MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

田中慎弥と石原慎太郎

2012-01-20 00:02:59 | Weblog

石原知事「バカみたいな作品ばかりだよ」とも(読売新聞) - goo ニュース

 芥川龍之介賞を受賞した田中慎弥の、「受賞を断って気の小さい選考委員が倒れたり

したら、都政が混乱する。都知事閣下と都民のためにもらっといてやる」という発言を受けた

石原慎太郎の、「いいじゃない。皮肉っぽくて。俺はむしろ彼の作品は評価したんだけどね」

という発言は、これもまた的を外したものだと思う。石原は田中の発言を皮肉として評価して

おきながら、“むしろ”という副詞を挟んで、「田中の作品を評価したのに」という“怨み節”

にしてしまっている。石原は田中の作品を「俺はむしろ彼の作品は評価したんだけどね」と

語っているが、石原が田中の作品に付けた評価は実は“△”であり、評価したとは言えない。

芥川龍之介賞を巡る、お互いになかなか正確に的を射ない発言は色々と考えさせられる。


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『ロボジー』 60点

2012-01-19 00:42:12 | goo映画レビュー

ロボジー

2012年/日本

ネタバレ

‘老い’と演出の関連について

総合★★★☆☆ 60

ストーリー ☆☆☆☆☆0点

キャスト ☆☆☆☆☆0点

演出 ☆☆☆☆☆0点

ビジュアル ☆☆☆☆☆0点

音楽 ☆☆☆☆☆0点

 矢口史靖監督の前作『ハッピーフライト』が素晴らしい作品だったこともあり、かなり期待して観に行ったのであるが、とても『ハッピーフライト』を撮った監督とは思えないような出来だった。
 ‘企業隠蔽’がコメディとして相応しくないとは言うつもりはないし、それまでの社内におけるバックボーンが描かれていないために、閑職に追いやられてクビ寸前だった小林弘樹、太田浩次、長井信也の3人の‘人生一発逆転劇’として楽しめないとか、ロボットになった後に欲張り過ぎるために、主人公の鈴木重光の‘コスチュームプレイ’による高齢者のアイデンティティーの復権の挑戦のようにも見えないなど、とにかく物語に深みがないことに関して文句を言うつもりはない。
 問題はそのようなテーマを論じる以前にある。ロボットに入る人をオーデションする公民館の一室が最初に映し出された際には、壁に時計が付いていたのであるが、次からのカットでは壁時計が無くなっているという演出上のケアレスミスがある。いわゆる‘壁時計問題’である(詳細は『ダーリンは外国人』(宇恵和昭監督 2010年)のレビューで論じている)。鈴木重光は耳が遠いという設定であるにも関わらず、老人ホームで囁かれる自分の陰口をかなり離れた場所から聴こえてしまうなどとにかく演出がずいぶんと緩いものになってしまっている。これは『ハッピーフライト』では感じなかった違和感で、どうしてこれほどまでに演出が甘くなってしまったのか不思議でならないのである。本作のタイトル通りに監督自身が‘老いた’という言い訳は『J・エドガー』が間もなく公開されるクリント・イーストウッドの存在を考えると通用しないと思う。


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田中慎弥を読まない理由

2012-01-19 00:01:50 | Weblog

反骨心で「もらって当然」=芥川賞の田中慎弥さん(時事通信) - goo ニュース

 田中慎弥の芥川龍之介賞受賞時のコメントである、「私が(賞を)もらって当然だと思う。

ここは断るのが礼儀だが、私は礼儀を知らないのでもらっといてやる」は巧妙なレトリック

で反骨を装っていると思う。本当に反骨心があるならば、受賞を拒絶する“礼儀”こそが

より多くの関係者の期待を裏切るはずだからである。だから私はほとんど作品を読んだ

ことがないのであるが、「いかなる人間でも生きながら神格化されるには値しない」と

言って、ノーベル文学賞を辞退したジャン=ポール・サルトルを高く評価するのであり、

20歳のころから小説を書き始めて以来、1日も欠かしていないという逸話は、正に田中は

小説家として生まれてきたと言っていいと思うが、1億円を蹴った作家の作品をほとんど

読まないのに、100万円を受け取る作家の作品を読むことは常識的にありえない。

小説家であるならば、シャーリー・マクレーンよりもサルトルの言葉を引用して欲しい。


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『オテサーネク -妄想の子供-』 100点

2012-01-18 00:16:48 | goo映画レビュー

オテサーネク -妄想の子供-

2000年/チェコ

ネタバレ

夫婦というメタファー

総合★★★★★ 100

ストーリー ☆☆☆☆☆0点

キャスト ☆☆☆☆☆0点

演出 ☆☆☆☆☆0点

ビジュアル ☆☆☆☆☆0点

音楽 ☆☆☆☆☆0点

 最新作である『サヴァイヴィング・ライフ ‐夢は第二の人生‐』(2010年)を観ても分かるように、ヤン・シュヴァンクマイエル監督は執着心に‘執着’している。本作においても主人公のホラーク夫妻は共に不妊症で子供が出来ないのであるが、夫が冗談半分で子供のように見える木の切り株を妻に見せたところ妻は本気にしてオテークと名付けた辺りから、木の切り株に命が宿り、飲食を求め出し、夫妻は後へ引けなくなる。ホラーク夫妻の子供に対する執着と同様に、やがて郵便配達人や保健所職員までも食べてしまうオテークの食に対する執着も常軌を逸しているのであるが、その陰で少女の下着に執着している老人や、最後に盗み食いをしたオテークを鍬で殺すに至るほどに、畑のキャベツに執着しているアパートの管理人も作品に更なる不気味さを加えている。
 そんな中で周囲の大人たちの行動を冷静に観察している人物がホラーク夫妻の隣人の娘であるアルジュビェトカである。彼女は「オテサーネク」というチェコの民話の顛末が分かっていることもあり、冷静な対応をとることが出来る。ホラーク夫妻がただオテークに請われて食べ物を運んだり、後始末をするだけであるのに対して、アルジュビェトカは地下室に閉じ込められたオテークを厳しくしつけるのであるが、悲しいことにまだ少女であるアルジュビェトカの出来ることには限度があり、オテークを最後まで守ることが出来ない。
 よくよく考えてみるならば、ヤン・シュヴァンクマイエル監督も妻のエヴァ・シュヴァンクマイエロヴァーと共にシュルレアルな映像表現に執着しているのであるが、アルジュビェトカが持つ冷静な視点も取り込んだ本作は、とても洗練された「ウルトラQ」として楽しむことが出来る。


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凄まじい販売促進力

2012-01-18 00:07:49 | Weblog

デラックスなマツコ効果…ラーメン売り上げ十倍(読売新聞) - goo ニュース

 最近、欠かさずに見ている番組は、TBSの「マツコの知らない世界」とテレビ朝日の

「マツコ&有吉の怒り新党」である。マツコ・デラックスが出演している番組は他にも

あるのだが、他の番組は出演者が多くてゴチャゴチャしているから、あまり見ない。

ところで札幌市円山動物園で販売する即席麺「白クマ塩ラーメン」を「インスタントとは

思えない」とマツコが絶賛した番組は「マツコの知らない世界」においてであるが、

「白クマ塩ラーメン」という商品よりも、土曜日の午前1時頃に放送されているような番組で、

これほど商品をブレークさせるマツコ・デラックスの人気に私は驚いた次第である。


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『サヴァイヴィング ライフ ―夢は第二の人生―』 80点

2012-01-17 19:57:29 | goo映画レビュー

サヴァイヴィング ライフ ―夢は第二の人生―

2010年/チェコ

ネタバレ

度々現れるオイディプス

総合★★★★☆ 80

ストーリー ☆☆☆☆☆0点

キャスト ☆☆☆☆☆0点

演出 ☆☆☆☆☆0点

ビジュアル ☆☆☆☆☆0点

音楽 ☆☆☆☆☆0点

 作品冒頭で、ヤン・シュヴァンクマイエル監督自ら登場して、本作は予算不足で仕方がなく実写映像と写真を使ったカットアウトアニメーションの組み合わせにしたのであるが、アニメーションにすると尺が短くなるから尺を稼ごうとしても、予算不足のために俳優を使えなかったために監督自らがこのようにして出演しているなどの‘告白’をする。結果的に2分30秒の尺しか稼げなかった冒頭シーンの真意はアップが実写で、それ以外をカットアウトアニメーションで構成する本作の独特な演出方法を事前に観客に知ってもらうことだと思う。
 2010年のチェコ作品が同年のカナダ作品である『灼熱の魂』(ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督)と同様に、ソポクレスのギリシャ悲劇『オイディプス王』をモチーフにしているにも関わらず、その演出方法が全く異なるだけでなく、視点が‘内向き(プライベート)’と‘外向き(パブリック)’という正反対のベクトルであることも興味深く、『オイディプス王』の普遍性と絶大な影響力に驚かされる。
 主人公のエフジェンは夢の中で、最初はエヴァと名乗っていた女性と知り合って起こった出来事の真意を知るために、ホルボヴァー医師に診てもらうことになる。因みにここの見どころは、一人の精神分析医が、考え方が違う‘フロイト派’と‘ユング派’を兼任することは有り得ないことである。‘フロイト派’はエヴァを個人的なセクシャルな無意識として捉え、‘ユング派’はエヴァを男性が共通して持つ無意識人格の女性的な側面であるアニマと見倣す。あくまでも個人的なこととするならばユングは用無しとなり、超自我がナポレオンや梵天を名乗りだし、現実のエフジェンの妻が夢に現れ、「エディプス・コンプレックス」の構図が崩れることになると、フロイトも胸で十字を切って役割を終えるしかない。
 エフジェンは『夢を操る』という書籍を購入し、原題通りに「理論と実践」を行なう。因みに最初に書店の主人が手に取ろうとした書籍は『Constitution And Disease(体質と疾患)』(Julius Bauer著)であるが、エフジェンがこの本を購入していれば話はこれ程複雑にはならなかったであろう。
 ラストは幼少時に自分が使っていた玩具が原因で父親を殺してしまい、母親との間に子供を儲けてしまったエフジェンが、エフジェニエが切った手首から流れた‘母と妻’の血で染まった風呂水の中で、エフジェニエの手ほどきで、溺れないように必死になって泳ぐイメージで終わる。これが77歳のアートアニメーションの巨匠の男の人生に対する一般真実なのか、それとも個人的な達観なのか私にはよく分らない。


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大臣になれなかった理由

2012-01-17 00:05:21 | Weblog

「夫をいじめないで」―民主・田中真紀子氏(時事通信) - goo ニュース

 「おいおい慣れてくるのではないか。いじめないようによろしくお願いします」というのが、

田中直紀防衛相の米軍普天間飛行場移設で「年内着工」に言及したことについての批判に

対する、その妻である田中真紀子衆院外務委員長の釈明であり、さらに武器使用基準と

武器輸出三原則の混同に関しても「緊張して、違うことを答えた」と釈明している。確かに、

いわゆる“一年生議員”がいきなり重役を任されたのであるならば、田中真紀子の釈明は

通用することはあるだろうが、衆参合わせて7回も当選している71歳のベテラン議員が

ただでさえ混迷している基地問題をさらに分かりにくくするような発言をすることに対しては

「国民をいじめないようによろしくお願い」しておきたいのであるが、いきなり露呈された

体たらくこそが自民党に所属していた時に大臣になれなかった理由を明かしていると思う。


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『灼熱の魂』 100点

2012-01-16 22:20:38 | goo映画レビュー

灼熱の魂

2010年/カナダ=フランス

ネタバレ

奇妙な等式について

総合★★★★★ 100

ストーリー ☆☆☆☆☆0点

キャスト ☆☆☆☆☆0点

演出 ☆☆☆☆☆0点

ビジュアル ☆☆☆☆☆0点

音楽 ☆☆☆☆☆0点

 レバノン出身の劇作家ワジディ・ムアワッドの原作『焼け焦げるたましい』を取り上げている以上は、当然1975年のレバノン内戦に端を発する民族や宗派間の抗争に巻き込まれた、主人公で初老の中東系カナダ人女性ナワル・マルワンの悲劇として観賞されるのであろうが、敢えて国名を特定していない理由は『灼熱の魂』がソポクレスのギリシャ悲劇『オイディプス王』をベースに書かれており、この悲劇が決して特定の地域のみで起こるという類のものではないからであろう。
 それにしても‘酷過ぎる’。酷過ぎて観賞後に暫く言葉を失った。もちろん作品の質のことではなく、『オイディプス王』という悲劇がさらに過酷になって予言も無く現代に甦ってきたことである。アブ・タレクが自分の顔を見て誰だか分からなかった時のナワル・マルワンの驚きは想像しがたいものである。つまり獄中の13年間、彼女にしたことと同様のことを数え切れないほどの女性にしていたという証拠となるからである。宗派の壁を超えて愛する男性との間に宿した愛する息子が、宗教抗争の先頭に立って弱者に非情な暴力を行使していたという事実を、心身ともに疲れきっていたナワルが受け止めるには余りにも辛過ぎた。「1+1=1」という奇妙な等式が、やがて双子のジャンヌ・マルワンとシモン・マルワンの‘父と兄‘を意味していたことが分かると同時に、ジャンヌが最初に訪ねた教授が唱えた「eiπ+1=0」というオイラーの等式が実は‘母の死’を意味していたことが分かる。これ以上、屋上屋を架すことは避けておきたいが、ラストで墓参りをしているアブ・タレク(=オイディプス)のその後が気になる。


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有名無実の政調会長

2012-01-16 00:12:07 | Weblog

考え方変えさせてもらうという勇気を…前原氏(読売新聞) - goo ニュース

 てっきり前原誠司は民主党が八ッ場ダムの建設再開を決定したことに対する抗議の

意味を込めて民主党政調会長を辞任するものかと期待していたのであるが、まるで

何事も無かったかのように政調会長を留任してしまっている。さらに前原は14日、岡山市内

で開かれた党県連パーティーで、消費税率引き上げを柱とする社会保障・税一体改革に

公約違反との批判があることについて、「民主党が議論を始めることはおかしいということ

なら、『今の世界状況を考えた時、考え方を変えさせてもらう』と言う勇気を持たなければ

いけない」と述べているが、これは明らかに間違いで、世界状況が変わったと思うのである

ならば、民主党は衆議院を解散して民意を問う勇気を持たなければならないのである。


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『フライトナイト/恐怖の夜』 80点

2012-01-15 20:31:13 | goo映画レビュー

フライトナイト/恐怖の夜

2011年/アメリカ

ネタバレ

大人になる通過儀礼としての‘ヴァンパイア’退治

総合★★★★☆ 80

ストーリー ☆☆☆☆☆0点

キャスト ☆☆☆☆☆0点

演出 ☆☆☆☆☆0点

ビジュアル ☆☆☆☆☆0点

音楽 ☆☆☆☆☆0点

 本作が『トワイライト』シリーズのような単なる‘ヴァンパイア’作品ではないことは、本作の監督が『ラースと、その彼女』(2007年)という‘オタク’をテーマにした作品を撮っているクレイグ・ギレスピーであることから想像がつく。
 主人公のチャーリー・ブリュースターはエイミー・ペーターソンという美人のガールフレンドができて、幸せな学園生活を送っているのであるが、時々、エド・リーなどの友達と一緒に‘コスチュームプレイ’をして遊んでいた頃のヴィデオを見て懐かしく思い出したりしている。
 ガールフレンドが出来るということは、チャーリーは女性を丁寧に扱えるという意味を表すのであるが、チャーリーと敵対することになる隣人のジェリー・ダンドリッジはヴァンパイアという性格上、女性の扱い方を知らず女性を傷つけるだけの、言わば究極の‘オタク’である。そしてそのような2人の間に位置する人物が、女性とは関わっているものの、優しく出来ないヴァンパイア‘もどき’のピーター・ヴィンセントである。
 ‘ヴァンパイア’物語の背後に隠されたメッセージは、‘オタク’が大人になる時の通過儀礼としての異性に対する柔軟な態度の習得なのであり、チャーリーは血を吸うことしか能がない‘オタク’の帝王としてのジェリーを倒すことで、ようやくラストでエイミーとベッドの上で‘結ばれる’のである。


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