/日本

脇役の「成長物語」について

 高校生の頃は「どすこい」とあだ名を付けられるほど太っていた主人公の助平綾音は友人のフレッドと一緒に滞在していたイタリアを旅行中にフレッドが運転していたボートから落ちて怪我をして手術した胃が小さくなったことをきっかけに痩せてしまいチョコレートの洋菓子職人の道を諦めて帰国した後に、友人の紹介で高級エステサロンで働くことになる。
 そのサロンを利用していたアイドルの湊拓巳と知り合うのだが、拓巳には既に藤代あいという恋人がおり、さらに過去に太っていたという劣等感を持っていた綾音は拓巳と交際することに引け目を感じている。しかし前科があるというのならともかく、肥満だったことに劣等感を持つだろうかという疑問は残る。
 結局、綾音と拓巳が結ばれることはなく、綾音の「成長物語」は失敗してしまうのだが、興味深いのは綾音に「どすこい」と命名した先輩の馬渕隼人の存在である。隼人は拓巳と同じ事務所の後輩なのだが、オーディションを受けても隼人に取られっぱなしだった。そして痩せた綾音と出会って、ようやくバレンタインの日にチョコレートを貰った時に自分が綾音に「どすこい」と名づけたことを思い出す。
 その後、隼人はオープンカフェで再び太った女性にチョコレートを渡され、もともとチョコレートが好きではなかったので一度は断ったものの、綾音のことを思い出し喜んで受け取る。この時、本作は隼人の「成長物語」として成立したように思う。
 ドーナッツを巡る綾音とフレッドを演じたりゅうちぇるのやり取りは面白かった。


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『東京ワイン会ピープル』

2020-02-18 00:53:36 | goo映画レビュー

原題:『東京ワイン会ピープル』
監督:和田秀樹
脚本:林ミカ
撮影:中村夏葉
出演:松村沙友理/大野いと/小野塚勇人/少路勇介/藤岡沙也香/鯨井康介/須藤理彩
2019年/日本

アイドルの「性」について

 例えば、『日日是好日』(大森立嗣監督 2018年)という作品でお茶の作法を一通り学べるように本作を観てワインの嗜みを学ぶことができるとは思うが、映画として見どころがあるかどうかは疑問が残る。主人公のОLの桜木紫野は会社の上司から誘われたワイン会に居心地の悪さを感じるのだが、桜木は港区の西麻布にあるワンルームマンションに住んでおり、なかなかのセレブなのである。
 「本物」と「フェイク」を巡る考察も、織田一志の粉飾決算や雨宮千秋の顔の整形や蒔田の偽物のワイン会などネタは出すのだが、消化不良の感が否めない。それならばワインも「熟成」させれば美味しくなるという安易な結論にたどり着かざるを得ないからである。
 とにかくワインに対する監督の想いが強すぎて桜木を演じている松村沙友理が「フェイク」のように見える。松村でなくても白石麻衣でも構わなかったのではないだろうか。


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『蜜蜂と遠雷』

2020-02-17 12:53:52 | goo映画レビュー

原題:『蜜蜂と遠雷』
監督:石川慶
脚本:石川慶
撮影:ピオトル・ニエミイスキ
出演:松岡茉優/松坂桃李/森崎ウィン/鈴鹿央士/臼田あさ美/ブルゾンちえみ/斉藤由貴/鹿賀丈史
2019年/日本

結局、松岡茉優の話になってしまうレビューについて

 とりあえず栄伝亜夜高島明石マサル・カルロス・レヴィ・アナトール風間塵の4人のコンテスタントたちが2019年11月に行われる記念すべき第10回の芳ヶ江国際ピアノコンクールに挑む物語ではあるが、13歳の時にピアノを教えてくれていた母親を亡くした栄伝亜夜が、その7年後に再起をかけた挑戦がメインストーリーとなっている。
 しかし亜夜と母親の関係が具体的に描かれるわけではなく、逆に高島風間がテレビインタビューで心情を答えるシーンの生々しさや、冒頭とラストの黒い馬や、滴る雨粒に濡れるグランドピアノのイメージなどまるでアンドレイ・タルコフスキーの作風を彷彿とさせる。亜夜と塵の2人が満月の下、連弾でドビュッシーの「月の光」、ハロルド・アーレンの「イッツ・オンリー・ア・ペーパー・ ムーン」、ベートーヴェンのピアノソナタ第14番「月光」を披露するシーンも素晴らしいのだが、やはり亜夜を演じた松岡茉優の名演があってこそ成り立った作品のように思う。


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『ひとよ』

2020-02-17 00:23:06 | goo映画レビュー

原題:『ひとよ』
監督:白石和彌
脚本:高橋泉
撮影:鍋島淳裕
出演:佐藤健/鈴木亮平/松岡茉優/音尾琢真/筒井真理子/浅利陽介/佐々木蔵之介/田中裕子
2019年/日本

犯罪者の心理にもたらす深刻な影響について

 事件は2004年5月23日の雨の晩に起こる。主人公の稲村こはるはDV夫の雄一を車で轢いて殺してしまうのである。それは3人の子供たちを守るためだったとはいえ、15年後の同じ日に実家に戻って来たこはるに対して長男の大樹、次男の雄二、長女の園子の心境は複雑だった。こはるが言っていたように彼らは自由を得たわけではなく、殺人犯の子供たちというレッテルを貼られた厳しい現実の中で生きていかなければならなかったからである。
 例えば、大樹は結婚して子供もいるのであるが、妻の二三子とは離婚協議中で、話し合いの最中にフミコに手を挙げてしまい、自分の父親と同じ振る舞いを演じてしまうのである。あるいは雄二が小説家になかなかなれない理由も、母親が起こした事件にずっと囚われてしまっているからで、結局、事件のことをネタにしなければ売れる記事が書けないのである。稲村家だけではなく、稲村タクシーで新人として入社してきた堂下はかつてヤクザとして生きていたが、今は更生して働いているのであるが、離れて暮らす息子で高校生のカズキはいつの間にかかつての父親のようにドラッグの密売に手を染めているのである。
 しかしそれは理屈通りに起こるわけでもなく、例えば、久しぶりにタクシーを運転していたこはるが車をバックさせる時に、アクセルを踏み過ぎて後ろにいた雄二を轢きそうになり、無意識に夫を轢き殺した時と同じようなことをしてしまい、事件を起こすことの深刻さを考えさせられるのである。
 あれこれと書いてみたものの、結局、園子を演じた松岡茉優の演技の上手さだけが強烈に印象に残ってしまう。


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『ヲタクに恋は難しい』

2020-02-16 12:57:03 | goo映画レビュー

原題:『ヲタクに恋は難しい』
監督:福田雄一
脚本:福田雄一
撮影:工藤哲也/鈴木靖之
出演:高畑充希/山崎賢人/菜々緒/賀来賢人/今田美桜/若月佑美/ムロツヨシ/斎藤工/佐藤二朗
2020年/日本

コントをミュージカルにするオタクの「力技」について

 最初は『モテキ』(大根仁監督 2011年)のような作品だと思って観ていたら、これは『ラ・ラ・ランド』(デミアン・チャゼル監督 2016年)を意識して制作されたのだと思った。
 日本版のミュージカルというのはとかくスベリがちなのだが、「オタ芸」という観点からミュージカルを捉えたことで違和感を消して成功しているのではないだろうか。公開時期を『キャッツ』(トム・フーパー監督 2019年)にぶつけてきているところに福田監督の自信がうかがえる。
 しかし実際問題としてオタクに恋は難しいはずで、主人公の桃瀬成海と二藤宏嵩は幼なじみだから交際にまで発展したわけで、幼なじみという接点がなければ難しいと思うし、そもそも宏嵩ほど恋人に寛容なオタク男子が存在するのかどうか怪しい。
 やはり佐藤二朗の魅力を引き出せるのは福田監督だと改めて認識した。


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