MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『緑の光線』

2018-09-28 00:48:21 | goo映画レビュー

原題:『Le Rayon Vert
監督:エリック・ロメール
脚本:エリック・ロメール
撮影:ソフィー・マンティニュー
出演:マリー・リヴィエール/リサ・エレディア/ヴァンサン・ゴーティエ/ベアトリス・ロマン
1986年/フランス

 「喜劇と格言劇」シリーズの鑑賞の仕方について

 今で言う「こじらせ女子」を1986年に既に描いているエリック・ロメールの感性に驚かされる。作品の冒頭に引用されている詩はアルチュール・ランボー(Arthur Rimbaud)の『地獄の季節』に収録された「一番高い塔の歌(Chanson de la plus haute Tour)」の一節「Ah,que le temps vienne...Où les cœurs s'éprennent」である。それを含む最初のパラグラフを訳してみる。

「無為無策な青春が慎重であるが故に全てにおいて言いなりになってしまい、僕は人生を台無しにしてしまった。あらゆる人々の気持ちが惹かれ合う時がやって来ないものだろうか!
(Oisive jeunesse
A tout asservie
Par délicatesse
J'ai perdu ma vie.
Ah! que le temps vienne
Où les cœurs s'éprennent.)」

 ランボーは自分の意気地の無さに絶望しているのだが、本作の主人公のデルフィーヌは逆に彼女の気の強さが仇になって恋人どころか友人たちとも上手く付き合っていけないのである。
 もう一つの要素がジュール・ヴェルヌ(Jules Verne)の小説『緑の光線』なのだが、この小説においては主人公のヘレナ・キャンベルが「緑の光線」の伝説を知ってサムとシブという2人の伯父を連れて探しに行くのであり、デルフィーヌが家具職人のジャックと共に偶然遭遇する「緑の光線」と対照をなす(上のポスターのシーン)。おそらくフランス人にとっては当然のように備わっているそのような教養がロメール監督が撮った「喜劇と格言劇」シリーズの一作として撮られた本作には必要なのだと思う。
 ところでAKB48が2015年にリリースした『Green Flash』は本作をモチーフに作詞されたものなのだが、残念ながらただの失恋ソングになってしまっている。
AKB48さん『Green Flash』の歌詞
グリーンフラッシュ
words by アキモトヤスシ
music by カルロスケー
Performed by エーケービーフォーティーエイト

 【MV full】 Green Flash / AKB48[公式]


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