MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ロープ/戦場の生命線』

2018-02-13 00:16:40 | goo映画レビュー

原題:『A Perfect Day』
監督:フェルナンド・レオン・デ・アラノア
脚本:フェルナンド・レオン・デ・アラノア
撮影:アレックス・カタラン
出演:ベニチオ・デル・トロ/ティム・ロビンス/オルガ・キュリレンコ/メラニー・ティエリー
2015年/スペイン

淡々と描かれる不条理の意外な「キツさ」について

 1995年の停戦直後のバルカン半島にある村の井戸に巨体の男の死体が投げ込まれた原因が生活用水を汚染させることで「水売り人」たちが稼ごうと目論んだのか定かではないのだが、「国境なき水と衛生管理団」として勤務しているマンブルやビーやソフィーはその死体を放っておくわけにはいかなかった。
 しかしまさに頼みの「綱」だったロープは遺体を引き上げる途中で切れてしまい、代わりになるロープを探すことになるのだが、これがなかなか見つからず、売店で見つけても何故か売ってもらえないのである。
 途中でサッカーボールを巡って苛められていた二コラと呼ばれる男の子を助けたマンブルは実家にロープがあると言うので訪ねたのだが、彼らが見つけたロープの先には二コラの親の首があった。ここで観客はロープが人命救助にも自殺道具にもなりえるという本作のアイロニーを見い出す。
 せっかく手に入れたロープで井戸の遺体を引き出そうとした矢先に軍の命令で中止させられたりするのだが、決して治安が良くなったわけではなく他所では相変わらず民間人の捕虜が捕らえられたりしているのである。せっかく手に入れたサッカーボールも二コラは親戚を訪ねる旅費を得るために他の子供に10ドルで売ってしまっていたり、結局、井戸の中の遺体は洪水でいとも簡単に浮かんで来たリして日常で起こる不条理が淡々と描かれている。だから原題の「パーフェクト・デイ」とはもちろん皮肉である。
 エンドロールで流れるルー・リード(Lou Reed)の「There Is No Time」を和訳しておく。

「There Is No Time」 Lou Reed 日本語訳

祝っている暇などない
握手をしている暇もなければ
ねぎらうために背中をポンとたたく暇もなく
バンドが演奏しながら行進している暇さえない

楽観主義でいられる余裕もなく
思慮深くしている余裕もなく
自分の国が正しいか間違っているのか決める余裕もない
それが何をもたらしたのか忘れてはならないのだから

とにかく時間が無い
とにかく時間が無い
とにかく時間が無い
まったくもって時間が無い

おめでとうを言う暇もなく
君には背を向けて無視する暇もなく
婉曲な表現を使う暇もなく
博学な知識を披露する暇もない

君の長所を数え上げる暇もなく
個人的に収益を上げる暇もなく
見せるか閉じるかのどちらかしかない
二度と元には戻らないんだろうな

とにかく時間が無い
とにかく時間が無い
とにかく時間が無い
まったくもって時間が無い

怒りを抑える暇もなく
憎しみを無視する暇もなく
軽率な行動をとっている暇もない
時間に追われていくばかりだから

私怨による復讐をする暇もなく
君が誰なのか知らずにいる暇もない
自己認識こそ危険なことなんだ
君自身のアイデンティティーからの自由が

警告を無視する暇もなく
残さずに完食する暇もなく
事実が分かった後には後悔せずに
過去を運命として認めよう

とにかく時間が無い
とにかく時間が無い
とにかく時間が無い
まったくもって時間が無い

引き返して飲んだり
クラックを吸う暇もない
力を結集して狙いを定めて攻撃する時なんだ

祝っている暇などない
旗に敬礼する暇もなく
内面を探求する暇もない
未来はすぐそこにある

いかがわしいレトリックを使う暇もなく
政治的なスピーチをする暇もない
ただ行動を起こすのみ
未来は手の届くところにあるのだから

とにかく時間が無い
とにかく時間が無い
とにかく時間が無い
まったくもって時間が無い

とにかく時間が無い
とにかく時間が無い
とにかく時間が無い
まったくもって時間が無い

Lou Reed There is no TIME


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